©Martin Harvey / WWF

国会でも議論に 対応が遅れる日本の象牙取引規制


6月26日、通常国会の会期が終了します。
この国会では2度にわたり、与野党の議員から、日本の象牙に関する質問がありました。

いずれも、国内における象牙の取引規制の課題を、政府に問うものです。

アフリカでは今も、象牙を目的としたゾウの密猟が続いています。

ボツワナ、モレミ野生動物保護区。クワイ川(Khwai river)で水を飲むアフリカゾウ。アフリカゾウが1日に飲む水の量は100~300リットル。
©Martin Harvey / WWF

ボツワナ、モレミ野生動物保護区。クワイ川(Khwai river)で水を飲むアフリカゾウ。アフリカゾウが1日に飲む水の量は100~300リットル。

そして、この問題に対し、象牙を取り扱ってきた国々は、国内取引を厳しく規制する姿勢を明らかにしてきました。

2000年以降、最大の象牙消費国となった中国は、2017年12月末に国内でも象牙の製造・販売を禁止。

高価なアンティークの素材として象牙を取引してきたイギリスも、2018年12月にその商業利用を禁じる新法を承認しました。

日本もまた、過去に合法的に輸入した大量の象牙を、在庫として持つ国。これを利用した製造・販売も続いています。

しかし、現在の日本では対策の改善が遅れており、国内市場に違法な象牙が紛れ込んでも、これを厳しく区別することができません。

中国などの消費者に好まれる象牙の装身具。東京の観光エリアで販売されていた(2018年7月)
©TRAFFIC

中国などの消費者に好まれる象牙の装身具。東京の観光エリアで販売されていた(2018年7月)

また、匿名で象牙製品の売り買いが容易な、インターネットを利用した取引についても、消費の変化と速さに対応した、適切な規制が追い付いていないのが現状です。

中国より前に、世界最大の象牙輸入国だったのは日本でした。
たとえ、その頃に輸入していた象牙の取引が、今おきている密猟とは無関係だとしても、管理や規制の徹底は欠かせません。


2019年5月8日、環境省に要望省を提出した。「ワシントン条約」の締約国会議も開催される今年、日本の象牙取引に対する姿勢が問われている。
©WWFジャパン

2019年5月8日、環境省に要望省を提出した。「ワシントン条約」の締約国会議も開催される今年、日本の象牙取引に対する姿勢が問われている。

実際に今、日本から海外に向けた、象牙の密輸が多発。国際的な闇市場にも寄与している可能性があるのです。

この日本の象牙をめぐる政策については、ニューヨーク市長から東京都知事に対し、書簡が送られるなど、国際的にも注目される問題になっています。

引き続き、政策の見直しを政府に要望しながら、働きかけを続けたいと思います。

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自然保護室(野生生物)
北出 智美

修士(生物学、生物多様性マネジメント)
国際的な自然保護に携わることを目指し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で生物学を専攻。遺伝子レベルの進化と多様性に魅せられアルバータ大学でシカの遺伝子の研究を行なった。国際NGOでの就職を目指しオックスフォード大学で生物多様性マネジメントを履修し、帰国後外務省任期付職員として環境条約に携わる部署に勤務した後、2013年にWWFジャパンに入局。WWFでは野生生物取引に特化した活動を行うTRAFFICで活動し、2020年より現職(2018年からTRAFFICジャパンオフィスの代表も務める)。

「野生生物取引」の問題は、SNSで話題のカワイイの野生動物ペットから、犯罪組織と巨額のマネーがからむ密輸の問題まで本当にダイナミックで、活動の切り口も様々。日々、新しいことを学びながら、今、自分たちがやるべきことは何かを考え抜き、行動したいと思っています。

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