地球観測衛星「いぶき」はパリ協定の助っ人![JAXA前編]
2019/12/17
もともと気象キャスターの仕事をしていた小西としては、気象衛星ひまわりの画像をいつも見てテレビ画面でも使っていました。地球を取り巻く雲の動きがわかる気象衛星の登場は、本当に世界の気象観測の能力を劇的に向上させました。
でも地球を観測する衛星は、このひまわり以外に数多くあります。私が今一番関心を持っているのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「いぶき」。これは、世界初の温室効果ガス専用の観測衛星です。すなわち、宇宙から地球上の温室効果ガスの濃度を観測しておりその上昇や変化がわかるのです。
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温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の後継機、「いぶき2号」(GOSAT-2)
これはすごいことです。二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度の単位、100万分の一を表すppm 。この精度で濃度の変化を、地上から高度660kmにある衛星から捉えられるのです!
実はこの「いぶき」は、2020年から本格始動するパリ協定にとても役立つことが見込まれています。パリ協定は気温上昇を2度未満に抑えるために、今世紀なるべく早くに世界の排出量を実質ゼロにするという長期目標を持つ国際協定です。そしてパリ協定に参加する国は、5年ごとに削減目標を国連に提出して、削減を進めていくことになります。
その時に重要なのは、各国が本当に削減を実現しているかどうかを見ることなのです。パリ協定においては、削減目標を達成しなくとも罰則はありませんが、必ず国連に削減しているかどうかを定期的に報告しなければなりません。それらの各国の報告が本当かどうかを見ることはとっても重要となります。それを客観的に見ることを可能とするのが、この「いぶき」なのです。
あこがれの「いぶき」を取材させてもらいました。最先端の科学の結晶である地球観測衛星ですが、実はその運用はとっても人間的。その魅力も併せてぜひご覧ください!
(気候変動・エネルギー担当 小西雅子)
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JAXA GOSAT-2プロジェクトマネージャーの久世暁彦氏(右)とWWFジャパン小西雅子