パリ協定へ日本の国別目標強化なしで再提出に WWF強い抗議の意を表明


強化を見据えた見直しプロセスの早期開始とスケジュール提示を!

本日、日本政府・地球温暖化対策推進本部が、パリ協定の下での国別目標(NDC)を、現行目標から変更せずに提出することを決定したことについて、WWFジャパンは深く失望し、強い抗議の意を表明する。

2020年は、パリ協定の下で各国が国別目標を強化の上、再提出することが期待されている重要な年である。背景には、各国が国別目標の中で掲げている温室効果ガス排出量削減目標を積み上げても、パリ協定が掲げる1.5℃はもとより2℃未満に世界の平均気温上昇を抑えることすら難しい状況がある。このことは、2015年にパリ協定が採択された時点ですでに分かっていたため、パリ協定を採択すると同時に、COP21はその決定で、2020年までに各国に国別目標の再提出を要請している。日本を含めてほぼ全ての国々が改善を求められている。

現在、日本が掲げる目標は、2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標であり、国際的な研究機関のグループからは、パリ協定の長期目標達成に対して「著しく不十分(highly insufficient)」であり、世界の平均気温を3~4度上げてしまうと評価されていた(※1)。

今回の提出に当たっては、将来の目標および対策強化の可能性は僅かではあるが残されている。まず、「平成28年5月に閣議決定された『地球温暖化対策計画』の見直し」があり、その後、「エネルギーミックスと整合的に、温室効果ガス全体に関する対策・施策を積み上げ、更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指す」とある。

しかし、その時期はあいまいであり、さらにこの「エネルギー政策主導」の形での削減目標強化は機能しない可能性が高い。これまでと同様、「エネルギーのベストミックス」の名の下に、既得権益を持つものにとって「ベスト」である石炭・原発温存を志向するエネルギー政策が先行し、脱炭素化に不可欠な再生可能エネルギー中心の社会への移行が妨げられる可能性が高いからだ。

現状、目標を再提出もしくは更新した国は世界で4か国(マーシャル諸島、スリナム、ノルウェー、モルドヴァ)であり、加えて、スイスが今後の目標強化へ向けたプロセスに関しての通知を行っている。数少ない先行提出組の中で、世界第5位の排出大国である日本が、「目標を強化しなくてもよい」というメッセージを世界に先駆けて出すということは、今、国際社会で求められる脱炭素に向けてのリーダーシップとは真逆だ。そればかりか、他国が目標を強化する意欲をそぐことになりかねない。

日本政府は、改めて、気候危機に対応するという観点から、エネルギー政策も含めた一体的な見直しを行う公開の場を設け、市民社会も含めたステークホルダーの意見を聞きながら、削減目標強化の議論を早急に開始するべきである。

※1 Climate Action Tracker

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C&M室プレス担当 Email: press@wwf.or.jp

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