サステイナブルコミュニティセミナーに登壇 OCSでのブランド認証の取得を発表
2024/02/27
- この記事のポイント
- 2023年11月17日、WWFジャパンは、オーガニック繊維の国際認証OCS(Organic Content Standard)でのブランド認証を取得しました。これは、繊維製品を扱うブランドやリテーラー向けの新たな仕組みです。この認証の取得について、11月28日に開かれた、繊研新聞主催のセミナーにWWFジャパンのスタッフが登壇し、解説。この認証が水環境の保全においてなぜ重要か、認証取得の経緯と共に紹介しました。当日は、オンライン、オフライン併せ、100名の参加がありました。
WWFジャパンがOCSでのブランド認証を取得
ファッションをはじめ、さまざまな業界と深いつながりを持つ繊維産業。
繊維産業は、コットン(綿)などの原材料の生産から、紡績、染色といった加工まで、サプライチェーン上のさまざまな過程で、多くの水を利用しています。
特に、コットンの生産は、世界的にも淡水資源が貴重な、乾燥した地域など、水リスクの高いエリアに生産が集中しており、それが淡水資源の枯渇や、生態系への悪影響につながるケースが少なくありません。
環境に配慮したコットンの持続可能な調達は、繊維産業のサステナビリティを実現する上で欠かせない取り組みとして、今、国際的にも大きな注目を集めています。
こうした繊維産業の持続可能な調達の取り組みを後押しする国際NGO「テキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)」では、環境に配慮して生産された、さまざまな繊維原材料の流通を支援する認証制度を管理・運営しています。
こうした認証制度について、テキスタイル・エクスチェンジは2023年4月より、最終製品の販売者であるブランド企業や小売り(プライベートブランド)に向けた「ブランド認証」の仕組みを運用しはじめました。
これは、オーガニック繊維の国際認証OCS(Organic Content Standard)にも適応され、ブランド企業や小売りが取り扱うコットン製品の、OCS認証を取得したものであることを証明し、トレーサビリティを確立、開示するためのものです。
公式オンラインショップ『Panda Shop』を運営しているWWFジャパンでは、2023年11月17日に、このOCSでのブランド認証を取得(License No: KN0034、Certification body: KE’KEN)。『Panda Shop』で取り扱っているオーガニックコットン製品が、認証を取得したものであることを明らかにした形で、販売を開始しました。
これからのサステイナブル・コットン調達とは? 繊研新聞のセミナーに登壇
このブランド認証の取得について、WWFジャパンは、認証機関や『Panda Shop』のサプライヤー企業、テキスタイル・エクスチェンジとともに、2023年11月28日に繊研新聞が開催した「サステイナブルコミュニティセミナー これからのサステイナブル・コットン調達とは?~WWFジャパンがOCSブランド認証を取得へ~」にて講演。
まず、WWFジャパンの小林からは、淡水生態系の危機的な状況と、繊維産業と淡水の深いかかわりを解説し、その中でも特に水と関わりの深い原材料であるコットンの生産の環境・社会の課題を共有しました。そうした中で、最終製品から原料の生産地までのサプライチェーンを把握するトレーサビリティの重要性を指摘。そしてトレーサビリティを確保するツールとしてOCSの仕組みを紹介しました。
次に、認証機関であるケケン試験認証センターの板倉氏からは、テキスタイル・エクスチェンジの取り組み、その中でもオーガニック繊維の流通に関わる認証としてのOCS認証の仕組み、そして新設された「ブランド認証」の取り組みと申請・取得に必要な事項の紹介がありました。
WWFジャパン『Panda Shop』担当の池田からは、WWFジャパンが2021年より取り組んでいる「サステナブル・コットン調達」の取り組み、すなわち取り扱っているコットン製品について、OCSもしくはGOTS(Global Organic Textile Standard)の認証を受けた製品のみの取り扱いをしていることを紹介。「ブランド認証」の取得の背景として、テキスタイル・エクスチェンジのルール変更に加え、WWFジャパン自らが認証取得を行うことで、サステナブル・コットン調達の取り組みを検討している企業の参考事例となり、繊維業界と連携したサステナビリティの取り組みのきっかけとなることを期待していることを強調。
また、実際のOCS認証取得に際して必要となった作業として、実際に行っている業務の整理と文書化が中心となったことを報告しました。合わせて、Panda ShopのOCS製品サプライヤーである株式会社熊谷の熊谷氏とともに企画中の新商品(ブランド認証取得後初の商品となる予定)の発表を行いました。池田と熊谷氏は、日本国内での国際認証に対する認知や普及の低さを現状の課題として指摘し、より多くの関連企業との連携が、サステナブル・コットン調達のために必要なことを強調しました。
最後に、テキスタイル・エクスチェンジ・アンバサダーの稲垣氏から、2023年11月にロンドンで開催されたテキスタイル・エクスチェンジの年次会合の様子が報告されました。同会合には対面で1,370人、オンラインで532人という非常に多くの繊維業界関係者が参加し、繊維産業のサステナビリティについての様々な議論が行われました。その中でも主要な話題の一つとなったのが、欧州環境訴求指令案(EU Green Claim Directive)であり、今後欧州では環境配慮に関する訴求には根拠が求められることとなり、OCSのような第三者認証制度の果たす役割がより重要性を持つ可能性が高いことを強調。日本企業の積極的な認証取得への期待を述べました。
WWFジャパンは今後も、世界の水環境の保全を実現してくために、自らサステナブル・コットンの調達に取り組むと同時に、コットン製品を中心とした繊維の生産・流通の持続可能性を、繊維産業全体で高めていくため、サプライチェーン上のさまざまなステークホルダーに対し、働きかけを行なっていきます。