© WWFジャパン/R.Suzuki

喜界島で世界最北のアオサンゴ群生発見!

この記事のポイント
鹿児島県の喜界島で、世界最北と思われるアオサンゴの群生が発見されたことが喜界島役場と喜界島サンゴ礁科学研究所から発表されました。喜界島では、この貴重なアオサンゴ群生を地域で守り、活用する取組みが始まりました。

サンゴの島、喜界島。

奄美大島の北東約26キロに位置する喜界島。周囲48.6キロ、約7000人のこの島の周囲の海では、サンゴをはじめとする様々な生き物たちに出会うことができます。

この喜界島は、2017年に世界的に生じたサンゴの白化現象の影響もなく、南西諸島のサンゴ礁の中でも比較的良好なサンゴ礁環境が維持されている貴重な島です。

また、島のなかではサンゴの骨を積み重ねた石垣や、サンゴの骨を削りだして作った墓石など、サンゴ礁と人との繋が作り出したサンゴ礁文化が色濃く残された島でもあります。

喜界島小野津沖で発見されたアオサンゴ群生。
©WWFジャパン/R.Suzuki

喜界島小野津沖で発見されたアオサンゴ群生。

世界最北のアオサンゴ群生発見!

2020年8月、この喜界島から嬉しいニュースが届きました。
喜界町役場と喜界島サンゴ礁科学研究所が、喜界島の小野津集落沖のサンゴ礁で、大規模なアオサンゴの群生が発見されたことを発表したのです。

アオサンゴはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「VU(危急種)」に掲載されているサンゴです。
日本では沖縄県石垣島の白保サンゴ礁に大きな群生があることが知られています。

また、石垣島の伊原間、沖縄本島の大浦湾や奄美大島の大島海峡でも群生の存在が確認されています。

今回発見された喜界島のアオサンゴ群生は、地球上で最も北に位置する群生になります。

調査によってアオサンゴ群生は水深6~20mの間に長さ約230m、幅約40mの範囲に広がり、面積が6200平方メートルにわたって分布していることが確認されました。

喜界島阿伝集落に残るサンゴの石垣。
©WWFジャパン

喜界島阿伝集落に残るサンゴの石垣。

地域による保全と活用にむけて

新たに発見されたこのアオサンゴの群生は、生物として貴重な存在ですが、島の方々にとって貴重な財産でもあります。この新たに発見されたこの群生を保全する必要があります。

また、アオサンゴ群生が見られる海域は、流れが速く危険な場所です。

そこで、喜界町役場、喜界島サンゴ礁科学研究所、ダイビング業者が協議し、アオサンゴ群生の保全と安全な利用について以下の指針をとりまとめました。

(1)陸から直接行かない

アオサンゴが見られる場所は、潮の流れが大変早くとても危険な場所です。海岸から泳いで近づくと、流される危険があります。陸から泳いでいかないようにお願いします。

(2)船で行く

アオサンゴを見に行く場合は、海域に詳しい方にお願いして船で訪れてください。 このアオサンゴ群生に関するお問い合わせは、喜界島サンゴ礁科学研究所へご連絡ください。

(3)継続的なモニタリングを実施する

アオサンゴを守るために、群生の状況を定期的に調査します。

(4)関係機関と協力した保全を進める

アオサンゴの群生に変化があった場合、関係者と情報を共有し、適切に対応するための話し合いを行います。

(5)事故防止

島外からの観光客の方が事故にあわないように不用意な情報提供等は避けましょう。

喜界島では、発見されたアオサンゴを指針に従って保全と活用を行う予定です。

地域の財産を地域が守り活用していく取組にも今後注目したいと思います。

継続したモニタリングにより、アオサンゴ群生の適切な保全対策を検討します。
©WWFジャパン/R.Suzuki

継続したモニタリングにより、アオサンゴ群生の適切な保全対策を検討します。

これからのサンゴ礁保全

今後地球の温暖化が進み、平均海水温が1度上昇すると世界のサンゴの9割以上が死んでしまうと予測されています。
サンゴ礁の保全は、早急な地球規模の温暖化対策が必要です。

また、世界中では8億5,000万人の人がサンゴ礁の近くに暮らし、食べ物などの恩恵を受けて生活していると言われています。サンゴ礁の保全はこの人々の暮らしを守ることに繋がります。

地球規模の対策に加え、地域レベルでのサンゴ礁への負荷を減らし、またサンゴ礁を守りながら恩恵を受ける地域づくりがこれからのサンゴ礁保全に必要です。

 喜界島のサンゴ礁は、これまでの高海水温による白化の影響も少なく、比較的健全な状態が保たれている貴重なサンゴ礁です。

このようなサンゴ礁を保全していくことは、温暖化による高海水温化が進むなかでも、非常に重要な取り組みです。

また、喜界島のアオサンゴを地域の方々の手によって保全することにより、地域社会の実情を踏まえた継続的な保全対策が行なわれることが期待されます。

喜界島でのアオサンゴ群生の保全の取り組みが、今後のサンゴ礁保全のモデルケースの一つとなることを期待します。

この貴重な喜界島のアオサンゴ群集が、適切に保全・利活用されることを願います。
©WWFジャパン/R.Suzuki

この貴重な喜界島のアオサンゴ群集が、適切に保全・利活用されることを願います。

「喜界島」サンゴの島の暮らし発見プロジェクト

喜界島では、喜界島サンゴ礁科学研究所、喜界町役場、WWFジャパンが協力し、「サンゴの島の暮らし発見プロジェクト」を進めています。

このプロジェクトでは、喜界島に残るサンゴ礁文化を通じてサンゴ礁生態系から受ける恩恵を再認識し、これまでに培われてきた人とサンゴ礁の関係を構築してゆくことで、地域が主体となった持続可能な活動が進むことを目指しています。

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP