ブラジル・セラードの種の守りびと、ドナ・エリダ
2023/01/27
22年12月に、ブラジルのセラードで行なわれている保全プロジェクトの現場に行ってきました。
アマゾンの南東、ブラジル中央に広がるセラードは「世界で最も生物多様性に富んだサバンナ」との別名の通り、比較的乾燥した森林から草原まで、様々な表情を持つサバンナ地帯です。
しかし、セラードでは今、大豆農場が急ピッチで拡大しており、日本の5倍ともなるその総面積のうち、なんと半分以上がすでに農地に転換されてしまっています。
この地でWWFブラジルは、これ以上の破壊を食い止める活動とともに、地元の団体や住民の方と協力し、森林を再生するプロジェクトにも取り組んでいます。
この地域の森を守る住民の一人が、冒頭写真のドナ・エリダさん。(「ドナ」は英語の「ミセス」のような敬称)
祖母の代から受け継いだ植物の知識が豊富で、20年以上、マットグロッソ・ド・スル州のボニート市郊外に暮らしています。
その知識をもとにセラードの植物の種を集め、市場で販売したり、自身の土地に植えたりしています。
ドナ・エリダの土地は近隣の農場より土壌が肥沃で、植物の育成が早いとのこと。
ここで年に一度、雨季のはじめに苗木も植えています。
その植林は地域を巻き込んだイベントとなっており、毎年多くの参加者が手伝いに来るそうです。
ジャパンからは参加できませんでしたが、今年のイベントにはWWFブラジルのメンバーも協力しました。
夕方になると、鮮やかな黄緑色のコンゴウインコの群れが、家の前の木々に休みにきていた姿が美しく、印象的でした。
最近ではドナ・エリダはボニート市内の小学校で講演をしたり、ラジオに出演したりと、地域で活動について発信する機会が増えているそうです。
このような一人一人の地道な活動が、森林再生への大きな流れを巻き起こすことを目指し、WWFジャパンはこの活動をこれからも支援していきます。
(自然保護室 中溝)