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【開催報告】自然を、動物をニオイで学ぶ!くんくんplanet in ズーラシア

この記事のポイント
キリン、ライオン、ゾウ、オランウータン… 野生動物たちの名前、生態、どこに生息しているか?は、ちょっと詳しい方ならばご存知かもしれません。でも、その「におい」はどうでしょう? 特に、それぞれの動物がする糞(フン)には、さまざまな特徴と、情報が隠されています。この「におい」に注目し、動物とその生息地の自然について知り、考えてもらうイベント「くんくんPlanet for Kids~うん香道で旅する地球~」を、2018年8月10日、よこはま動物園ズーラシアで開催しました。

「におい」から知る動物たちのこと

「うん…? 違う、これじゃない」「あ!同じだ!!」そんな子どものたちの声があちこちから聞こえてきます。
それぞれが手にしているのは、果物や花の「におい」が入った蓋つきの紙コップ。自分のコップと、ほかの子のコップのにおいをかぎ、同じにおいのメンバーでグループを作ります。
そんなにぎやかなやり取りで出来上がったグループで、フンの「におい」から動物を探求するイベント「くんくんPlanet for Kids~うん香道で旅する地球~」の一日がスタートしました。
これは目には見えない「におい」の特徴を感じながら、動物の生態や、今さらされている絶滅の危機について子どもたちに知ってもらう、WWFジャパンのイベントです。

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五感の多くを使った環境教育プログラムとして開発され、これまでによこはま動物園ズーラシアや天王寺動物園との共催、協力のもと実施してきました。実際に、においをかぎ、その動物の姿を見て、生態やその危機について話を聞くことのできる、動物園というフィールドを活かした取り組みです。
2018年8月10日、よこはま動物園ズーラシアで実施された、第3回目の「くんくんPlanet」にご参加くださったのは、動物が大好き!という4年生から6年生の20人の小学生の皆さん。
そして今回、この皆さんに、においの元になるフンを提供してくれたのは、オランウータン、アジアゾウ、ライオン、キリン、クロサイの5種の絶滅危機種の動物たちでした。

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ウンコはくさい? くさくない?

イベントではまず、WWFジャパン普及教育担当の松浦麻子から、5種の動物がどのような場所、どのような環境に生息しているのかと、その危機について説明。絶滅の危機にも、密猟や森林破壊など、さまざまな原因があることをお話ししました。
こうした動物のフンには、色や形、においなど、それぞれ違った特徴があります。つまり、フンのにおいの元になる食べた食物はもちろん、その生息場所の環境まで、自然の秘密が詰まっている、ということです。

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続いて、子どもたちは実際のにおいに挑戦。
なんの動物かはわからない、5つのフンのにおいの入った、No.1~5の紙コップを、グループごとに回しながら順にかいでゆきました。
においの「かぎかた」を教えてくれたのは、美術作家の井上尚子さん。昔から日本人が「香道」という方法でにおいを楽しんできたことや、におい、に間違いというものはなく、それぞれが感じたことが「正解」であることなどを、お話しいただきました。
実際に、フンのにおいのはいった紙コップに顔を近づけた子どもたちの反応は…?

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意外に「くさくない」「はちみつみたいなにおい?」「草のにおいがする」など、紙コップによってさまざま。ですが中には、大半の子が思わず顔をしかめて「くさい!」と声をあげる、危険なにおいのするNo.4のような紙コップもありました。
こうしたやり取りの中で井上さんが伝えてくれたのは、そうしたにおいの印象を、自分で言葉にすることの大切さです。表現の難しいにおいというものを、別の感覚や言葉に置き換えて受け止めることで、その違いや、特徴がより明らかに見えてくるのです。

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においに表れる? 食物とフンの関係

それぞれの紙コップのにおいを記した「うんことば」カードを書き上げると、次は5種の動物を実際に見に外へ。
飼育エリアの前で、その動物の「食物」と「フン」二つのにおいをあらためて体験し、思ったことをノートに記録していきました。
食物がなにか?は、そのフンのにおいにも関係してきます。草を主食とするゾウやキリン、サイは、食べる食物も草のにおいなら、出すフンのにおいも草のようなにおい。また、オランウータンのように果物をはじめ、さまざまな食物を食べている動物は、ややヒトに近い感じのにおいがあるフンをします。きわめつけは肉食のライオン。このフンは強烈に臭く、言わずと「No.4」の紙コップの正体は知れるところとなりました。

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野生の状態でもそれぞれ異なっている、すむ場所や食物の違いを明らかに示すものの一つが、実はこのフンのにおいなのです。
また、それぞれの飼育設備の前では、動物園の飼育員の方から普段はなかなか聞くことのできない動物たちの習性や、飼育されている個体が持つ個性や、独特な行動についてお話を聞くことができました。

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みんなが好きな「におい」を通じて

その後、実際にかいできた動物たちのフンは、それぞれどのNo.の紙コップのにおいだったのか? 答え合わせを実施。
この折、井上さんからは、人間が実は「くさいモノが大好き、つい関心を持ってしまう(!)」という特性がある、という驚きのお話も。
実際、この頃になると、もう子どもたちはにおいに夢中。
きたない、とか、くさい、といった単純な反応や表現をしなくなり、わいわいと楽しみながら笑いの絶えない時間となりました。

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そして、今度はズーラシアのスタッフの方から、動物園では動物たちのフンが健康管理の上で重要な存在であり、体調が悪いと、いつもと違ったフンをすることがある例などをお話しいただいたほか、実際にフンの標本を回して触りながら、どれがどの動物のフンなのかを確認しました。

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その後、普段は入れないゾウ舎などの飼育施設とエサを準備している飼料庫を見学。
実際に与えているエサの食物に触れながら、野生の状態とは異なる飼育環境下で、特に注意していることなどについてお聞きすることができました。

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最後に、グループごとに感想をまとめ、それを発表。
それぞれのコメントから見えてきたことは、においが本当にいろいろであること、人によってその感じ方が異なること、またそれを表現する言葉や、違いの背景にも違いがあり、「面白さ」があることなどです。

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動物の研究や飼育、また環境問題は、いずれも非常に専門性の高い、大人にとっても難しい点を多く抱えた課題です。それでもそこに、特に子どもたちが最初の関心を持てるかどうかは、この面白さを一人ひとりが感じられるかどうかにかかっているといえるでしょう。
そのきっかけが見たもの、聞いたもの、触れたものだけでなく、かいだ「におい」であってもよいわけです。
そのことに接した今回の参加者の皆さんからは、こんなコメントが寄せられました。その一部をご紹介します。

・うんこのにおいはくさいけど、楽しかった
・思ったより動物のうんこがくさくなかった
・うんちが役に立っているのは初めて知った
・(動物が絶滅の危機にさらされている理由について)こういうことを考えられてよかったなと思った

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WWFジャパンでは、自然や生きもの、地球環境への確かな理解に向けた一つのステップとして、この子どもたちの五感を通した取り組みが、未来につながっていくことを願い、今後も継続してゆく予定です。

また、今回イベントを共催させていただき、子どもたちが夢中になるような面白いお話を聞かせてくださったズーラシアのスタッフの皆さま、そしてご参加くださった小学生の皆さま、本当にありがとうございました。

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イベント概要「くんくんPlanet for Kids~うん香道で旅する地球~」

日時 2018年8月10日(金)
場所 よこはま動物園ズーラシア(多目的ルームおよび園内飼育施設)
来場者 20名
主催 WWFジャパン
共催 よこはま動物園ズーラシア
企画協力 井上尚子(美術作家)

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