ブータンでユキヒョウの増加を確認 最新の調査報告より
2023/10/03
- この記事のポイント
- 2023年9月16日、ブータン政府は2022年から2023年にかけて実施した、絶滅危惧種ユキヒョウの全国調査の結果を発表しました。国内各地の国立公園や森林管理局から、70名のレンジャーが参加。WWFブータンもこれに加わり、調査員が必要とする装備の調達を支援しました。結果、ブータン国内には現在、134頭の野生のユキヒョウが生息していることが確認されました。
ユキヒョウのブータンでの生息状況
2023年9月16日、ブータン政府は2022年から2023年にかけて実施した、絶滅危惧種ユキヒョウの全国調査の結果を発表しました。
この調査は、ユキヒョウがすむブータン北部のヒマラヤの高山帯、約9,000平方キロ以上の生息域で実施され、国内各地の国立公園や森林管理局から、70名のレンジャーが参加。WWFブータンもこれに加わり、調査員が必要とする装備の調達を支援。
310の地点に調査用の自動カメラ(カメラトラップ)を配置して行なった結果、ブータン国内には現在、134頭の野生のユキヒョウが生息していることが確認されました。
これは、2016年に行なわれた同様の調査で確認された96頭を上回る数値です。
全体の生息密度は100km平方あたり1.34頭で、ブータンの西部では比較的この数値が高いこともわかりました。
また、過去の調査ではユキヒョウが確認できなかった地域でも、今回は記録されるなど、ブータンが国として力を入れてきたユキヒョウの保全活動が、奏功していることも明らかになりました。
増加が認められるも危機は続く
ユキヒョウは中央アジアからヒマラヤにかけての高地や山岳地帯を中心に生息する大型のネコ科動物で、ブータンを含むヒマラヤ東部はその重要な生息域の一つです。
IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」でも「VU(危急種)」に選定されているユキヒョウは、現在各地で生息環境の劣化や、獲物となる草食動物の減少、家畜を襲う害獣とされる問題、そして気候変動などの脅威にさらされています。
今回の調査では、ブータンの個体数は微増傾向にあることがわかりましたが、世界全体では生息数が減少しているとみられています。
また、ブータンのユキヒョウも、インドや中国といった周辺の国々と行き来している可能性もあることから、予断は許されません。
さらに、ブータン国内でも、ユキヒョウは家畜のヤクを襲う問題が起きており、家畜を襲われた住民への補償制度の適用や、ユキヒョウの侵入を防ぐための柵を設置支援など、まださまざまな対策が必要とされています。
今回の調査結果について、WWFブータンのカントリーディレクターを務めるチミ・リンジンは、次のように述べています。
「ユキヒョウの増加は、ブータンの自然保護活動の歩みにおける画期的な成果であり、ブータン政府のリーダーシップと、地域住民の方々の活動への理解の賜物です」
「一方で私たちは、ユキヒョウと人の間で起きている、家畜をめぐる衝突(あつれき)の増加という問題があることも、十分に認識しています。牧畜を営む人たちの暮らしを守りながら、ユキヒョウの未来を守っていくため、これからもこの問題への取り組みに尽力していきます」
ヒマラヤのユキヒョウを守るために ~野生動物アドプト制度のご案内
WWFはネパールやインドなど、ヒマラヤ山脈の他のユキヒョウの生息域でも、その調査・保護活動に取り組んでいます。
そのフィールドの一つ、カラコルム山脈に連なる西ヒマラヤでも、ブータンと同様に、ユキヒョウが家畜を襲う問題が多発。人との間であつれきが生じています。
そこでWWFインドは、ユキヒョウやその獲物となる草食動物の調査に加え、こうした被害地域のコミュニティ支援と、ユキヒョウ保護への理解を促進する普及活動を展開。ヒマラヤの野生動物の保全と人の暮らしの両立を目指しています。
WWFジャパンは現在、「野生動物アドプト制度」を通じて、このWWFインドの活動を支援しており、日本国内で広く寄付を募っています。
ユキヒョウの保全活動にご関心をお持ちの方は、ぜひこのアドプト制度にスポンサーとしてご参加いただき、取り組みをご支援いただきますよう、お願いいたします。