【WWF声明】第1回政府間交渉委員会(INC-1)開催に際し、日本政府にプラスチック国際条約への「世界共通ルール」導入を要請する


世界の市民の7割がプラスチック汚染を根絶するための国際ルール導入を支持

  • 今後2年間の国際条約の交渉プロセスにおいて、条約に、これまで成功してこなかった「自主的な取組」ではなく、明確な「世界共通ルール」を導入できるのかどうかが、条約を成功させるためのポイントとなる
  • 34か国で2万人を対象に実施した社会調査では70%が、世界で初となるプラスチックの国際条約において、各国政府が独自に行動するかどうかを決められる自主的な国際合意ではなく、「国際ルール」を導入することを支持。ただし日本での国際ルール支持は48%と調査国中で最も低く、国際条約に関する国内での情報提供の拡充が求められる
  • 第1回政府間交渉委員会(INC-1)開催に際し、WWFは日本政府に対し、1. 国際条約において、プラスチックを自然界に流出させずにサーキュラー・エコノミーを実現するための唯一の確実な解決策である「世界共通ルール」の導入に貢献すること、2. 国際条約制定に向けた背景や交渉状況を、社会にしっかりと伝えていくこと、を要請する

2022年11月28日より、プラスチック汚染根絶に向けた法的拘束力のある国際条約制定に向けて第1回政府間交渉委員会(INC-1)が開催される。WWFはプラスチック・フリー財団と共同で、プラスチックの消費や汚染に関連して、プラスチックの国際条約がどうあるべきか、具体的にどのようなルールが重要と考えるのかについて、日本を含む34か国の約2万人を対象に、調査会社Ipsosによるオンラインでの国際的な社会調査を実施した。それによると、プラスチック汚染を根絶するために、国際条約において「国際ルール」の導入を支持したのは7割に達した。世界で初となるプラスチック汚染に関する国際条約の制定において、生産・設計から廃棄までのライフサイクル全般に渡り、国別の自主的な基準を寄せ集めるのではなく、世界共通のルールと規制を導入することを目指す国が増えていることを、市民社会も後押ししていることが示された。ただし、日本での支持は34か国中最低の48%となっている。

拘束力の弱い、国別の自主的取組を国際条約の主軸とするよう主張する国も依然としてあるが、この調査によると、そのような取組を支持する人の割合は14%と少ない。さらに世界の市民の75%以上が、国際条約に、包括的な義務的措置を導入することを望んでいる。「とても重要」または「重要」と答えているのは、「不必要な使い捨てプラスチックを禁止する」ことでは75%、「生産者やリテーラーに対し、廃棄物削減・リユース・リサイクルに責任を課す」ことでは78%、「全てのプラスチック製品にリサイクル素材を含める」ことでは76%、「リユース・リサイクル・適正処理のために製品に分別に関する表示を求める」ことでは77%に達している。

条約制定に向けた交渉のために、2022年11月28日からウルグアイで第1回の政府間交渉委員会(INC-1)が開催され、2024年までにINCでの交渉を終えることを目指す。今後2年間の交渉期間中だけでも、年間に海洋に流入するのプラスチック量は15%増大する。現在、2,000の海洋種が自然環境中で海洋汚染に遭遇し、およそ90%が悪影響を受けている。交渉を通じて、野心的な国際条約を制定できなければ、危機的なプラスチック汚染に対して、これまで10年間以上効果が不十分であった各国政府の対応が、これからも続くことになる。

国連での政策決定を後押しするため、WWFは2022年11月に、世界のプラスチック経済に構造的な転換をもたらす主要なメカニズムを特定したレポートを発行した。同レポートでは、自然環境、人類の健康、経済へ更なるダメージを与えるプラスチックごみの蔓延を抑えるために、現在の自主的な国別対策を続けるのではなく、「法的拘束力のある国際ルール」を導入することの重要性が示されている。

