「トラサミット」閉幕「2022年までにトラを倍にする」目標に合意
2010/11/25
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
2010年11月24日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催されていた世界トラ保護会議「トラサミット」が閉幕しました。トラを絶滅から救うため、各国のリーダーが集結し、国境を越えた話し合いが4日間にわたり、行なわれました。そして、現在およそ3,200頭といわれる野生のトラ個体数を、「2022年までに倍にする」目標が、正式に合意されました。
交わされた約束「首脳宣言」と「トラ回復プログラム」
11月23日、自然保護の歴史に残る今回の「トラサミット」で、現在およそ3200頭といわれる野生のトラ個体数を、次の寅年である2022年までに倍増させる目標が、正式に合意されました。
この目標を「首脳宣言」として発表したのは、会議の主催者であるロシアのウラジミール・プーチン首相、また、中国の温家宝主席らトラの生息国の政府代表、さらに、アメリカ、ドイツなどトラの保護活動を支援している国々、世界銀行などの国際機関の代表者です。
会議ではさらに、この目標を達成するために必要な支援として、1億2700万ドル(USD)が、サミットに参加した国々や、WWFを含めた関係機関から拠出されることが決まりました。
これによって、「首脳宣言」が示すところの目標を実現するための手段である、「トラ回復プログラム」についても、実現の目処が付くことになりました。
「トラを未来へ!」若者たちからのメッセージ
今回の「トラサミット」の開催にあたっては、アムールトラの生息地であるロシア極東の街、ウラジオストックでも、トラ保護のためのイベントが平行して行なわれました。
生息国の若者たちが参加し、トラ保護現場の見学や保全活動や問題点などを学ぶワークショップ「ユース・サミット」です。
首脳宣言が発表された23日には、ウラジオストックから、サンクトペテルブルクのサミット本会場の各国のリーダーに向け、若者たちが中継で、地球の自然遺産を象徴する動物を絶滅させないこと、そして次の世代へ受け継いでほしい、というメッセージを届けました。
こうした思いも確かに届く形で閉幕することになった、今回の「トラサミット」によって、世界はトラ保護への新たな扉を開いたと言えます。
しかし、森林破壊や、密猟、違法取引によって急減する野生のトラを絶滅から守るためには、生息地の自然を守り、違法取引の取締りをさらに強化する、現場での活動の整備が、緊急に必要とされています。
また、多くが開発の途上にあるトラの生息国が、そのために最大限の努力を払えるように、国際社会による協力も欠かせません。
次の寅年に向けて
寅年を契機として、2010年に特にトラの保護に力を入れてきたWWFにとっても、今回の「トラサミット」の成功は、確かな活動の成果となりました。
WWFインターナショナルのジェームス・リープ事務局長は、「環境を保全するための取り組みが、政治的意志の欠如によって残念な結果をもたらすことが多い中、今回のトラサミットでは、高いレベルでの政治的な合意を見ることができました」と、評価するコメントを発表しました。
実際、関係各国のリーダーたちが、トラ保護の意志を示し、実現のための具体的計画を作り上げた点は、今後のトラ保護活動に、大きな進展と可能性を期待させるものです。
WWFも、「トラサミット」の成果が、現場での活動に活かされ、「2020年までにトラを倍に!」する目標が達成されるよう、今後も活動を続けてゆきます。