【動画あり】オーストラリアの森で希少な有袋類を再確認!
2021/09/02
生息地はわずか3か所。火事の影響が心配される生物
2021年5月下旬から6月上旬にかけて専門家が、オーストラリア東部クイーンズランド州のバルベリン国立公園で実施した野外調査では、21匹のシルバーヘッド・アンテキヌスが見つかりました。
このような明るい結果が得られた反面、この種の存続には懸念が残ります。
シルバーヘッド・アンテキヌスは、2013年に正式に種として記載されたばかりの生きもので、これまでに確認されている生息地は、オーストラリア東部に位置する3カ所の国立公園(ブラックダウン・テーブルランド国立公園、クロームビット・トップス国立公園、バルベリン国立公園)しかありません。
その中でも、バルベリン国立公園はこの種の主要な生息地となっていますが、2019年に起きた大規模火災では、公園内の熱帯雨林とユーカリ林の3,000ヘクタール以上が焼失しました。これは、同国立公園内にある生息地の約3分の1に相当します。
オーストラリア連邦政府は、2019年から20年にかけての大火事を受けて、緊急の管理を必要とする哺乳類の優先リスト20種を作成し、シルバーヘッド・アンテキヌスも指定しました。
バルベリン国立公園で調査を指揮したアンテキヌスの専門家、クイーンズランド工科大学のアンドリュー・ベイカー博士は次のように語ります。
「喜ばしいことに、火事で焼けた場所と焼けていない場所の両方で21個体が見つかりました。これは素晴らしいことで、彼らが存続していることを意味します。しかし、生息地の3分の1が焼失したことで、バルベリンのシルバーヘッド・アンテキヌスの個体数が大きな影響を受けていることを懸念しています。ひどい焼け跡には雑草が生えており、植生構造が変化して個体数にさらなる影響を与える可能性があります。また、生息地を踏み荒らす野生の豚も問題となっています。今回の大規模火災では、熱帯雨林の地域でさえも脆弱であることが明らかになりました。気候変動による乾燥や火災の激化が予測される中、この種を救うためには努力しなければなりません」。
『今日発見され、明日消えてしまう』
この調査に加わったWWFオーストラリアのダレン・グローバーは、火災後の野生動物の個体数を評価するフィールドワークが重要であると言います。
「コアラが大火災の野生動物のシンボルとなったのは理解できますが、他にも多くの種が影響を受けており、それらも注目に値します。2013年に科学的に報告されたばかりのシルバーヘッド・アンテキヌスは、すぐに絶滅危惧種に指定され、さらに火事で打撃を受けました。『今日発見され、明日消えてしまう』というようなことがあってはならないのです。すべての野生生物を助けるために、WWFはオーストラリアの歴史上最大の自然再生プログラムである『Regenerate Australia』を立ち上げました」。
オーストラリア東部の森を再生するために
Regenerate Australiaとは、オーストラリア史上最大かつ最も革新的な野生生物の回復と景観の再生プログラムです。2020年10月にWWFオーストラリアによって開始されたこの複数年にわたるプログラムは、2019年から2020年にかけて発生した山火事によって影響を受けた野生生物や生息地の回復を図るとともに、気候変動の影響からオーストラリアを将来にわたって守るために役立ちます。
WWFジャパンでは、現在オーストラリア東部の森林保全のためのキャンペーン「よみがえれ!コアラの森」を実施しています。多様な生物がすむオーストラリア東部の森を守るには、火災被害からの回復、
そして、開発などによる森林減少防止の両方が必要になっています。このキャンペーンにお寄せいただいたご寄付は、WWFオーストラリアの「Regenerate Australia」の支援などに使われます。
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