持続可能な旬の「うな重」を食べてみたい


日本人の大好物のウナギ。
ニホンウナギが2014年に絶滅危惧種に指定されてはや5年。未だに資源回復の兆しは見えていません。

ところでウナギが減少してしまった原因、みなさまご存知でしょうか。
はじめに思い浮かぶのは「獲りすぎ・食べすぎ」だと思いますが、「生息環境の悪化」も主な原因の一つとしてあげられます。

ニホンウナギはマリアナ海溝で孵化後、海流に乗って日本にやってきます。生息する環境は、河川だけでなく、それに続く水路、池、沼、田んぼなど多種多様。

しかし、ダムや河口堰などの建設により、こうした環境の移動が困難になったことに加え、河川や田んぼの水路のコンクリート化によって、獲物となる生物が減少したことが、ウナギの減少につながっていると考えられているのです。

逆に考えれば、ウナギのすみかであり、採食場でもある田んぼや水路の自然や生きものを保全することは、ウナギ資源の保全と、その持続可能な利用にもつながる、ということ。

つまり、「生き物に優しい田んぼ」を維持することは、「うな重」のウナギとお米、その両方にかかわる取り組みでもあるのです。

ウナギはとかく夏場の「土用の丑の日」によく食される魚ですが、実はその旬は、水温の下がる10月以降。
お米の収穫も終わったこの時期のウナギは、冬眠に備えて脂がのっているので美味とされます。

資源はもちろん、生物多様性にも配慮した田んぼの恵みである「持続可能」な新米とウナギで、旬の「うな重」が食べられる日を目指し、水田の貴重な自然と、水産資源の保全を実現する活動を、私たちは続けていきます。(植松周平)

私の田舎の田んぼ。幼少の頃は、水路でウナギを獲ることができましたが、近年は全く見かけません。

【寄付のお願い】失われる命の色 田んぼの魚たちと自然を守るために、ぜひご支援ください!

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自然保護室(海洋水産 IUU漁業対策マネージャー、水産資源管理マネージャー)
植松 周平

農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科において水域保全学に関する博士号を取得。その後、経営コンサルティング会社を経て、国際水産資源研究所(現 水産研究・教育機構)に入所。太平洋クロマグロの資源研究を行う。2013年よりWWFジャパンで勤務し、マグロ、カツオ、サンマといった国際水産資源の保全やIUU漁業対策に関わる業務に加え、事業戦略立案や各種業務改善等の社内コンサルタント業務にも従事。2021年には水産庁水産流通適正化法検討委員を務めた。

子供の頃から、田んぼや川、海で遊ぶことが大好きでした。高校生の時、幼少時の遊び場の環境破壊を目の当たりにし、「なんとかせねば」と思い環境保全の道を目指すことに。環境保全とは、生き物だけでなく、人々の生活も守ること。それは、とても難しいことだけど必要なことです。海洋保全研究者だけでなく、経営コンサルタントの経験も活かし、子供たちの未来のために、皆様と一緒に頑張っていきたいです。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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