お見事!トラの縞模様を見分けるソフトウェア
2016/03/16
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
自然保護室の川江です。
昨年お伝えした、インドでトラの個体数が大幅に増加したというニュース。ご記憶でしょうか。
この調査報告書の中で、前から疑問だったトラの調査方法について、面白い記述を発見しました。
トラは一頭ずつ縞模様が異なるため、これを自動カメラで撮影し、識別しますが、同じ個体が何度も写ることがよくあるため、それを同定する作業が必要になります。
しかし、仕掛けたカメラが約1万カ所!に及んだというインドの調査では、それこそ数十万枚の写真が撮られたはず。
これをどうやって分析し、数を割り出したのだろう?
そんな疑問を持ちながら、報告書を読み進めていると、見慣れない単語を発見!
その名も「ExtractCompare(エクストラクト・コンペア:抽出比較)」。
まさに「トラの縞模様から個体を特定するため、特別に開発されたプログラム」でした。
その後、私は実際にこのソフトウェアの威力を見る機会に恵まれました。
場所は極東ロシアの「ヒョウの森国立公園」。
ここでのアムールヒョウとトラの個体数調査について分析方法を聞くと、スタッフが「ソフトウェアを使っている」と言います。
「もしかしてエクストラクト・コンペア!?」
「そうよ、見てみる?」
やり方はまず、ある個体の縞模様のサンプル写真をプログラムに記憶させます。
それに数十枚の写真を比較させると、自動的に紋様を識別し、同じ個体の写真だけを抽出してくれる、という仕組み。
野外で写したトラの縞は鮮明とは限らず、角度や寄りもバラバラなため、人の手による多少の補正は必要ですが、紋様を見事に識別する様子には、思わず「おー!」と声を上げて、感動してしまいました。
これを他の国の調査でも使えないかなと思っていたところ、数週間後にその機会がやってきました。
インドネシア・スマトラ島のブキ・バリサン・セラタン国立公園に行った際に、現地のスタッフにこのソフトの事を話し、試験導入してもらったのです。
スマトラでも威力を発揮してくれることを期待しつつ、今後もこうした新しい技術や知見を海外の仲間たちと共有し、保護活動に活かせていければと思います。
関連記事
関連サイト
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?