トラを比べてみる-「においの惑星」を堪能しよう
2020/12/17
「におい」に着目した環境教育プログラムから生まれたサイト「においの惑星-くんくんPlanetに出かけよう」に掲載している「うんことばホイール」を堪能する企画。今回は、異なる動物園に暮らすトラを見比べてみます。
「においの惑星」とは?
「においの惑星―くんくんPlanetに出かけよう」は、「におい」に着目した環境教育プログラム「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう―」を通じて集められた、動物たちのうんこのにおいを表現した言葉を集めた「うんことばホイール」を公開するサイトです。
たくさんある「うんことばホイール」の中から、異なる動物園に暮らす同じ動物を見比べてみる企画の第二弾です。今回は、トラに注目します。
トラを異なる動物園で見比べてみよう
うんことばホイールを見てみよう
うんことばホイール一覧からトラを選択します。すると、「スマトラトラ」と「アムールトラ」が並んでいます。この2つの名前はトラの亜種名です。トラは、生息する地域や環境によって、身体的な特徴などに違いがあり、種よりも細かな分類区分である亜種に分けられています。
このうちのどれかを選択すると「うんことばホイール」を見ることができます。
うんことばホイールは、動物園の来園者にトラのうんこのにおいを嗅いでもらい、そのにおいを表現してもらった言葉を集めたものです。
トラのうんこはなかなかに強烈なにおいを放っていました。それはうんことばホイールにも表れています。言葉を読むと、不思議とにおいを嗅いだような気分になりますので、コンディションの良いときに見ることをお勧めします。
「たくあんだ」
まず、上野動物園のスマトラトラから見ていきます。
その強烈なにおいの「くささ」を主張する表現が多い中、他の動物に比べて突出して多い言葉があります。
「たくあんだ」(味覚:なんだろう?/分類:食物)
「ぬかづけのたくあん」(味覚:すっぱい/分類:食物)
「たくあんの奥のほうにあるにおい(トップノートじゃない)」(味覚:あまずっぱい/分類:食物)
※括弧書きは、言葉の分類です。ホイールで実際に言葉を探す際の目印にしてください
他の発酵食品の名前も挙がる中、「たくあん」の文字が並びます。上野動物園のトラのエサは、シカ肉、馬肉、鶏、牛骨など。決してたくあんを食べてはいないのに、不思議です。
「たくあん」そして…
続いて、よこはま動物園ズーラシアのスマトラトラです。よこはま動物園ズーラシアは、複数回イベントを開催しているためホイールも複数ありますが、2019年のものを見てみます。
やはり、こちらも「たくあん・つけもののにおい」(味覚:すっぱい/分類:食物)とあります。そして、他にも。
「だいこんみたい」(味覚:からい/分類:食物)
「だいこんおろしみたいです」(味覚:その他/分類:食物)
「作りたてのきりぼし大根のにおい」(味覚:その他/分類:食物)
生の大根から、加工された大根まで、様々な大根が出てきました。
もちろん、こちらの動物園でも大根は与えていません。エサは、馬肉、牛、牛骨、鶏などです。
どうやらスマトラトラのうんこには、なんらかの大根臭を感じる方が一定数いるようです。
京都のトラは魚介系…?
最後は、京都市動物園に暮らすアムールトラです。やはりこちらも「たくあん」なのかと思いきや。
「和風だし!!」(味覚:あまい/分類:食物)
「えびのにおい」(味覚:すっぱい/分類:食物)
「ししゃもみたい」(味覚:にがい/分類:食物)
「さんまをやいたにおい」(味覚:にがい/分類:食物)
急に魚介系ワードが大量に飛び出してきました。大根系ワードは極めて少数派です。
同じトラなのにこんなにも出てくる言葉が違うなんて驚きです。
京都市動物園のアムールトラが食べていたのは、馬肉と鶏です。前述の2つの動物園と大きな違いはなさそうです。
うんこを提供する側の、動物の亜種の違いによるものなのか、それとも、表現する側の、参加者の東西食文化の違いによるものなのか、その両方なのか。本当のところはわかりませんが、面白い違いが見られました。
スマトラトラとアムールトラ
実は、うんこを提供してくれたスマトラトラとアムールトラは、トラの亜種の中でも対照的な2つです。
スマトラトラは、トラの中で一番体格が小さく、インドネシア・スマトラ島の熱帯雨林に暮らしています。
一方、アムールトラは、一番大きなトラです。ロシアのアムール川流域などの、冬にはしっかりと雪が積もる地域に暮らしています。野生では主に動物を狩って食べますが、つかまえられれば魚も食べるといいます。このことがうんこのにおいに影響しているのかどうかはわかりません。
このように、対照的な2つのトラですが、どちらも野生では絶滅の危機に瀕しています。
WWFは2010年に3200頭とされた野生のトラを、2022年までの間に倍にする国際的な保全計画を、各国と共に進めています。
うんこのにおいを嗅げるのも、生きた動物がいるからこそ。
野生のトラのうんこは、一体どんなにおいがするのでしょう。
たくさんのうんことばを読みながら、ぜひ想像してみてください。
(文:熊谷香菜子)
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そのにおいを言葉にして集めた、においの惑星、を訪ねてみませんか?