解説「アメリカザリガニとミドリガメの放流が禁止に?」
2022/01/12
「アメリカザリガニとミドリガメの放流が禁止に」というニュースが注目を集めています。
アメリカザリガニとミドリガメ(正式名称はミシシッピアカミミガメ)は、もともとは北米大陸に分布する生きもの。日本でもよく知られた外来生物です。
そして、よく知られている理由の一つは、身近な水辺でも目にすることが多く、ペットとしても販売・飼育されているため。
これらについて今回、環境省の中央環境審議会が、環境省と農林水産省に対し、「販売や販売目的の飼育、また海外からの輸入、野外への放流などを規制すべき」という審議の結果をまとめた、というのが、今回のニュースの主旨です。
正確には、まだ放流禁止が決まったわけではなく、昨年末にこの提言がまとまり、1月11日に環境大臣と農水大臣に対する答弁が行なわれた、という段階。
これから、審議の結果を踏まえ、環境省が今年の国会で提出する「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」の改正法案を検討する、というところです。
それにしても、なぜ、アメリカザリガニとミドリガメが、ここでクローズアップされたのでしょうか?
理由は、この2種の外来生物が、「特定外来生物」に指定されていないため。
特定外来生物は、販売はもちろん、飼育まで原則禁止となっています。外来生物法の下、厳しい規制下に置かれているわけです。
しかし、この2種はあまりにも広く日本で広がってしまい、家庭などでも飼育している例が少なくありません。
これを特定外来生物に指定してしまうと、飼育が困難になるため、野外にひそかに放してしまうケースが増える可能性もあります。
そのため、今回の中央環境審議会の審議では、この2種を特定外来生物に指定するのではなく、別の法的な枠組みを設けて、一般的な飼育を除いた、販売や販売目的の飼育、輸入、放流などを禁じるべきことが提議された、というわけです。
この他にも、今回の審議会では、ツマアカスズメバチやクビアカツヤカミキリといった、近年日本で確認されるようになった、新たな外来生物についても名前が上ったほか、分類の困難な交雑種の規制などについても、議論が行なわれました。
また、日本では「全国的に見れば、効果的な防除を進めるための体制、資金及び技術は十分に整っているとはいえない。」という、外来種問題の課題も改めて指摘。
アメリカザリガニとミドリガメのみならず、外来生物法の改正にあたっては、検討改善すべきことが多くあることが、明らかにされています。
法改正には時間がかかり、すぐに結果や変化が期待できるものではありませんが、これは将来的な日本の自然保護を左右する大きな取り組みです。
WWFも引き続き、この議論の行方をおいつつ、現在、政府で検討されている次期「生物多様性国家戦略」の中でも、外来生物問題がどのように位置づけられ、対応が取られるのか、注視していきたいと思います。