繰り返されるゾウと人の衝突 インドネシアより
2018/08/04
日本の皆さんこんにちは、WWFインドネシアのララです。
最近、こちらでは絶滅の危機にある野生ゾウに関するショッキングなニュースが続いています。
先月、スマトラ島のアブラヤシ農園で、殺された雌のゾウが発見されました。
隣のボルネオ島でも、仔ゾウが射殺される事件が発生。
そして先日は再びスマトラで、ゾウが村に出没し、逃げ遅れたおじいさんが殺されてしまう悲劇が起きました。
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ボルネオに生息するボルネオゾウ(写真)も、スマトラゾウも、IUCNのレッドリストではEN(絶滅危惧種)に指定され、絶滅が心配されています。
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ゾウに壊されてしまった家。大きな体もつゾウが、すばやく動くときは、ひとたまりもありません。マレーシアのサバ州の東海岸では2018年の3月~5月にわたる2カ月以内に6頭、スマトラのアチェ州では昨年だけで11頭ものゾウの死体が発見されています。
すみかの森が、アブラヤシ農園などに造り変えられ、ゾウと人の行動圏が重なるようになった結果、こうした痛ましい事件が後を絶たないのです。
皆さんはこの「アブラヤシ」という作物をご存知ですか?
パンやお菓子など多くの食品に使用される「植物油脂」に、このアブラヤシから採れるパーム油が含まれているのです。
しかし、仮にパーム油を無くしたとしても、問題は解決しません。代わりの作物をつくる農園開発が続けば、森は結局失われてしまうからです。
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苗を植えて、3年たつと、1年中収穫できるアブラヤシは、他の植物に比べてたくさんの油が採れます。パーム油は今世界一多く消費されている植物油として、食品をはじめ、洗剤などにも使用され、世界中の生活をさまざまな面から支えているのです。
そこで、私たちは野生生物のすむ貴重な森を切り拓くことなく、環境に配慮した形でパーム油を生産し、それを認証するRSPOの普及に取り組んでいます。
世界中どこでも、RSPOマークのついた製品を選んで買えば、こうした森林保全の現場の取り組みを応援できる仕組みです。
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消費国からも、RSPOのパーム油を使用した商品への需要が増えることを願っています。洗剤や、シャンプーではRSPOの商品があるようですが、日本では、食品での取り組みがもっと進むことが期待されています。
(日本生協連は、「コープの洗剤環境寄付キャンペーン」を通じてWWFジャパンのボルネオ島森林保全プロジェクトへ寄付を行い、WWFがボルネオ島インドネシア領の西カリマンタン州で取り組む小規模農家の「持続可能なパーム油」生産などを応援しています。)
このRSPOのマークがついた製品が、日本のお店でももっと増えて、手に取れるように、皆さんからも、ぜひ食品メーカーの方に呼びかけていただけたら嬉しいです。
ゾウと人の問題。そして森とパーム油の問題。
こうした問題の解決のためには、国境を越えてみんなで取り組むことが必要だと、改めて感じています。
私も、現場からできることに、これからも力を注いでゆきます。大切な森を一緒に守ってゆきましょう!
(編訳・構成:森林担当:伊藤)
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?