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ロシア産カニのIUUリスクが明らかに 「日露二国間協定後のロシア産カニの流通の現状とIUUリスクについて」報告書発表

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2023年6月22日(カニの日)。WWFジャパンと中日新聞の共同調査報告書「日露二国間協定後のロシア産カニの流通の現状とIUUリスクについて」が発表されました。2014年の日露二国間協定により、違法・無報告・無規制(IUU)漁業由来のカニの流通を阻止できていたと考えられていましたが、本調査によって新たなIUUリスクが明らかとなりました。
目次

IUU漁業とロシア産カニ

違法・無報告・無規制漁業(以下、「IUU漁業」とする)については、乱獲だけでなく、人権侵害などの多くの問題を引き起こすとして、近年その影響がますます顕在化しつつあります。

世界のIUU漁業による漁獲量は1,100~2,600万トン(日本の漁獲量の約3~6倍)と試算されており、IUU漁業対策は、その規模の大きさから、国連、G7、G20 、地域漁業管理機関(RFMO)など、多くの国際機関での重要課題に位置づけられています。

また、IUU漁業リスクの高い魚種の一つがカニであり、その中でもロシア産カニのリスクが高いと言われています。

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IUU漁業について

WWFジャパンが2014年10月に発表したロシア産カニの貿易フローに関する調査でも、国に報告された漁獲量を上回る量のカニが流通していたことが判明。IUU漁業やカニの密輸の実態が明らかになりました。

そのような背景もあり、ロシア産カニの主要な輸入国である日本は、ロシアからのカニの密輸を防止する目的で、2014年12月に日露二国間協定を締結しました。

これにより、カニの原産国であるロシアの証明書がなければ、カニを輸入することができなくなり、この協定によって、密輸を防ぎ、IUU漁業由来の水産物の流通を減らすことが期待されていました。

こうした経緯の中、今回、WWFと中日新聞が発表した2023年の報告書では、以前はカニの輸入量が漁獲量を大幅に超過する明らかな違法状態であったものが、日露二国間協定制定後の2015年以後はそれが解消されていることが明らかとなりました(図1)。

よって、二国間協定が違法なカニの流通を防ぐ一定の効果がみられていると考えられます。

図1. ロシアのカニ TAC、漁獲量、輸出量、輸入量の比較

図1. ロシアのカニ TAC、漁獲量、輸出量、輸入量の比較

第三国オランダを経由したロシア産カニの流通とリスク

その一方で、今回の調査は、新たなリスクが疑われる流通の現状も明らかにしました。

ロシアからのカニの輸出先は、日本、アメリカ、韓国、中国であり、2013年までは全体の9割を占めていましたが、その割合は徐々に減少し、2020年には75%まで低下していました。

ところが、日露二国間協定が制定された後、特に2015年以降になると、オランダや韓国といった第3国を経由した輸出に、増加が認められるようになったのです。

特にオランダではロシアからの輸出量増加が著しく、2013年は2,328トンであった輸出量が2020年には15,885トンに急増しています(図2)。

しかも、それらのほとんどはオランダ国内には入らず、オランダの保税倉庫を経て、アメリカや日本などに輸出されています。

図2. オランダ・ロシア間の冷凍カニの輸出入量の推移

図2. オランダ・ロシア間の冷凍カニの輸出入量の推移

中日新聞記者によるヒアリング調査によると、オランダ経由の場合、原産地証明書はオランダの商工会議所が発行し、ロシア政府の証明書よりも容易に取得できるため、「日ロ間の規制がきつくなった代わりに抜け道として」オランダが伸びた、という情報に加え、「中継貿易は合法だが、IUU漁業が入り込む余地は大きくなっている」と証言が得られています。

依然として高いロシア産カニのIUU漁業リスク

また本報告書では、ロシア国内でのカニのIUU漁業や違法取引の現状を調べるため、インターネット検索による調査も実施しました。

その結果、ロシア語メディアにおいて多くのカニ違法取引報道が確認されており、違法漁獲は現在もロシアで横行していると考えられます。

日露二国間協定により、ロシアからの直接輸入が厳格に管理されている一方、オランダなどの第三国経由の流通が抜け穴となり、ロシア国内で多く流通しているようなIUU漁業由来のカニが日本やアメリカなどに輸出されている可能性があります。

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流通適正化法の対象種への追加検討が必要

今回の報告書で明らかとなったIUU漁業リスクを低減するためには、二国間協定の強化や、日本国内での輸入管理を強化する必要があります。

2022年12月、国内でのIUU漁業由来の水産物の流通を防止するための新法「水産流通適正化法」が施行されました。

しかし、対象魚種は輸入水産物についてはわずか4種であり、カニは含まれていません。

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IUU対策「水産流通適正化法」施行 残された課題とは?

世界のIUU漁業を撲滅するためには、EUのように、全魚種を流通適正化法の対象にし、一貫した方法で輸入管理を行なう必要性があります。

また、ロシア産カニにおける二国間協定の成果や課題を精査し、水産流通適正化法の運用改善につなげることが重要です。

報告書

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