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ブラジル・セラードの種の守りびと、ドナ・エリダ


22年12月に、ブラジルのセラードで行なわれている保全プロジェクトの現場に行ってきました。

アマゾンの南東、ブラジル中央に広がるセラードは「世界で最も生物多様性に富んだサバンナ」との別名の通り、比較的乾燥した森林から草原まで、様々な表情を持つサバンナ地帯です。

セラードには12,000種類もの植物が確認されており、その約3割がここにしかない固有種。動物も含めた世界の全生物のうち、5%がここに生息すると言われている。
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セラードには12,000種類もの植物が確認されており、その約3割がここにしかない固有種。動物も含めた世界の全生物のうち、5%がここに生息すると言われている。

しかし、セラードでは今、大豆農場が急ピッチで拡大しており、日本の5倍ともなるその総面積のうち、なんと半分以上がすでに農地に転換されてしまっています。

この地でWWFブラジルは、これ以上の破壊を食い止める活動とともに、地元の団体や住民の方と協力し、森林を再生するプロジェクトにも取り組んでいます。

丘の部分と河辺にはセラードの自然が残されている。その手前の平坦地の樹木は伐採され、大豆農場が広がる。
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丘の部分と河辺にはセラードの自然が残されている。その手前の平坦地の樹木は伐採され、大豆農場が広がる。

この地域の森を守る住民の一人が、冒頭写真のドナ・エリダさん。(「ドナ」は英語の「ミセス」のような敬称)

祖母の代から受け継いだ植物の知識が豊富で、20年以上、マットグロッソ・ド・スル州のボニート市郊外に暮らしています。

その知識をもとにセラードの植物の種を集め、市場で販売したり、自身の土地に植えたりしています。

約40種類の種を採取している。中央のボウルの中身は、様々な種が混ざった「ムヴカ」。自身の土地にはムヴカを播き、様々な植物が密集した状態で育つ。
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約40種類の種を採取している。中央のボウルの中身は、様々な種が混ざった「ムヴカ」。自身の土地にはムヴカを播き、様々な植物が密集した状態で育つ。

ドナ・エリダの土地は近隣の農場より土壌が肥沃で、植物の育成が早いとのこと。

ここで年に一度、雨季のはじめに苗木も植えています。

その植林は地域を巻き込んだイベントとなっており、毎年多くの参加者が手伝いに来るそうです。

ジャパンからは参加できませんでしたが、今年のイベントにはWWFブラジルのメンバーも協力しました。

植林イベントに参加した WWFブラジルのメンバー。バルー(セラード原産のマメ科の樹木)の苗木を植えた。
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植林イベントに参加した WWFブラジルのメンバー。バルー(セラード原産のマメ科の樹木)の苗木を植えた。

夕方になると、鮮やかな黄緑色のコンゴウインコの群れが、家の前の木々に休みにきていた姿が美しく、印象的でした。

最近ではドナ・エリダはボニート市内の小学校で講演をしたり、ラジオに出演したりと、地域で活動について発信する機会が増えているそうです。

このような一人一人の地道な活動が、森林再生への大きな流れを巻き起こすことを目指し、WWFジャパンはこの活動をこれからも支援していきます。

(自然保護室 中溝)

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自然保護室(森林)
中溝 葵

学士(国際関係学・筑波大)
新卒で入社した総合商社では鉄鋼業界とエネルギー業界の間に従事。企業が収益と環境保全の両方を追求する、サステナブルなビジネスという概念に強く共感し、事業活動の脱炭素化や持続可能性をより広く浸透させる一助となりたい思いから、2021年9月にWWFジャパンに入局。

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