宮城県戸倉カキ養殖が農林水産祭天皇杯受賞
2019/12/18
12月14日に、宮城県南三陸町にて「令和元年度第58回農林水産祭天皇杯受賞記念祝賀会」が執り行なわれました。
これは、地元で養殖を営む戸倉かき生産部会が、農林水産省が実施するこの天皇杯を受賞したことを記念し、開かれたものです。
カキ養殖業者の方々が、東日本大震災を契機にそれまでの過密養殖を改善し、国際的な養殖エコラベルのASC認証を取得したのは2016年のこと。カキの品質改善だけでなく、海の環境や地域社会、経済上の課題を克服したことが評価され、今回の受賞に至りました。

祝賀会で挨拶するWWFジャパンの筒井事務局長。農林水産祭は、水産業、農業、林業、酪農業など7部門でその年の最も優れた取り組みを表彰します。

授与された天皇杯ならびに表彰状。水産部門からは今年2月の全国青年女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を受賞した5団体の中から、戸倉かき生産部会の取組が選ばれました。
戸倉の取組は、ASC認証を日本で初めて取得したことで注目を集めましたが、その本質は、海の環境を守りながら「量から質」の養殖に転換することを、生産者自らが決意したことです。
その取り組みはカキの成長と品質を向上させ、さらには労働時間の短縮や災害リスクの軽減へとつながりました。
また養殖再開にあたって既存の施設配分を見直したことで、新たに養殖を始める若者が増えたことも大きな成果です。

豊かな環境で大切に育てられた南三陸戸倉っこかき。東日本大震災では、津波により湾内の養殖設備がすべて失われましたが、そこから、逆境を活かした戸倉の皆さんの挑戦が始まりました。
南三陸町で執り行なわれた祝賀会には、震災以降ASC取得を支援してきたWWFジャパンをはじめ、およそ160名を超える出席者が参加。
天皇杯受賞を祝うとともに、今後のますますの「持続可能な」発展に向けて連携していくことを誓いました。
戸倉の事例はさまざまなことを私たちに教えてくれます。
ASC認証の「自然環境と社会に責任ある養殖」を実践することは、自然環境のためだけではなく、そこに従事する人たちの生活を豊かにすることにつながります。
今回の事例を参考に、責任ある養殖業のさらなる普及に努めていきたいと思います。(海洋水産保全担当 前川)