© Harish Segar / WWF

解説「アメリカザリガニとミドリガメの放流が禁止に?」


「アメリカザリガニとミドリガメの放流が禁止に」というニュースが注目を集めています。

アメリカザリガニとミドリガメ(正式名称はミシシッピアカミミガメ)は、もともとは北米大陸に分布する生きもの。日本でもよく知られた外来生物です。

そして、よく知られている理由の一つは、身近な水辺でも目にすることが多く、ペットとしても販売・飼育されているため。

これらについて今回、環境省の中央環境審議会が、環境省と農林水産省に対し、「販売や販売目的の飼育、また海外からの輸入、野外への放流などを規制すべき」という審議の結果をまとめた、というのが、今回のニュースの主旨です。

正確には、まだ放流禁止が決まったわけではなく、昨年末にこの提言がまとまり、1月11日に環境大臣と農水大臣に対する答弁が行なわれた、という段階。

これから、審議の結果を踏まえ、環境省が今年の国会で提出する「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」の改正法案を検討する、というところです。

アメリカザリガニ
©Junkichi Mima / WWF Japan

アメリカザリガニ

ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)
©Junkichi Mima / WWF Japan

ミドリガメ

それにしても、なぜ、アメリカザリガニとミドリガメが、ここでクローズアップされたのでしょうか?

理由は、この2種の外来生物が、「特定外来生物」に指定されていないため。

特定外来生物は、販売はもちろん、飼育まで原則禁止となっています。外来生物法の下、厳しい規制下に置かれているわけです。

しかし、この2種はあまりにも広く日本で広がってしまい、家庭などでも飼育している例が少なくありません。

これを特定外来生物に指定してしまうと、飼育が困難になるため、野外にひそかに放してしまうケースが増える可能性もあります。

そのため、今回の中央環境審議会の審議では、この2種を特定外来生物に指定するのではなく、別の法的な枠組みを設けて、一般的な飼育を除いた、販売や販売目的の飼育、輸入、放流などを禁じるべきことが提議された、というわけです。

この他にも、今回の審議会では、ツマアカスズメバチやクビアカツヤカミキリといった、近年日本で確認されるようになった、新たな外来生物についても名前が上ったほか、分類の困難な交雑種の規制などについても、議論が行なわれました。

また、日本では「全国的に見れば、効果的な防除を進めるための体制、資金及び技術は十分に整っているとはいえない。」という、外来種問題の課題も改めて指摘。

アメリカザリガニとミドリガメのみならず、外来生物法の改正にあたっては、検討改善すべきことが多くあることが、明らかにされています。

法改正には時間がかかり、すぐに結果や変化が期待できるものではありませんが、これは将来的な日本の自然保護を左右する大きな取り組みです。

WWFも引き続き、この議論の行方をおいつつ、現在、政府で検討されている次期「生物多様性国家戦略」の中でも、外来生物問題がどのように位置づけられ、対応が取られるのか、注視していきたいと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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