森林火災はよい?悪い?
2019/10/24
鮮やかな黄色と、白いアイラインが目立つ小柄な鳥。
日本では残念ながら見ることのできない鳥です。
名前は、カートランドアメリカムシクイ。
アメリカのミシガン州周辺の森に生息する鳥で、実は「森が燃えないと生きられない!」という変わった習性を持つことで知られています。
カートランドアメリカムシクイが巣を造るのは、ジャックパインというマツ科の林の地面。
それも、高さ1~5メートルくらいの若木の林でなければならず、しかも川沿いの砂地がお好み、というこだわりぶりです。
この鳥の生息する森では、しばしば落雷による自然の山火事が発生。そのおかげで、常に若い木が生え、営巣に適した場所を手にすることが出来ました。
しかしその後、保護区も作られ、「森林火災だ、さァ大変!」と、人が火を消し、森を「保護」するようになると、カートランドアメリカムシクイは巣を作れなくなり絶滅危惧種に。
他の鳥による托卵の影響もあり、一時は167羽(鳴くオスのみ)まで減ってしまいました。
一転して採られた保全策は、森を人為的に燃やす、というこれまたびっくりする内容。そうして造成された営巣適地は、これまでに合計500平方キロを超えるといいます。
その結果、個体数も約5,000羽まで回復。今では深刻な絶滅危機を脱しました。
森の火災にも、自然界に必要なものと、人がもたらす破壊的なものがあります。
自然のこと、生きもののことを謙虚に捉え、知る努力をしなければ、打つべき保全のための手立ても見えてはきません。
カートランドアメリカムシクイのような生きものの存在を思いながらも、今、熱帯で起きている深刻な森林火災を食い止める努力を、最大限にしていかねばと改めて思います。