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徳島県の脱炭素に向けた取り組み

この記事のポイント
地球温暖化の深刻な影響を抑える上で欠かせない「脱炭素社会の実現」には、地方自治体の取り組みが重要です。その中で、国に率先し、意欲的な目標を掲げてきた自治体のひとつが「徳島県」です。その背景や、脱炭素化実現のための取り組みについてご紹介します。
目次

「日本の温暖化対策をけん引する」という強い思い

2015年12月、地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるため、すべての国が温室効果ガス削減に向けて取り組むことを規定した「パリ協定」が採択され、2016年11月4日に発効しました。

その発効に先立ち2016年10月、徳島県は、全国で初めて「脱炭素社会の実現」を掲げる条例を制定。

同時に、2030年度の温室効果ガスを40%削減(2013年度比)する目標を掲げ、実行してきました。

大川原高原の風力発電
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大川原高原の風力発電

そして2019年11月、世界に出遅れていた日本政府を後押しし、日本の温暖化対策をけん引する、という強い思いのもと、国に先立ち「2050年温室効果ガス実質ゼロ」を宣言。

さらに、2020年3月に策定した「徳島県気候変動対策推進計画(緩和編)」において、2030年度の温室効果ガス排出量削減目標を、2013年度比で、40%削減から、50%削減に引き上げました。

▼関連リンク:徳島県のサイトへ
徳島県気候変動対策推進計画(緩和編)

「地方発の水素社会」の実現を、官民一体で目指す

脱炭素社会を実現するために、徳島県は2030年度までに県の電力需要における自然エネルギーの割合を50%にするという目標を掲げています。

さらに、自然エネルギーの拡大に加え、水素エネルギーの率先導入にも力を入れています。

水素は、利用時に温室効果ガスを排出せず、エネルギー効率の高さや貯蔵・運搬ができることによる非常時対応等の効果が期待されています。

また、水素を自然エネルギー由来の電力から製造するシステムが整えば、製造から利用までの全過程で温室効果ガスを排出しないため、国も「水素基本戦略」を定めて導入を進めています。

豊かな自然と日照時間の長さから自然エネルギーのポテンシャルが高い徳島県は、自然エネルギー由来の水素エネルギーの活用という長期的な展望を見据え、2015年10月に「徳島県水素グリッド構想」を策定し、県庁での水素ステーションの導入や、公用車への燃料電池自動車の率先導入などを進めてきました。

▼関連リンク:徳島県のサイトへ
徳島県水素グリッド構想

徳島県庁に設置された水素ステーションとFCV(燃料電池自動車)のパトカー。徳島県庁の水素ステーションの水素は、自然エネルギー由来で、県庁の屋上の太陽光発電でほぼまかなわれている。
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徳島県庁に設置された水素ステーションとFCV(燃料電池自動車)のパトカー。徳島県庁の水素ステーションの水素は、自然エネルギー由来で、県庁の屋上の太陽光発電でほぼまかなわれている。

今後は、県内の工場において、苛性ソーダ生成時に副次的に生成された水素を有効活用する商用の水素ステーションも開設予定です。

将来的には、自然エネルギー由来の電力を活用して製造されるグリーン水素の大量導入を見据え、県内のさまざまなステークホルダーと協力し、今から水素サプライチェーンの構築に取り組んでいます。

水素グリッド導入連絡協議会
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水素グリッド導入連絡協議会

水素の本格的な利活用に向けては、サプライチェーンなどの大規模な体制整備が必要であり、コストもかかります。

「徳島県水素グリッド構想」の策定や実行においても、それら課題を解決しながら進める必要がありました。

そのために「水素グリッド導入連絡協議会」を立ち上げ、県内の多様なステークホルダーと協議を積み重ねてきました。

とくに水素の製造・販売事業者や自動車関連事業者など、水素を「つくる」・「つかう」事業者には、当初から参加してもらうなど、水素事業の必要性や重要性、県の方針への理解と協力がありました。

コスト面に関しては、国の予算を活用して県内でのフィージビリティ調査を行うだけでなく、県独自の予算も確保し、投入することで、民間企業が参入し易い環境を整備しています。

