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ひゃっ、百万種が絶滅の危機に!?


「地球温暖化」という言葉は、天気予報でも頻繁に聞かれ、今では広く社会に浸透した言葉になっています。

その背景には、温暖化は本当に起きているのか、なぜ起きているのか、この後どうなっていくのかといったことに関する科学的な知見が積み重ねられてきたことがあります。

その中心的役割を担っているのはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)と呼ばれる国連の組織です。
気候変動の専門家が科学的根拠を収集して何年かに一度報告書を発行しています。その報告書は発表の都度大きな注目を浴びます。

では、「生物多様性」はどうでしょうか?
まだ専門的な印象を受ける言葉で、温暖化には及ばないようです。
その理由のひとつに、温暖化ほど科学的知見がそろっていなかったことがあります。

南米のアマゾン
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南米のアマゾン

でも、世界の生物多様性の専門家たちは、同じようにIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)という国連の組織を作って、科学的知見を精力的に集め、報告書にまとめてきました。IPBESには132カ国の政府が参加しています。

5月6日に出された報告書は、世界の陸地の75%が大幅に改変され、森林面積は産業革命前の68%に減り、約100万種の動植物が絶滅の危機にあることを伝えました。

毎年、5月22日は「国際生物多様性の日」です
© Ola Jennersten / WWF-Sweden

毎年、5月22日は「国際生物多様性の日」です

絶滅のペースは過去1千万年の平均より数十倍以上も速くなっています。
この報告書は、日本を含む51カ国の専門家145人が約3年かけてまとめました。

インドサイ(ネパール)
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インドサイ(ネパール)

生物多様性は生物の世界だけのことではありません。
人は自然から食料や薬などを得ていますし、東南アジアなどのマングローブ林は津波の時に防波堤の働きもします。
生物多様性が低下し、こうした自然の恵みが失われると人間の危機につながります。

マングローブ林(ガラパゴス)
© Antonio Busiello / WWF-US

マングローブ林(ガラパゴス)

昆虫は作物(植物)の受粉を担っています
© Ola Jennersten / WWF-Sweden

昆虫は作物(植物)の受粉を担っています

今後、知見が知見にとどまらず、政府の自然保護政策に反映され、保護策が着実に実行されることが何よりも大切です。
(C&M室 大倉)

*IPCC:気候変動に関する政府間パネル
(英語Intergovernmental Panel on Climate Change)
*IPBES:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム
(英語Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)

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C&M室 メディアグループ所属
大倉 寿之

メディアを通じた環境情報の発信を担当しています。ESDなど教育に関わる仕事も手がけています。

90年代の諫早干拓問題やオゾン層破壊の話題はけたたましくアラーム音が鳴り響く「警告の赤」。一方、今の温暖化の進行や自然資源の過剰消費は、いつみても「要注意の黄」がともっている状態なのかもしれません。これに慣れっこになってはいけない、そう思いながら、環境ニュースに日々感度の高いアンテナを張っています。

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