IPCC横浜会議 空席が目立つ夜の会場から


横浜で開かれているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の会議4日目の夜です。

前日の3日目は、約40ページある「温暖化の影響」の報告書の要約を、一文一文チェックする作業が、午前2時半まで続きました。

昼間は190カ国からの政府代表団でひしめきあう会場も、夜になるとだいぶ空席が目立つように。でも、政府の中心的な人たちは残って、夜中まで頑張っています。

それでも進行は全体のまだ30%あまり。また長い夜となりそうです。

それにしてもつくづく、これだけの政府が世界各国から集まり、科学者のまとめた報告書を、何とかわかりやすく、なるべく偏らない形に、しかも科学的に正しく伝えようと努力するさまには圧倒されます。

各章を担当した科学者たちが、各国政府のコメントに対し、科学的に検証しながら取り入れたり、却下していきます。朝9時から翌朝まで、髪を乱し、赤い目でぐったりしながら、それでも必死にテキストを追っています。

温暖化の科学は、実証できる科学ではないので、異論も多く聞かれます。そしてその科学を基に、大国同士が痛みを伴うCO2の排出削減について国際交渉していくわけですから、このIPCCの報告書は非常に重みがあります。

だからこそ、特定の国の利益にくみすることなく、公明正大なプロセスで、関連する世界の政府の関与を得て、報告書の要約を作り上げていかねばなりません。

これだけの科学者と、これだけの政府の人々が、これだけの努力を払い、オープンな場で最新の知見をまとめていく作業を見ると、今の段階でこれ以上の公明正大なプロセスはないのではないかなとさえ思います。

報告書の発表は31日の朝です。私たちも頑張らねば~ (温暖化担当:小西)

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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