© Yosuke Amano / WWF

絵本のご紹介『コアラのなみだ』


オーストラリアでは2019年の夏、歴史上最大規模といわれる火災が発生。東部の森林地帯を含む、広大な面積が炎に包まれました。

この火災では、国民の8割が影響を被ったほか、そこに生きる多くの野生生物も被災。

オーストラリアを代表する野生動物のコアラも、その大きな被害を受けた動物の一種です。

© Andrew Merry / Getty / WWF

1万5,000カ所で発生したという2019年のオーストラリアの火災は、気候変動の影響によると考えられる、観測史上最も高い気温と乾燥により拡大。推定で北海道の倍に相当する17万平方kmの森や原野が焼失しました。

コアラは母親のおなかにある袋で赤ちゃんを育てることで知られる有袋類と呼ばれる哺乳類。毒を含むユーカリの木の葉を食べ、普段は水を飲むことがないなど、ユニークな生態を持つことで知られています。

そして、2019年の火災は、このコアラが生息するユーカリの森をも襲いました。

コアラは、樹上でくらし、地上に降りることが稀で、ユーカリの葉が無ければ生きられない動物。そんな動物のすむ森が火災に見舞われたら、どうなるのか。

そんなコアラの受難を物語にした絵本『コアラのなみだ だれもいなくなったユーカリの森のこえ』を先日、WWFにご寄贈いただきました。

『コアラのなみだ だれもいなくなったユーカリの森のこえ』
作:今西乃子、絵:サトウユカ、合同出版(2023年1月)

お贈りくださったのは、この絵本の著者の今西乃子さん。動物にかかわる問題にも、熱心に取り組まれている児童文学作家の方です。

親子のコアラを主人公にしたこの絵本では、火災で命を落とすだけでなく、火傷を負ったり、慣れない地面での移動を強いられる危険に見舞われる生きものたちの姿が丁寧に描かれ、人と野生動物のかかわりのあり方を深く考えさせてくれます。

今回は、これから大人になっていく子どもたちに、この問題に関心を持ち続けてもらう大切な一歩として、こちらの絵本をご紹介させていただきたいと思います。

機会がありましたら、ぜひお手に取って、お子様とご一緒にご覧になってみてください。

© Martin Harvey / WWF

現在WWFオーストラリアは、2030年までに20億本の樹木を保全・回復を目指し活動を行なっていますが、失われた自然を取り戻すまでには、まだ長い時間が必要です。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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