養殖業に係る適正取引推進ガイドライン案についての意見


WWFジャパンは、水産庁が2021年10月に示した、「養殖業に係る適正取引推進ガイドライン案」についての意見募集に際し、以下の通り意見を提出しました。

<提出内容>
P4(2)養殖魚の取引対価の決定方法に関する事項 ①について

【意見】養殖魚の取引対価については、自然環境と地域社会に配慮した責任ある養殖業を行うための管理コスト、ならびに天然魚を種苗および飼料原料として用いる場合は、IUU漁業由来の水産物の流通を排除するためのトレーサビリティの確立のための投資コストについても加味するべき。

【理由】養殖業が世界的に成長・拡大し続ける中、養殖事業に伴う環境汚染や破壊、天然種苗や飼料原料の持続可能性、労働者や地域社会に関わる様々な問題が指摘されている。日本が平成2年に策定した「養殖業成長産業化総合戦略」では、国内市場はもとより輸出による海外市場での販売を拡大する上でも、環境と社会に配慮した持続可能な養殖業への変革を重要課題としている。しかしながら、課題解決や改善に係るコスト負担が市場価格に反映されず、生産者側に集中している。消費者も含めたサプライチェーン上の関係者全体でトレーサビリティの確立や持続可能な養殖業を行うためのコストを負担し、あるいは、バイヤー側もこういった取り組みを支援し、それらを市場価格に反映させる仕組みが必要となっている。

【背景】WWFは、国内外で、海洋環境保全のために、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の根絶や持続可能な漁業・養殖業の推進に向けた活動を行っている。「養殖業に係る適正取引推進ガイドライン」は、養殖生産を行うに要する資材・機材等の購入ならびに養殖魚の販売にかかる取引の適正化を目的とするものであり、一見すると、海洋環境保全とは無関係とも思われる。しかし、環境と地域社会に配慮した持続可能な養殖業の推進のためには、当然相応のコストがかかり、水産物や水産加工品の取引における消費者を含めた関係者の間での適正なコスト負担が求められている。例えば、生産コストの大部分を占める飼料は、多くの場合、天然魚が原料となっているが、IUU漁業リスクの確認や持続可能性の担保のためには管理・調達コストがかかる。また養殖場を取巻く生態系を保全する必要があり、それにも管理コストがかかる。こういった海洋保全に必要なコストを養殖業者のみならず、バイヤー等、水産物・水産加工品の流通に携わる関係者、さらには消費者も含めた水産物の恩恵を受けている主体全体で負担する必要がある。

ついては、WWFジャパンは、「養殖業に係る適正取引推進ガイドライン」において、商品の取引対価について、自然環境と地域社会に配慮した責任ある養殖業を行うための管理コスト、ならびに天然魚を種苗および飼料原料として用いる場合は、IUU漁業由来の水産物の流通を排除するためのトレーサビリティの確立のための投資コストについても加味するべき、との意見を提出する。

<参考リンク>
水産庁:水産物・水産加工品の適正取引推進ガイドライン案についての意見・情報の募集について

水産庁:水産物・水産加工品の適正取引推進ガイドライン案

WWFジャパン:持続可能な漁業の推進

WWFジャパン:IUU漁業について

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