『企業の温暖化対策ランキング』の功績に対し表彰
2020/02/28
WWFの『企業の温暖化対策ランキング』プロジェクトとは
企業による地球温暖化防止にむけた取り組みは、「パリ協定」の実効性を確保する上で、非常に大きな役割を担っています。
各企業が行なっている気候変動対策は、環境報告書やCSR報告書、統合報告書等を通じて一般に公開され、確認することができます。
一方で、環境報告書類に公開されている情報は、各企業間で統一性がないため、それぞれの取り組みレベルを比較することや、実効性を評価することが容易ではありませんでした。
そこで、WWFジャパンは、日本企業による温暖化の防止に向けた取り組みの重要性をいち早く認識し、『企業の温暖化対策ランキング』プロジェクトを、2014年に開始しました。
このプロジェクトでは、公開されている日本企業の環境報告書等を共通の指標で評価し、結果を詳細に公表することで気候変動対策の底上げを目的としています。
『企業の温暖化対策ランキング』において、WWFジャパンは、環境報告書類に示された温暖化対策を、「目標および実績」「情報開示」という2つのカテゴリーで、計21の評価指標に基づき評価しました。
21の評価指標の中で、次の7つの指標は、実効性の高い温暖化対策を確保するうえで、特に重要な位置づけにあります。
- 長期的なビジョン
- 削減量の単位
- 省エネルギー目標
- 再生可能エネルギー目標
- 目標の難易度
- 製品のライフサイクル全体での排出量把握・開示
- 第3者による評価
全ての評価結果は、11編の報告書(29業種、450社をカバー)として公表しています。
この評価結果をふまえ、WWFジャパンは約100社と対話を行なってきました。
対話では、長期的視点の下で再生可能エネルギー導入やバリューチェーン全体を通じた温暖化対策を後押し、投資家からも高い評価を得られるような情報開示に向け、企業に助言を行っています。
『企業の温暖化対策ランキング』がもたらしたもの
『企業の温暖化対策ランキング』における詳細な評価結果の公表や、それに基づいた企業との個別対話は、様々な変化を促す一助となっています。
例えば、企業によるパリ協定と整合した温室効果ガス削減目標(Science Based Targets:SBT)の設定が求められている中、削減目標設定に課題を抱えている企業が、多く存在します。
そのような場合、WWFは『企業の温暖化対策ランキング』評価結果を示しながら解決策を提案し、多くの企業をSBTの策定へと導きました。
また気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative:JCI)は、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するためのゆるやかなネットワークとして2018年に立ち上げられ、2020年2月までに459団体が参加表明をしています。
このような多方面における温暖化防止に向けた動きの拡大にも、『企業の温暖化対策ランキング』は寄与しています。
一方、これまでの調査結果からは、課題も見えてきました。
具体的には、各業種とも環境報告書などを通じた情報開示については取り組みがある程度進んでいる一方、長期ビジョン・目標の設定や、バリューチェーン全体を見据えた目標設定の重要性などについては、理解や対応が不足している傾向が見受けられます。
気候変動による異常気象などの激甚化にくわえ、こうした企業による対応不足が、金融市場へのリスクとなることを懸念して発足したのが、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)です。
2017年にこのTCFDが発表した報告書でも、気候変動に関連したリスクに対応できる中長期的な事業戦略や目標と、着実に実行できるガバナンスが、持続的な企業活動に重要であるとしています。
つまり、WWFが『企業の温暖化対策ランキング』の中で示している、7つの重要な指標に基づいた取り組みが、2050年、さらには2100年といった長期の視点に立った活動の基盤を形成することにつながってくるといえます。
サステナブルファイナンス大賞 NPO賞を受賞
こうした一連の功績が評価され、WWFの『企業の温暖化対策ランキング』は2020年1月、一般社団法人環境金融研究機構(Research Institute for Environmental Finance: RIEF)の主催する、第5回サステナブルファイナンス大賞において、NPO賞を受賞しました。
非政府組織(NGO)であるWWFの公益性を確保した活動が高く評価された背景には、パリ協定に即した排出削減目標が企業に対しても求められている現状があるといえます。
また国内外でのESG投資の拡大に鑑み、企業からの開示情報を正しく理解することも、必要となってきます。
WWFではこうした社会的な動きを考慮し、『企業の温暖化対策ランキング』の次の展開として、投資家側の視点で企業の公開情報を精査し、企業評価の一助となるプロジェクトを実施する予定です。
WWFは今後も、企業活動の変革を通じた産業、経済の持続可能性の実現を目指した取り組みを継続してゆきます。