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森林セミナー「世界の潮流からみる『サステナブル調達』のあり方」開催報告

この記事のポイント
2021年4月22日、WWFジャパンは、森林保全とその持続可能な利用についての国内外の動向、そして企業に期待される対応などを紹介するオンラインセミナー「世界の潮流からみる『サステナブル調達』のあり方」を開催しました。森林資源に関わりのある農林産物を取り扱う企業を中心に、約230名の方に視聴いただきました。

改めて見直される自然の森の価値

減少し続ける森林、顕在化する気候変動。

さまざまな要因を背景に、地球環境や人権に配慮したサステナブルな調達の実践を求める声は高まる一方です。

とりわけ自然の森の減少に加担しない農林産物の生産と調達については、生物多様性や生態系の保全に加え、気候変動の抑制や動物由来感染症の防止という観点からも、その重要性を改めて評価する動きが広まっています。

インドネシアの熱帯林。自然の森は、単に生き物の生息地として重要なだけではなく、その生態系がもたらす恵みに依存して生きる人々の基盤ともいえる。また防災や気候変動、動物由来感染症の防止などの観点からもその価値が見直されている。
© Neil Ever Osborne / WWF-US

インドネシアの熱帯林。自然の森は、単に生き物の生息地として重要なだけではなく、その生態系がもたらす恵みに依存して生きる人々の基盤ともいえる。また防災や気候変動、動物由来感染症の防止などの観点からもその価値が見直されている。

東南アジアとオセアニア地域で急速な森林減少が起きている場所とその要因。「主な要因」と「それに次ぐ要因」に牛の放牧、大規模農業、小規模農業、植林、大規模な伐採などがある(WWF報告書「森林破壊の最前線」より)。

東南アジアとオセアニア地域で急速な森林減少が起きている場所とその要因。「主な要因」と「それに次ぐ要因」に牛の放牧、大規模農業、小規模農業、植林、大規模な伐採などがある(WWF報告書「森林破壊の最前線」より)。

プログラムと各スピーカーの講演資料はこちら

本セミナーでは、主に森林減少に関与する可能性のあるコモディティ(産品)を扱う企業を対象に、世界の潮流、調達方針の策定と運用、そして透明性のある情報開示などについてのあるべき姿やプロセスなどを、WWFジャパンから紹介しました。

第1部 講演 『森林破壊リスクとコモディティ』をめぐる世界の潮流
WWFジャパン 森林グループ 古澤千明(講演資料①

第2部 講演 『サステナブル調達』の考え方と進め方
WWFジャパン 森林グループ グループ長 相馬真紀子(講演資料②

その後、企業の実践例として株式会社ブリヂストン、大和ハウス工業株式会社、花王株式会社(発表順)の3社より取り組みを発表いただき、パネルディスカッションを行ないました。

第3部 企業の取り組み紹介とパネルディスカッション 
ファシリテーター:WWFジャパン 森林グループ 南明紀子
講演1:株式会社ブリヂストン Global CEO室 グローバルサステナビリティ推進部 部⻑ 稲継明宏 様 (講演資料③
講演2:大和ハウス工業株式会社 環境部 環境マネジメントグループ 主任技術者 祖父江伊吹 樣 (講演資料④
講演3:花王株式会社 ESG部門 ESG活動推進部 部⻑ 柴田学 様 (講演資料⑤

企業は効果的な方針の策定・運用・報告を

今回のテーマである「サステナブル調達」に対する企業の関心は、幅広い業種や分野において、年々高まりを見せています。

実際、世界の森林は今もさまざまな要因で減少し続けているものの、責任ある企業としてサステナブルな調達に取り組み、そのファーストステップとして、どのような考え方で調達を行なうかを方針として定める企業は、増えています。

もちろん、方針はただ策定すれば良いわけではありません。

何を対象とするかや、含まれる文言が明確かどうか、実施における社内外の理解や体制の構築が図られているかどうか、また進捗について透明性のある報告がなされているかも重視されるようになっています。

そのなかでも「高い保護価値(HCV:High Conservation Value)」や「高炭素蓄積(HCS:High Carbon Stock)」の保全、「自由で、事前の、十分な情報に基づいた同意(FPIC:Free Prior and Informed Consent」という考え方に基づく先住民や地域コミュニティの権利尊重は、方針に盛り込まれるべき重要な要素として考えられています。

このHCVやFPICは国際的な認証制度として知られるFSC®︎やRSPOでは確認事項に含まれていますが、調達するすべてのコモディティを認証製品にするのは困難なことも多く、まず自社の方針をもって確認することが望ましいのです。

しかし一方で、こうした専門的な用語の認知や理解は、まだ高いとはいえません。

さらに、これまで森林減少に加担するリスクのあるコモディティとして、世界的にも注目されてきた木材、紙、パーム油に加え、近年は新たに天然ゴムや牛肉、大豆、バイオマス燃料などの生産に対しても、同様にサステナビリティを求める機運が高まるなかで、その複雑さが課題として指摘されることがあるのも確かです。

そのため、WWFはCDP、WRI(世界資源研究所)などと協働し、こうした点を改善・整理する取り組みを始めています。

これは「アカウンタビリティー・フレームワーク・イニシアチブ(Accountability Framework Initiative)」と呼ばれるもので、コモディティごとの違いを可能な限り共通言語化し、その考え方や進め方をまとめたものです。

アウンタビリティー・フレームワーク・イニシアチブ
(Accountability Framework Initiative)

① 基本原則
② 運用ガイダンス
③ 用語集 など


基本原則(英語のみ)
https://accountability-framework.org/the-framework/contents/core-principles/
運用ガイダンス(英語のみ)
https://accountability-framework.org/the-framework/contents/operational-guidance/
用語集リンク(英語のみ)
https://accountability-framework.org/the-framework/contents/definitions/

WWFはこうしたツールも活用しながら、今後もさまざまなコモディティを取り扱う企業に対し、調達方針の策定と運用、情報の開示などを求め、生産現場やサプライチェーンの改善を通じた、世界の森林保全に取り組んでゆきます。

【イベント概要】
タイトル: 森林セミナー「世界の潮流からみる『サステナブル調達』のあり方」
日時:2021年4月22日
場所:オンライン開催
参加者数:約230名
主催:WWFジャパン

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