コアラの絶滅危機がより深刻に!
2022/02/18
2022年2月12日、オーストラリア政府は、自国の国内版レッドリストで、コアラをこれまでの「危急種(VU)」から「絶滅危惧種(EN)」にランクアップすることを決定しました。
これは、IUCNの世界の「レッドリスト」とは異なる、オーストラリアの環境・生物多様性保護法(EPBC法)で選定したもので、オーストラリア国内の野生生物の危機を、より詳細に反映したものです。
今回は、絶滅危惧種として、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、首都特別地域の3地域に生息するコアラが選定されました。
オーストラリアの代表的な動物で、大切に守られているイメージが強いコアラが、なぜ!?と驚く方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際には、生息地が失われていることなどが原因でコアラは減少しています。
またそれに伴い、ストレスで病気にかかりやすくなったり、交通事故や犬やキツネに襲われるケースが多発しています。
さらに近年深刻なのは、気候変動(地球温暖化)による干ばつと熱波。
特に2019年末に発生した大規模な森林火災は、コアラの重要な生息域に大打撃を与え、減少速度を加速させました。
WWFでも、2001年から20年の間で、クイーンズランド州のコアラは半分に、ニューサウスウェールズ州では最大62%減少したと推計しています。
2020年3月、WWFは国際動物福祉基金(IFAW)やヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)と共同で、連邦政府にコアラを国内版レッドリストの「絶滅危惧種」に引き上げ、保護の強化を訴えてきました。
今回の決定は、政府が耳を傾け、保護の重要性が認識されたという意味では大きな一歩です。
コアラの急速な減少を食い止めていくために最も大切なのは、政府の資金的支援の配分比が示す通り、生息地である森林の保全です。
こうした取り組みを通じ、WWFは2050年までにコアラの数を2倍にすることを目標としています。
目指すのは単にコアラがかろうじて生き残れるような世界ではなく、いきいきと生きていける、豊かな森がよみがえった環境です。
絶滅危機レベルのアップ、という今回の厳しい決定が、回復へのターニングポイントとなることを期待しています。