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宮城県戸倉カキ養殖が農林水産祭天皇杯受賞


12月14日に、宮城県南三陸町にて「令和元年度第58回農林水産祭天皇杯受賞記念祝賀会」が執り行なわれました。

これは、地元で養殖を営む戸倉かき生産部会が、農林水産省が実施するこの天皇杯を受賞したことを記念し、開かれたものです。

カキ養殖業者の方々が、東日本大震災を契機にそれまでの過密養殖を改善し、国際的な養殖エコラベルのASC認証を取得したのは2016年のこと。カキの品質改善だけでなく、海の環境や地域社会、経済上の課題を克服したことが評価され、今回の受賞に至りました。

祝賀会で挨拶するWWFジャパンの筒井事務局長。農林水産祭は、水産業、農業、林業、酪農業など7部門でその年の最も優れた取り組みを表彰します。
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祝賀会で挨拶するWWFジャパンの筒井事務局長。農林水産祭は、水産業、農業、林業、酪農業など7部門でその年の最も優れた取り組みを表彰します。

授与された天皇杯ならびに表彰状。水産部門からは今年2月の全国青年女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を受賞した5団体の中から、戸倉かき生産部会の取組が選ばれました。
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授与された天皇杯ならびに表彰状。水産部門からは今年2月の全国青年女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を受賞した5団体の中から、戸倉かき生産部会の取組が選ばれました。

戸倉の取組は、ASC認証を日本で初めて取得したことで注目を集めましたが、その本質は、海の環境を守りながら「量から質」の養殖に転換することを、生産者自らが決意したことです。

その取り組みはカキの成長と品質を向上させ、さらには労働時間の短縮や災害リスクの軽減へとつながりました。

また養殖再開にあたって既存の施設配分を見直したことで、新たに養殖を始める若者が増えたことも大きな成果です。

豊かな環境で大切に育てられた南三陸戸倉っこかき。東日本大震災では、津波により湾内の養殖設備がすべて失われましたが、そこから、逆境を活かした戸倉の皆さんの挑戦が始まりました。
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豊かな環境で大切に育てられた南三陸戸倉っこかき。東日本大震災では、津波により湾内の養殖設備がすべて失われましたが、そこから、逆境を活かした戸倉の皆さんの挑戦が始まりました。

南三陸町で執り行なわれた祝賀会には、震災以降ASC取得を支援してきたWWFジャパンをはじめ、およそ160名を超える出席者が参加。

天皇杯受賞を祝うとともに、今後のますますの「持続可能な」発展に向けて連携していくことを誓いました。

戸倉の事例はさまざまなことを私たちに教えてくれます。

ASC認証の「自然環境と社会に責任ある養殖」を実践することは、自然環境のためだけではなく、そこに従事する人たちの生活を豊かにすることにつながります。

今回の事例を参考に、責任ある養殖業のさらなる普及に努めていきたいと思います。(海洋水産保全担当 前川)

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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