成田空港で東京税関との共催イベント「そのおみやげ、大丈夫?」を開催


2017年8月2日・3日、WWFジャパンとトラフィックは海外旅行客向けのイベント「そのおみやげ、大丈夫?-生きものを守る税関のお仕事―」を東京税関と協働して成田空港で開催しました。旅先での楽しみのひとつはショッピングですが、中には日本に持ち帰れないものがあります。特に野生生物由来のおみやげ品について、水際で取り締まりを行っている税関と、野生生物取引の調査・監視を行なうトラフィックが、旅先のお買い物への注意を呼びかけました。

知らずに持ち込まれる不法な野生生物製品

さまざまな利便性から海外旅行が身近になった昨今。行き交う人やモノの数が年々増加しています。

楽しい旅の終わり、日本に帰ってきた際に必ず通過しなければならないのが税関です。そこでは、日本に禁制品が入り込まないように水際の番人=税関職員が取り締まりを行っています。麻薬やけん銃、コピー商品が日本に持ち帰れないのは広く知られていますが、動物や植物由来の製品にも、日本に持っては入れないものがあります。

動物・植物検疫の観点から持ち込むことができないものや手続きが必要なことは、よく知られているところですが、他にもワニやヘビの皮革製品、象牙、含有物にアロエやトラの部位が使われているような化粧品・薬など「おみやげ品」とされるような製品にも持ち込みに規制があります。

検疫的な理由ではないこれら野生生物由来の製品が、たとえ個人のおみやげ品であっても日本に持ち込むことができないのは、野生生物を過度な取引から守るための国際条約であるワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の規制対象となっているからです。

絶滅のおそれのある野生生物の取引を規制することで、生息国での捕獲や密猟をおさえ、保全につなげることがその目的です。

トラの野生の個体数は現在約4,000頭と言われています。それにもかかわらず密猟が後を絶ちません。かつて日本でも薬として利用され、現在でも数件ですが、トラの部位を使用した薬の差し止め事例があります。

2016年の野生生物由来製品の水際での差し止め件数は723件

ワシントン条約の規制対象となっているおみやげ品などを、そうとを知らずに日本に持ち込もうとした場合は、空港の税関カウンターで「任意放棄」することが求められます。

税関で止められた際に放棄することで、違法行為とはなりませんが、それら製品は破棄されることになります。中には、知らずに生きた動物を持ち帰り、税関でそれを引き取るといった事例も発生しています。

せっかくの旅の思い出を、空港の税関カウンターで手放すことにならないように、旅先のお買い物には注意が必要です。

また、違法と知りつつ、意図的かつ明らかな犯罪行為として、持ち込みを行なった場合は、もちろん処罰されます。

ワシントン条約該当品輸入差止事例723件の内訳(2016年)

2016年1年間に税関で差し止め(任意放棄)られたワシントン条約の規制対象品は723件におよびます(国際郵便等を含む)。これらは知らずに持ち込まれたものがほとんどであると考えられますが、残念ながら巧妙な手口によって違法に持ち込まれるものもあることを考えると、その数は図りしれません。

現在、2万4,000種を超える野生生物が絶滅の危機にあります。その原因のひとつが、人によるこの「過剰な利用」と「取引」です。

たとえ、知らなかったとしても、おみやげなどの購入や持ち込みを通じて、野生生物の絶滅に手を貸すことがないように気をつけなければなりません。

こうした問題は、事前に知っていれば未然に防ぐができます。そこで、WWFジャパンとその野生生物取引部門であるトラフィックは、旅行の際に、どういったことに気をつければよいのか。8月2日、3日の夏休みの旅行シーズンに、東京税関と協働して、成田空港で啓発イベント「そのおみやげ、大丈夫?-生きものを守る税関のお仕事-」を開催しました。

センザンコウは、世界で最も密猟されている哺乳類。センザンコウ自体をはじめて聞いた、という人も多かったのですが、少量ですが日本でも革製品として利用されていることはあまり知られていません。

出国する皆さんに向けて

会場は、空の玄関口である成田空港の出発ロビー。旅行に出かける前のみなさんに、旅先でのお買い物に注意をしていただくよう呼びかけました。

パネル展示

税関のお仕事、WWFとトラフィックの活動を紹介。

税関では、麻薬やけん銃、コピー商品取り締まりの他にも、野生生物を守るため、ワシントン条約に基づき、年間500件以上の野生生物の違法な輸出入を日本の水際で取り締まっています。

訪日旅行客向けにも注意喚起。日本から持ち出せないものがあることを多言語のポスターで呼びかけました。

ワークショップ

子どもでも参加可能なワークショップでは、日本には持ち帰れない野生生物由来の製品について学ぶ内容。

参加者は、動物・植物と、それらから作られた製品や利用用途を考え、それが日本に持ち帰ることができるのかどうか、税関職員に確認。更にトラフィックからは、なぜ持ち帰ることができないのか、その生物の生息状況や違法取引による脅威について解説。旅先で見かける製品の中にも動物・植物由来のものがあること、そして野生生物が人々の過度な利用により絶滅のおそれにさらされていることを知ってもらうことを目的としました。

旅先のお買い物への注意事項を誓約

会期中は、税関のキャラクター「カスタム君」とWWFの「コパンダ」も登場。旅先のお買い物の際に注意すべきことを呼びかけました。参加者は、着ぐるみから渡された誓約カードと一緒に記念撮影。注意事項を心に留めて旅立って行かれました。

訪日旅行客向けポスター

今回のイベントでお伝えしたかったこと、それは、国境を越えた暮らしと野生生物のつながりを「想像すること」です。

どの製品がワシントン条約の対象品なのか、それらを把握し、覚えるということは簡単なことではありません。ですが、手に取った製品が、何からできているのか、動物や植物由来であった場合には、その生物の生息している場所や生息状況に思いをめぐらし、利用や取引が過度にされていないか、その国で保護されているものではないか、それは誰もがどこでもできることです。

今回のイベントが、海外を訪れる多くの方に、そうした想像をしていただくきっかけになれば、それが違法取引問題を解決していく第一歩となるはずです。

税関、トラフィックからの解説に一生懸命耳を傾けてくれていました。

旅先でのお買い物について注意事項を誓約してくださったみなさま

イベント概要

日時 2017年8月2日(水)・3日(木)13時~17時
場所 成田国際空港 第2ターミナル出発ロビー「SKYRIUM(スカイリウム)」
参加者 空港利用者(188名/2日間)
主催 東京税関、トラフィック、WWFジャパン

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