©Yohsuke Amano / WWF Japan

牙がはえた鹿!ロシアに現る


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

森林グループの天野です。

私達が保全活動を支援している極東ロシアの森には、シベリアトラやアムールヒョウがいます。

他にもヒグマやイノシシなどもいて、これまでロシアには326種の哺乳類がいると言われていました。

そこに今年8月、新たな1種が加わりました。

その名もキバノロというシカ。

シカといったら角をイメージしがちですが、キバノロのオスは上あごから長い牙が生えて口の外まで出ています。
草食動物なのに?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?オス同士の縄張り争いの時に用いられるそうです。

これまで、キバノロは朝鮮半島や中国に分布するとされてきました。

これまでのキバノロの分布域(赤色)と今回、極東ロシアで見つかった場所©ヒョウの森国立公園

これまでのキバノロの分布域(赤色)と今回、極東ロシアで見つかった場所©ヒョウの森国立公園

つまり、遠く離れた極東ロシアにはいないと考えられていたのです。

ところが、2016年頃に初めて住民から牙が生えたシカを見た!という目撃情報が。
その後もレンジャーやハンターから同様の情報が続々と入ってきましたが、目撃情報だけで、それがいったい何なのかは分かりませんでした。

そして2019年4月に「ヒョウの森」国立公園に設置してあるカメラに、とうとうキバノロの姿が映ったのです。

WWFがその設立に全面的に協力したヒョウの森国立公園で確認されたキバノロ。総個体数が約80頭あまりといわれるアムールヒョウの重要な生息地でもあります。
©ヒョウの森国立公園

WWFがその設立に全面的に協力したヒョウの森国立公園で確認されたキバノロ。総個体数が約80頭あまりといわれるアムールヒョウの重要な生息地でもあります。

そして、あるハンターからノロジカと思って仕留めて剥製にしたが、どうも牙がある、と連絡を受け、初めて実物が見つかり、DNA鑑定の結果、正式にキバノロと判明しました。

キバノロがどこからやってきたのか、なぜ移動してきたのかは分かりません。

重要なのは、この327番目の仲間が一時的な存在にならず、極東ロシアの森でも生きていけるようにすることです。

ここでは今、森林火災や違法伐採、密猟者の問題が生じています。

森が守られ、キバノロを含め極東ロシアの生きものが安心して生きていけるように私たちも引き続き保全活動を進めていきます。

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自然保護室(森林)
天野 陽介

獣医になる夢やぶれ、ニュージーランドのマッセー大学で動物学と生態学を専攻。その後、毒蛇調査の 研究助手としてタイの保護区へ。そこで密猟などの違法現場に何度も直面。単に動物学だけでなく、人間社会を理解する必要があると感じ、コスタリカの平和大学で天然資源と平和学の修士号を取得。その後、国連大学でSATOYAMAイニシアティブのプロジェクトに携わり、日本の里山のように世界にも存在する人と自然のバランスがとれた貴重な場所の保全、研究、普及を担当。2019年7月からWWFジャパンの森林グループでオーストラリアとボルネオ島インドネシア領を担当する。

カエルが好きなのに、捕食者であるヘビをタイの保護区で研究していたとき、銃声が。 保護区になるまでこの地に住んでいた老人が密猟者となる負の連鎖を目の当たりにし、自然を守るには人間社会を理解する必要があると痛感。自然と共生していくためには!そして娘に嫌われない父になるためには!が人生のテーマ。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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