©Martin Harvey/ WWF

ターゲットは旅行客!中国で進む象牙の取り組み


2017年年末、中国は国内での象牙製品の製造・取引を全面的に禁止しました。

これは、止まないアフリカゾウの密猟を阻止するために断固とした態度を取ることを、世界に示した大きな決断でした。

それでも、すぐに象牙の需要がなくなるわけではありません。そして、需要があれば密売が起きます。

そこで、WWFと国内外の野生生物取引を監視するTRAFFICでは、中国の象牙についての消費者調査を実施。

その結果を元に、中国本土を中心に象牙の需要を削減するキャンペーンを展開してきました。
調査からは、象牙の国内取引が禁止になったことを知った上でも、購入の意思を示す消費者が一定数存在することがわかっています。

「ダイハード・バイヤー」と呼ばれるこうした人たちは、2017年に19%でしたが、2018年には14%に減少。一定の効果も見えてきています。

象牙製品の購入態度の推移(%)(Demand Under the Ban 2019より)

象牙製品の購入態度の推移(%)(Demand Under the Ban 2019より)

しかし、2019年は変化が見られず14%を維持。しかも、旅行先の国外で象牙を購入したことのある人が、2018年の18%から27%に増加していることが明らかになりました。

海外での象牙製品を購入する理由について(%)(Demand Under the Ban 2019より)
海外での象牙製品を購入する理由について(%)(Demand Under the Ban 2019より)

海外での象牙製品を購入する理由について(%)(Demand Under the Ban 2019より)

象牙製品を購入した国/地域の割合。日本での購入経験のある人も存在する(Demand Under the Ban 2019より)

象牙製品を購入した国/地域の割合。日本での購入経験のある人も存在する(Demand Under the Ban 2019より)

こうした違反行為を知らずに、また軽い気持ちで犯してしまうリスクをなくすためにも、身近なところでの注意喚起は重要です。

中国の空港で掲示されたキャンペーン・ポスター。Li Bingbing氏を起用した2018年のポスター。

中国の空港で掲示されたキャンペーン・ポスター。Li Bingbing氏を起用した2018年のポスター。

2019年の春節に掲示されたHuang Xuan氏を起用したポスター。羽田空港でも掲示されました。

2019年の春節に掲示されたHuang Xuan氏を起用したポスター。羽田空港でも掲示されました。

10月1日~7日は、中国のゴールデンウィークと言われる国慶節。
この折の観光客の移動が、象牙の違法取引を増加させることの無いように、今年のキャンペーンでは、香港、タイ、ベトナム、日本に向かう中国人観光客にSNSでメッセージを配信する施策も展開されます。

日本も来年は特に観光客の多くなる年。私たちも、関係省庁、企業と協力し、海外からのお客様に向けた注意喚起をしていきたいと思います。

2019年国慶節に香港で展開される「Travel Ivory Free」を謳ったキャンペーン・ポスター

2019年国慶節に香港で展開される「Travel Ivory Free」を謳ったキャンペーン・ポスター

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自然保護室(野生生物)
北出 智美

修士(生物学、生物多様性マネジメント)
国際的な自然保護に携わることを目指し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で生物学を専攻。遺伝子レベルの進化と多様性に魅せられアルバータ大学でシカの遺伝子の研究を行なった。国際NGOでの就職を目指しオックスフォード大学で生物多様性マネジメントを履修し、帰国後外務省任期付職員として環境条約に携わる部署に勤務した後、2013年にWWFジャパンに入局。WWFでは野生生物取引に特化した活動を行うTRAFFICで活動し、2020年より現職(2018年からTRAFFICジャパンオフィスの代表も務める)。

「野生生物取引」の問題は、SNSで話題のカワイイの野生動物ペットから、犯罪組織と巨額のマネーがからむ密輸の問題まで本当にダイナミックで、活動の切り口も様々。日々、新しいことを学びながら、今、自分たちがやるべきことは何かを考え抜き、行動したいと思っています。

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環境保全団体です。

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