うんことばホイールが出来るまで
2020/07/30
「においの惑星」とは?
Webサイト「においの惑星―くんくんPlanetに出かけよう」が公開になりました。このサイトでは、「におい」に着目した環境教育プログラム「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう―」を通じて集められた、動物たちのうんこのにおいを表現した言葉を、動物種ごとにまとめた「うんことばホイール」を見ることができます。
このうんことばホイールが、どうやってできたのかを紹介しましょう。
うんことばホイールが出来るまで
言葉を集める
まず、うんことばホイールの素材となる「うんことば」を集めます。
うんことばは、WWFジャパンが開発した環境教育プログラム「においでめぐる動物園―くんくんPlanetに出かけよう―」のイベント参加者のみなさんが書いてくださったものです。その数はなんとのべ2,500名にものぼります。
イベントでは、動物園に暮らす動物たちのうんこをカップに入れ、蓋をして、蓋にある穴からそっとそのにおいを嗅いでもらいました。そして、そのにおいを味覚になぞらえるとどんな感じかを選択し、「どんなにおいだったか」を自分の言葉で考えて、カードに書いてもらいました。
ちなみに、イベントではこの後、動物たちが実際に動物園で食べているエサと、野生での暮らしを紹介します。嗅覚を使って実感したことと、動物の知識をつないで、記憶に残る体験を生み出します。
言葉を分類する
集まったうんことばを、後日、製作チームが分類します。
カードに書かれた言葉を一枚一枚読んで確認し、カテゴリーごとに分けていきます。多い時には動物1種につき数百枚ものカードが集まります。
参加者のみなさんによる手書きのカードなので、言葉そのものだけでなく筆跡からも書き手の感情が伝わってきます。
分類するカテゴリーは、その時々で変わります。動物によって、登場する言葉のバリエーションが異なるからです。例えば、パンダなら「笹」が多く出てきますが、他の動物ではあまり出てきません。他にも、なぜか薬・漢方薬という言葉が多いものなど、予測のつかない変化があります。
数人で手分けをしながら、分類に悩んだ言葉は読み上げて、書き手の意図を想像し合いながら分けていきます。地味ながらもわいわいと盛り上がる、とても楽しい作業の一つです。
中には1枚のカードに複数のうんことばが含まれるものもあるので、書き手の思いを想像しながらいくつかの言葉に分けて、パソコンで入力していきます。
最初にカテゴリー分けしたうんことばは、最終的に13個の分類項目にまとめられていきます。どんな分類項目があるか、ぜひ実際のうんこことばホイールで探してみてください。
言葉を円形に並べる
分類したうんことばを円形に並べていきます。
並べる際には、まず味覚でまとめ、次に分類でまとめます。分類項目の中も、できる限り似た言葉が近くに並ぶように配置していきます。
そうして完成したのが、うんことばホイールです。
1回のイベントで4種類の動物を対象としているので、イベント毎に4つのうんことばホイールが完成します。
うんことばホイールの形の秘密
うんことばホイールは、どうして円形なのでしょうか?
この形は、ワインのソムリエやコーヒーのバリスタたちが使う「アロマホイール」を参考にして作りました。アロマホイールは、ワインやコーヒーがそれぞれに持つ独特な香りを、自分以外の人に伝えるために生まれたものです。彼らが作るアロマホイールは、多種多様な人々が共通認識を持てるように、名詞のみを使って、感情面はそぎ落として書くのだといいます。
ですが、うんことばホイールでは、人間の感情的な言葉も掲載しています。人々のリアクションや文化的な背景を含めて味わいたいからです。
うんことばホイールには、描写の細かな言葉や、感情に訴えてくる言葉、あっさりした言葉、様々な言葉が書かれています。反対の意味をもった言葉が並ぶ部分もあります。
においの感じ方に正解・不正解はありません。傘連判状(からかされんばんじょう)のように、ここに書かれた言葉に上下関係はなく、どの言葉も全て対等に素晴らしいものであるという気持ちも、この形に込められています。
ぜひ、実際のうんことばホイールで、たくさんの言葉を読んでみてください。そして、においを想像してみてください。
うんことばホイールが、動物たちの暮らしを想像する入り口になるに違いありません。
(文:熊谷香菜子)