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WWFジャパン会員イベント&「喜々と危機」報告会を開催

この記事のポイント
海外の珍しい動物「エキゾチックアニマル」をペットとして飼う人が増えている日本では、そうした動物を違法に販売、飼育をする人があとを絶ちません。2018年8月18日、WWFジャパンは、この問題をテーマにしたイベントを実施。こうした問題への取り組みを、警視庁生きものがかりの福原警部と一緒にお話しさせていただきました。午前の部は、WWFジャパン会員向けの夏休み親子企画、午後の部は、違法取引防止のためにご支援をお願いした「喜々と危機」キャンペーンの報告会として開催。会員の皆さまにもご参加をいただき、活発にご質問をいただいた会となりました。

エキゾチックアニマルブームの裏側

ペットとして人と長い歴史を共に暮らしてきた身近な犬や猫などの動物をコンパニオンアニマル(伴侶動物)と呼びます。主に海外から輸入され、ペットとして飼われている、コンパニオンアニマル以外の動物、「イグアナ」「ハリネズミ」「カワウソ」などの動物がエキゾチックアニマルと呼ばれています。

そうした動物たちには、物珍しさやキュートな見た目などから、日本でもペットとしての需要が増えています。その需要が、野生生物に大きな影響を与える要因の一つとなっていることをお話しさせていただきました。

その中でも、一例としてお伝えしたのが、テレビや雑誌で見ることも多い「カワウソ」です。

カワウソは、IUCNのレッドリスト(絶滅のおそれのある野生動植物のリスト)で絶滅危機種に指定されている種が多く、ワシントン条約(CITES)で国際的な商業目的の取引が規制されています。

こうした取引規制があるカワウソにもかかわらず、TRAFFIC(WWFジャパンの野生生物鳥居引き調査部門)の調査によると、2016年から2017年にかけて、生きたカワウソ59頭が押収され、なんとその内35頭は日本が目的地となっていたことが分かりました。もちろん、日本で販売・飼育されているカワウソがすべて違法ということではありません。ただ、日本で、カワウソをペットとして飼いたいという需要がある限り、こうした違法取引や密猟を誘発する一因となり、絶滅のおそれを高めてしまうことがあるのです。

2013年タイのスワンナプーム空港で、密輸されようとしていたところを押収されたコツメカワウソ

そして、万が一、カワウソを逃がしてしまった場合、「外来種」として、もともと日本にいる生きものや生態系などに影響を与えてしまうリスクもあります。

WWFジャパンからは、絶滅のおそれのある動物をペットとして飼う必要があるのか、そのペット需要が環境へ与える影響もよく考える必要があることを多くの人にお伝えしたい、と参加者の皆さまにお話ししました。

警視庁生きものがかりのおしごと

日本国内での野生生物の違法取引や飼育などの取り締まりをしているのが、今回のゲストスピーカー、福原秀一郎警部が所属する「警視庁生活安全部生活環境課環境第三係(通称:警視庁生きものがかり)」です。

福原警部

今回、福原警部はその著書『警視庁生きものがかり」(講談社2017)にもでてくる数々の事件と最新の事件を交え、事件の発覚から、どのように逮捕に至るのかをお話しくださいました。

例えば、2018年8月に国の天然記念物「キシノウエトカゲ」と「ヤエヤマセマルハコガメ」を無許可捕獲・飼育していた男が逮捕されたというニュースがありましたが、これも「警視庁生きものがかり」によるお仕事です。今回はツイッター投稿をみた人からの通報により発覚し、その情報をもとに捜査をし、「文化財保護法」違反の疑いで逮捕に至ったという事件でした。

福原警部のお話しで特に参加者の皆さんが驚いていたのが、明らかに希少種であっても逮捕するための法律がないケースもあるという、現在の法規制の穴です。

事例がないためにせっかく集めた証拠をもっていっても、立件に至らないケースもあるとのことで、どの法律を当てはめれば解決ができるのかを日々悩み、事件解決に向けて奔走されているというお話を伺うことができました。

WWFジャパンと警視庁生きものがかりに質問!

喜々と危機報告会の最後には、参加者の皆さまからのご質問を受付し、可能な限り福原警部とWWFスタッフからお答えさせていただきましたので、その一部をご紹介させていただきます。

質問:容疑者を逮捕し、保護した生物は、元の場所に返すことはできますか?

回答(福原警部):残念ながら日本国内に生息する鳥など一部を除いて、元に戻すことは出来ません。というのは、実際に本当にそこからとられたのか、わからないからです。少しでも間違うと、生態系を崩しかねないので、野生に戻すことが出来ないのです。そのため、保護された動物は、現在は各動物園など、協力機関に相談し引き取ってもらっています。
ですから、一度でもそこ(生息地)から採られてしまうと自然には返せず、環境破壊となってしまいます。ですから、その行為を取り締まっています。

質問:今までの捜査の中で一番大変だったことは何ですか?

回答(福原警部):著書中にもありますが、タイまで容疑者を追って、飛行機の中で逮捕をした事件です。国をまたぎ、タイの警察の協力も得て捜査をおこなった印象的な事件でした。

質問:ワシントン条約で規制されている動植物で許可が発行されるのはどのような場合ですか?

回答(WWFジャパン):
生息国の科学当局、日本の環境省のような機関が、「その野生生物を捕獲/採取することでその種の生息状況に影響を与えない」という判断をしたときに輸出許可書が発行されます。

「喜々と危機」キャンペーンによって行なうことが出来た活動

絶滅のおそれのある生きものを守るための法律の改善は、WWFジャパンが長年行政に訴えている点のひとつです。そのためにも、まずは、現状を把握することが大切であるため、科学的根拠のあるデータを集める必要があります。

そうした調査や行政・関係者への働きかけのために、2017年6月~11月「喜々と危機」キャンペーンとしてサポーターの皆さまにご支援をお願いし、のべ3,546の方より、合計2,680万3,692円のご支援をいただきました。

こうしてご支援を頂いた皆さまのおかげで、市場調査や報告書の発表、調査結果を広めるためのイベントを行なうことができました。さらには、その調査報告がメディアや国会質問にも取り上げられたりと、多くの人にこの問題を真剣に考えてもらうという機会を得ることができました。
ご支援を頂きました皆さまに、改めて、この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。

今後は、日本のペット市場の課題解決のために、関係者との対話を行なっていきたいと思います。

最後になりましたが、今回午前に開催した、会員のつどい「第13回わいるどアカデミー+(ぷらす)」にお越しいただいた小学生とその保護者のみなさま、午後に開催しました「喜々と危機報告会」にお越しいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

第13回わいあるどアカデミー+(ぷらす) 参加者の皆さまと

喜々と危機報告会 参加者の皆さまと

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