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ゴーストギア発生予防・漁具の未来、地域プロジェクト 気仙沼市でスタート

この記事のポイント
WWFジャパンではプラスチック製の漁具が海に流出して引き起こす「ゴーストギア」問題予防策の一つとして、水産都市の行政と協働。漁業者の使用済み漁網の回収・リサイクル事業を通じ、漁業者による漁具の適正な管理を促すプロジェクトを進めています。2022年5月、宮城県気仙沼市との協働がスタートし、それを記念したイベントが開催されました。
目次

気仙沼市とゴーストギアの発生を未然に防ぐ取り組みを開始

海洋プラスチックごみは、最も急速に悪化している国際的な環境問題の一つです。

海洋に流出しているプラスチックは、推定で年間1,100万トンと言われ、なかでもウミガメや海鳥といった野生生物に深刻な被害を与えているのが「ゴーストギア」、つまり海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具です。

そのほとんどは、プラスチックでできており、年間50万~115万トンが海洋に流出していると推定されています。

この「ゴーストギア」問題の解決策の一つとして、WWFジャパンではいくつかの水産都市の自治体と、漁協など地域の協力を得ながら「ゴーストギア」の発生予防のプロジェクトについて仕組み作りを進めてきました。

今回、宮城県気仙沼市とこのプロジェクトを開始することが決まり、2022年5月30日にプロジェクトのキックオフ発表会を行ないました。

気仙沼市への働きかけ

東日本大震災で壊滅的被害を受けた気仙沼市は、「海と生きる」を掲げ、地域の復興とともに、持続可能な未来に向けて取り組んでいます。

2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」を制定し、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」で具体的な取り組みを取りまとめ、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっています。

このように海洋プラスチックごみ問題に先進的に取り組む気仙沼市に対し、WWFジャパンより漁網回収・リサイクルの協働について気仙沼市に提案を行ないました。

漁業者へのヒアリング

まずプロジェクトの開始にあたり、気仙沼市の水産課、生活環境課と共に、サケ刺し網漁などを対象に、漁協を通じて漁業者の方から、刺し網の構造や、どこで購入し、どのように操業され、どんな時破損するのか、その場合の修理方法は?保管はどうされているのか。そしてどのくらいの期間使用したら廃棄されるのかなどをお聞きしました。

漁業者にとって、漁網は最も重要な仕事道具の一つです。決して安いものではなく、それぞれに網に工夫をしており、気仙沼の漁師が自分の漁網を大切な道具として取り扱っていることが伝わってきました。

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しかし、どんなに大切に取り扱っていても、適正な管理をしていても、荒天や岩礁への引っ掛け、操業時のミスなどにより、海への流出は起きてしまいます。

一方で、一旦役割が終了すれば、今まで大切に扱っていた網も「ごみ」となります。

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こうした漁具は、一般ごみではなく、産業廃棄物として処理することが義務付けられています。しかし、産廃として処理するとなると費用も掛かり、特に中小の事業者が多い漁業者にとっては負担となります。

気仙沼市との連携

漁業者、漁協そして自治体と漁具の管理、プロジェクトでの役割などについて話をした結果、役割を終えた漁網を無償で回収~リサイクルするという事業を入り口に、漁業者による漁具の管理をより促していく取り組みとして、気仙沼市での「ゴーストギア発生予防・漁具の未来、地域プロジェクト」をスタートさせることになりました。

このキックオフとして、2022年5月30日、気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザで、気仙沼市との協働による本プロジェクト発足についての発表会を開催しました。

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回収漁網やリサイクルペレットサンプル等の展示コーナー

また、地域の方々にも、漁業者がどのようにこの問題に取り組むかを知っていただくために、プロジェクト概要をお伝えするパネル展を実施しました。

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プロジェクト紹介パネル展

気仙沼市の想い

気仙沼市の菅原茂市長からは当プロジェクトに対し、以下のようなお話をいただいております。

「気仙沼市は、遠洋・沖合漁業の本拠地として全国屈指の水揚高を誇ると共に、沿岸域では養殖漁業や定置網漁業、小型漁船漁業が営まれており、水産業を基幹産業として発展してきた日本でも有数の水産都市。多くの漁業ではプラスチック材料を使用しており、漁業者はその有用性を感じてきました。

その一方でプラスチックごみは私たちの生活の糧である魚に影響を与えているという事実もわかってきており、漁業を営む過程で発生するプラスチックごみ問題に、従来の意識を改革し、更なるアクションを起こす必要があります。

WWFジャパンから漁具の資源循環を考えたゴーストギア対策についての提案があり、漁業者の皆さんと気仙沼市も一緒になって使用済み漁網を回収してリサイクルをする事業に取り組もうということになりました。

海に責任をもって「海と生きる」民として、海洋プラスチックごみ問題に根気よく取り組むことが大切と考えています。

この流れを気仙沼市だけのものではなく、日本中そして世界中に広げていき、海をきれいにしていきたい!そんな思いで気仙沼市は取り組みたいと思います」

©気仙沼市

菅原茂気仙沼市長

プロジェクトに参加する自治体を募集中

WWFジャパンでは今後も、「ゴーストギア」問題について関心をお持ちの自治体にご参加をいただき、「ゴーストギア発生予防・漁具の未来、地域プロジェクト」を拡大展開していく方針です。

このプロジェクトの狙いは、あくまでゴーストギアの発生予防。

そのためには、漁業者の方々の漁具の日常の手入れ、修理、保管や密集した操業の回避、漁具のマーキングや位置情報の共有など漁具管理を進めることが重要です。

WWFジャパンは、この取り組みを通じ、使用済みの漁具の回収~リサイクル事業を入り口に、漁業者の負担を軽減しつつ、漁具管理意識を持っていただき、ゴーストギアの発生抑制につなげていくと共に、プラスチック製漁具の資源循環も見据え、自治体だけでなく漁具の原材料メーカー、漁網メーカー、リサイクル製品製造を行なっていただける協賛社など、さまざまなステークホルダーの方々のご協力を得て、プロジェクトを進めていきたいと考えております。

ご質問やお問合せは、以下メールアドレスまでご連絡ください。
fish@wwf.or.jp


日時:2022年5月30日(月)
ゴーストギア発生予防・漁具の未来、地域プロジェクト・キックオフ発表会
場所:気仙沼 まち・ひと・しごと交流プラザ2階 軽運動場
共催:WWFジャパン/気仙沼市

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