このように、国、そして事業者と早い段階から連携し取り組むことで、「地方発の水素社会」をけん引してきました。

消費者庁と連携し、県民の「エシカル消費」意識を向上

また、徳島県では、脱炭素社会の実現に向けて、県民の「エシカル消費」意識が高いことも強みとしています。

2017年7月、中央省庁の地方移転として、徳島県庁に消費者庁・国民生活センターの「消費者行政新未来創造オフィス」が開設されました。

徳島県がもともと消費者教育、倫理的消費、人材育成の面で、熱心な取り組みをしていたことに加え、徳島県から働きかけを行なったことで、移転先に徳島県が選ばれたのです。

消費者行政新未来創造オフィスは、消費者行政の発展・創造のためにふさわしい機能と規模を備えた新たな恒常的拠点として、2020年7月、明治開闢以来初めて、国の本庁機能が霞が関を離れ、「消費者庁新未来創造戦略本部」として県庁に再開設されました。

消費者庁新未来創造戦略本部開設
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消費者庁新未来創造戦略本部開設

徳島県は、この戦略本部を中心として、消費者庁とともに、エシカル消費の普及や促進のため、さまざまな取り組みを行なっています。

たとえば、

  • 消費者団体、事業者、教育機関、行政等が定期的に集まり情報交換をする「とくしまエシカル消費推進会議」の設置
  • 県内全ての公立高校でエシカルクラブを設置
  • 全国の高校生等がエシカル消費に関する発表を行なう「エシカル甲子園」の開催

などです。

▼関連リンク:徳島県のサイトへ
エシカル甲子園2020

エシカル消費の普及や促進にあたり工夫したのは、県庁内部での連携です。

幅広い分野でエシカル消費に関する事業を展開するには、それを実行する県庁の職員に、日々の業務とエシカル消費の関連性を理解してもらう必要がありました。

そのため、部署間での情報交換や連携を目的とした「エシカル消費タスクフォース」を設置。これが、幅広い事業を展開するカギとなっています。

脱炭素化の実現には、家庭部門からの温室効果ガス排出の削減もとても重要です。このような普及啓発の取り組みは、とても地道な活動ですが、家庭から排出される温室効果ガスの削減などに確実につながっており、実際その数値が低下するなど成果が現れています。

「地域脱炭素化」の加速には、国・自治体・地域企業・住民等が一丸となった取り組みが重要

「徳島県水素グリッド構想」や、エシカル消費の普及施策からわかるように、国・自治体・地域企業等が一丸となって取り組むことが「地方の脱炭素化」を加速させるためには重要です。

これに率先して取り組んできた徳島県は、これからも日本の脱炭素化をリードする自治体として、国、そして地域の事業者や団体などと連携しながら、脱炭素社会の実現に向けて全力で取り組むとしています。

*この記事は、徳島県危機管理環境部グリーン社会推進課への取材をもとに執筆いたしました。

WWFジャパンでは、自治体のみなさまの気候変動対策を後押しできるよう、さまざまな活動を推進しています。

気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)
気候変動対策に積極的に取り組む企業・自治体・NGOなど650以上の団体が参加するネットワークです。WWFジャパンは共同事務局を務めています。

Race to Zeroキャンペーン
UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局が主催する国際キャンペーンで、遅くとも2050年までに排出実質ゼロを目標に掲げ、その実現に向けて行動を起こすことを約束した企業・自治体・大学など様々な主体が参加しています。JCIは、Race To Zeroキャンペーンの公式パートナーとして、日本からの参加を推進しています。

One Planet City Challenge:OPCC
WWFが2011年から隔年で主催している自治体の気候変動対策に関する国際的なコンテストです。

ゾーニング情報(自治体による再生可能エネルギーの適地選定)
2021年の温対法改正により、再生可能エネルギーの導入適地を明確にするゾーニングの実施が、全ての基礎自治体で努力義務化されます。2017年にかけて、WWFジャパンが徳島県鳴門市と協力して実施した先行事例と自治体向けの手引書を紹介しています。
先行事例
手引書

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