北太平洋漁業委員会2021閉幕 サンマ資源回復への大きな一歩も未だ課題は多い
2021/03/16
サンマの漁獲量 40%削減に合意
2021年2月23日から25日まで、オンラインにて北太平洋漁業委員会(NPFC)の第6回年次会合が開催されました。
8の加盟国・地域(*)が参加したこの会議では、サンマやアカイカなど北太平洋の魚種を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。
*日本、アメリカ、カナダ、ロシア、中国、韓国、バヌアツ、台湾
今回2021年の年次会合では、日本で過去最低の漁獲量となっているサンマについて、さらなる漁獲規制が導入されるかが注目されていました。
秋の風物詩でもあるサンマですが、日本以外にも台湾、中国、韓国、ロシア、バヌアツによって漁獲されています。
日本の漁獲量は、以前は世界1位でしたが、1990年代後半以降徐々に低下し、現在は台湾、中国に続く第3位まで減少しています。
日本のサンマ漁は日本の排他的経済水域(EEZ)内で行われているのに対し、台湾、中国などの外国船は公海上で操業していますが、近年、この公海上での漁獲量が急増。
これによる、日本での漁獲量が減少や、サンマ資源そのものの枯渇が心配されていました。
2019年の科学委員会からの報告では、サンマ資源が「枯渇状態」にあることが、そして今回2021年の報告ではさらに「乱獲状態」に陥っていることが明らかとなりました。
加えて、サンマの資源回復のためには、漁獲量を40%削減することが必要であるとの報告もありました。
それに対し日本代表団は、科学委員会の提案に従い、漁獲量を40%削減させるとともに、小型魚を対象とした漁業を制限することを提案。
当初は複数の加盟国から反対があったにもかかわらず、追加の会議を実施することにより国ごとの漁獲枠は設定しないものの、2021、22年の総漁獲可能量を現在より40%削減することが合意されました。
加えて日本代表団からの提案により、次回2022年の年次会合において、サンマの「漁獲制御ルール」についても議論されることになりました。
漁獲制御ルールは、すでに太平洋クロマグロなどで導入されている制度で、メバチ、キハダやカツオについても導入が検討されている、持続可能な資源管理にとって有用な方法です。
サンマ資源の回復にとっても、このルールの早期導入が必要不可欠です。
大きな課題、IUU漁業への対応
2021年の年次会合では、IUU(違法、無規制、無報告)漁業対策も大きな課題となりました。
2020年、日本海において中国漁船による違法なスルメイカの漁獲が発覚。
不漁に苦しんでいる日本にとって大きな脅威であることが明らかとなりました。
今回のNPFCの会議では、新たにIUU漁船リストに掲載すべき漁船について議論。その結果、3隻を追加し、36隻をIUU漁船とすることに合意しました。
また、洋上転載時のオブザーバー(監視員)乗船制度が導入されていないことについて、日本代表団から問題提起されました。
洋上転載とは、洋上で魚を漁獲した漁船から大型の冷凍運搬船へ漁獲物を移動させることですが、この時、複数の漁船から漁獲物が持ち込まれるため、違法なものが混ざってしまうリスクが指摘されています。
中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)など他の地域漁業管理機関(RFMO)では、転載船にオブザーバーを乗船させる義務がありますが、NPFCについてはそのような義務が課されていません。
IUUリスクを低減させるためには、早急に転載船へのオブザーバー制度を導入する必要があります。
日本人が最も多く消費するマサバ 過剰漁獲を未然に防ぐべし
今回のNPFC年次会合の結果に対し、会合に参加したWWFジャパンのサイエンス&テクノロジー担当の植松周平は、次のように述べました。
「今回の年次会合は、コロナウイルス感染症下での初のオンライン開催となりましたが、サンマの漁獲量40%削減に合意できたことは、サンマ資源の回復のための一歩だと思います。
しかし、2019年の漁獲量は、その総漁獲可能量を下回る水準まで低下しています。
サンマの資源回復にとって本当に効果的であるか、引き続き注視する必要があります。
また、マサバを漁獲するために加入を希望していたEUが、次回2022年よりNPFCに加入することが認められました。
まだEUによるマサバ漁獲は認められていませんが、早期に漁獲制御ルールなどの管理方策を導入することが必要です。
引き続き日本代表団のリーダーシップを期待しています」。
サバは日本人が最も多く消費する魚種です。
サンマのように、各国の競争による資源低下してしまわないよう、予防的な観点で漁業を管理する必要があります。
WWFは、北太平洋の持続可能な漁業の確立とIUU漁業廃絶のため、引き続き各国政府に働きかけをおこなっていきます。