牙がはえた鹿!ロシアに現る
2020/01/07
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
森林グループの天野です。
私達が保全活動を支援している極東ロシアの森には、シベリアトラやアムールヒョウがいます。
他にもヒグマやイノシシなどもいて、これまでロシアには326種の哺乳類がいると言われていました。
そこに今年8月、新たな1種が加わりました。
その名もキバノロというシカ。
シカといったら角をイメージしがちですが、キバノロのオスは上あごから長い牙が生えて口の外まで出ています。
草食動物なのに?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?オス同士の縄張り争いの時に用いられるそうです。
これまで、キバノロは朝鮮半島や中国に分布するとされてきました。
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これまでのキバノロの分布域(赤色)と今回、極東ロシアで見つかった場所©ヒョウの森国立公園
つまり、遠く離れた極東ロシアにはいないと考えられていたのです。
ところが、2016年頃に初めて住民から牙が生えたシカを見た!という目撃情報が。
その後もレンジャーやハンターから同様の情報が続々と入ってきましたが、目撃情報だけで、それがいったい何なのかは分かりませんでした。
そして2019年4月に「ヒョウの森」国立公園に設置してあるカメラに、とうとうキバノロの姿が映ったのです。

WWFがその設立に全面的に協力したヒョウの森国立公園で確認されたキバノロ。総個体数が約80頭あまりといわれるアムールヒョウの重要な生息地でもあります。
そして、あるハンターからノロジカと思って仕留めて剥製にしたが、どうも牙がある、と連絡を受け、初めて実物が見つかり、DNA鑑定の結果、正式にキバノロと判明しました。
キバノロがどこからやってきたのか、なぜ移動してきたのかは分かりません。
重要なのは、この327番目の仲間が一時的な存在にならず、極東ロシアの森でも生きていけるようにすることです。
ここでは今、森林火災や違法伐採、密猟者の問題が生じています。
森が守られ、キバノロを含め極東ロシアの生きものが安心して生きていけるように私たちも引き続き保全活動を進めていきます。