極東ロシア「ヒョウの森国立公園」設立へ


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

2012年4月9日、サンクト・ペテルブルグで開催されていた、ロシア地理学会の会合で、極東ロシアにおける保護区の新設が発表されました。この保護区「ヒョウの森」国立公園は、総個体数わずか30頭ほどといわれるアムールヒョウの全生息域のうち、60%をカバーするもので、WWFが10年にわたり、その創設を働きかけてきたものです。

アムールヒョウ保護の柱となる保護区の設立

新しい保護区「ヒョウの森」国立公園は、極東ロシアの沿海地方南西部に位置し、広さは26万2,000ヘクタール(東京都の約1.2倍)。ロシア連邦政府の決議により、正式に設立が決定されました。

この保護区は、もともと管理と規模の異なる複数の保護地域を連結させ、一つの大規模な保護区とすることを目標に、長年にわたって設立が進められてきたものです。

「ヒョウの森」国立公園は、極東ロシアの国境地帯に生息するヒョウの亜種アムールヒョウと、その生息環境を保全するための保護区で、現在わかっているアムールヒョウの生息地の60%を含む上、ヒョウが数世代にわたって繁殖している主要エリアの全てをカバーしています。

また、規模としても、最低50頭の野生のアムールヒョウの生存を支えることのできる広さを持っており、総個体数がわずかに30~40頭と推定されるアムールヒョウの保護に、明るい展望をもたらすものとして期待されています。

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極東ロシアの森に生息するアムールヒョウ。
ヒョウの亜種で、総個体数は30頭ほどと推定される。

新しい国立公園への期待と役割

「ヒョウの森」国立公園について、ロシア政府は年間4,000万ルーブル(約1億489万円)を維持費として支出することを決定。さらに約5億ルーブル(13億1,112万円)をインフラ整備に充てるとしており、名実ともに極東地域で随一の規模を誇る自然保護区として、スタートを切ることになりました。

実際、この国立公園にはボリソフスキー高原の約3万ヘクタールの最重要生息地域が含まれるほか、ロシア・中国国境沿いの12万ヘクタールを超える地域が、特別管理体制の下に置かれ、特別な許可がなければ立ち入ることのできないエリアとして設定されることになっています。

国立公園の設立が実現し、ヒョウが安心して生きることのできる環境を、まとまった規模で保全できる目途が立ったことは、アムールヒョウ保護のみならず、そのエリアに生息するさまざまな野生生物、また極東ロシアの生物多様性を保全してゆく上でも、重要な役割を担っているといえるでしょう。

また、WWFがこれまで推進してきた、野外でのさまざまな調査活動や、森林の伐採、木材取引等にかかわる取り組みについても、今後より大きな相乗効果が期待できます。

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新しい国立公園の森

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調査用の自動カメラで撮影されたアムールヒョウの親子

12年間にわたる取り組みの末に

「ヒョウの森」国立公園、その設立は、WWFロシアにとって、長年の大きな目標であり、悲願でした。実現を目指し、活動を続けてきた、WWFロシア・アムール事務所の代表ユーリ・ダーマンは次のように言っています。

「WWFがアムールヒョウ保護の基礎となる、まとまった規模を持つ保護区を設立するための取り組みを開始したのは、2001年のことでした。一般向けのキャンペーンや、一連の働きかけを通じて、政府の責任者たちの支援をも得ることができたのです」

特に、ロシア連邦セルゲイ・イワノフ副首相は、「ヒョウの森」国立公園の原型となる、複数の保護区の管轄統一について合意した、2008年のロシア連邦天然資源省とWWFとの会合を召集・成功させるなど、アムールヒョウの保全と保護区設立について、さまざまな形で尽力されてきました。

また、国立公園の設立に伴う、さまざまな組織的な困難についても、ロシア沿海地方政府と、ロシア連邦の天然資源省、環境省ならびに関係当局の担当官たちの積極的な協力のおかげで、無事に乗り越えることができ、設立の運びとなりました。

多くの人々の力で実現した、今回の国立公園の新設。
WWFは、今後も継続して「ヒョウの森」国立公園をはじめとするロシア極東地域での、希少な野生生物と森林環境の保全に取り組んでゆきます。

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