国際条約においては、問題のある製品や素材の禁止、サーキュラー・エコノミーを促進するための環境配慮設計基準の設置や情報提供表示の義務付け、途上国での廃棄物の回収や管理改善のサポートを含む、確固とした方策を世界的に導入することが必要である。そして、地球規模でプラスチック汚染根絶を実現するために、これらの方策は、最も影響が大きい「使い捨てプラスチック」、「流出漁具」、「マイクロプラスチック」を根本的に減らすように設計されることが求められる。

WWFインターナショナルのグローバル・プラスチック政策リーダーのEirik Lindebjergは以下のように述べる。「プラスチック汚染の危機に対し、各国政府や企業が、複雑で時には矛盾した対応を続けることに対し、世界の市民の間で混乱と不満が高まっている。私たちは調査を通じて、世界の市民が望んでいることを特定し、政府が交渉においてとることのできる最も効果的なステップを特定しようとした。そして、市民社会が、プラスチックの生産から使用後までのライフサイクル全般に渡る国際ルールを必要としていることが明らかになった」

WWFジャパン、プラスチック政策マネージャーの三沢行弘は、こう述べる。「これからの2年間の交渉プロセスにおいて、条約が成功するかどうかが決まる。各国政府の決断に、私たちが直面する、プラスチック汚染による、自然環境、生態系、人間を含む生物への被害を食い止めることができるかどうかが委ねられている。そして、各国政府に対し、プラスチック汚染を効果的に根絶するために、世界共通のルール導入を基盤とした国際条約文書を、2024年末までに制定することを求める。なお、日本では市民の国際条約に対する認識が相対的に低いことが明らかになった。日本政府に対しては、世界共通ルールを主軸とした国際条約の制定に貢献すること、そして、国民に対して国際条約についてのコミュニケーションをしっかりと行っていくことを要請する」

以上

参考資料:プラスチック汚染の国際条約についての34か国意識調査からの抜粋

以下の図は、プラスチック汚染の国際条約において、具体的な国際ルールの導入について、「とても重要である」または「重要である」と回答した人の比率を示している。(調査レポートへのリンクはこちら

国際ルールとして想定される各項目について、それぞれどの程度重要であると考えるか?

  不必要な使い捨てプラスチックを禁止する
(とても重要、重要)(%)

 
容易にリサイクルができないプラスチックを禁止する(とても重要、重要)(%)

 
生産者、リテーラーに対し、プラスチック容器包装の削減、リユース、リサイクルに対して責任を課す
(とても重要、重要)(%)
 
全てのプラスチック製品にリサイクル素材を含めることを求める(とても重要、重要)(%)
 
分別、リユース、リサイクルについての情報表示を求める
(とても重要、重要)(%)
 
世界平均 75 77 78 76 77
アルゼンチン 81 85 83 83 83
オーストラリア 79 78 81 78 80
ベルギー 73 74 76 78 74
ブラジル 70 76 76 76 76
カナダ 69 72 74 72 74
チリ 82 84 83 84 84
中国 81 82 85 79 84
コロンビア 85 88 85 83 88
フランス 77 77 76 74 74
ドイツ 76 75 74 72 71
イギリス 79 78 81 78 81
ハンガリー 74 75 79 78 80
インド 78 79 78 80 79
インドネシア 80 83 85 81 84
アイルランド 76 78 79 76 77
イスラエル 60 69 76 69 75
イタリア 75 77 76 75 78
日本 54 53 56 52 63
マレーシア 65 70 72 71 71
メキシコ 87 85 86 87 88
オランダ 68 70 76 73 68
ペルー 82 87 85 85 84
ポーランド 76 75 69 73 75
ルーマニア 78 79 82 80 82
サウジアラビア 67 70 70 68 68
シンガポール 69 74 77 76 79
南アフリカ 79 80 86 86 84
韓国 82 83 76 80 80
スペイン 78 79 78 77 77
スウェーデン 63 69 72 65 67
タイ 79 75 80 78 81
トルコ 80 84 81 81 84
UAE 72 74 76 72 74
アメリカ 63 71 73 72 74


添付資料: 「プラスチック汚染を根絶するための効果的な国際条約制定に向けて」(INC-1ガイダンス)

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