© Alain Compost / WWF

森林火災はよい?悪い?


鮮やかな黄色と、白いアイラインが目立つ小柄な鳥。
日本では残念ながら見ることのできない鳥です。

名前は、カートランドアメリカムシクイ。

アメリカのミシガン州周辺の森に生息する鳥で、実は「森が燃えないと生きられない!」という変わった習性を持つことで知られています。

カートランドアメリカムシクイが巣を造るのは、ジャックパインというマツ科の林の地面。
それも、高さ1~5メートルくらいの若木の林でなければならず、しかも川沿いの砂地がお好み、というこだわりぶりです。

この鳥の生息する森では、しばしば落雷による自然の山火事が発生。そのおかげで、常に若い木が生え、営巣に適した場所を手にすることが出来ました。

しかしその後、保護区も作られ、「森林火災だ、さァ大変!」と、人が火を消し、森を「保護」するようになると、カートランドアメリカムシクイは巣を作れなくなり絶滅危惧種に。
他の鳥による托卵の影響もあり、一時は167羽(鳴くオスのみ)まで減ってしまいました。

一転して採られた保全策は、森を人為的に燃やす、というこれまたびっくりする内容。そうして造成された営巣適地は、これまでに合計500平方キロを超えるといいます。
その結果、個体数も約5,000羽まで回復。今では深刻な絶滅危機を脱しました。

地球上の森には、火災を必要とする生きものたちもいる一方で、今、アマゾンやインドネシア、アフリカなどの熱帯林では、大規模な森林火災が起きています。これらの森は本来湿度も高く、自然の状態で何カ月も燃え続けるようなことはまずない、燃やしてはいけない森林環境です。
© Day's Edge / WWF-US

地球上の森には、火災を必要とする生きものたちもいる一方で、今、アマゾンやインドネシア、アフリカなどの熱帯林では、大規模な森林火災が起きています。これらの森は本来湿度も高く、自然の状態で何カ月も燃え続けるようなことはまずない、燃やしてはいけない森林環境です。

森の火災にも、自然界に必要なものと、人がもたらす破壊的なものがあります。

自然のこと、生きもののことを謙虚に捉え、知る努力をしなければ、打つべき保全のための手立ても見えてはきません。

カートランドアメリカムシクイのような生きものの存在を思いながらも、今、熱帯で起きている深刻な森林火災を食い止める努力を、最大限にしていかねばと改めて思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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