日本企業の強みを活かす船の燃料の脱炭素化! 日本郵船訪問記<後編>
2024/08/09
国際的な海運のルール作りを担う国連の国際海事機関(IMO)が、2023年の夏に世界中の船舶から排出される温室効果ガスを2050年頃までに実質ゼロにするという目標を採択しました。世界中の船舶業界が、脱炭素化を競っています。
しかし長い時間航行する船舶燃料の脱炭素化には、陸上で使うエネルギーと違って高度な技術開発が必要です。まずはさらなる省エネを追求し、重油からLNGに変換していくこと。そして将来的には水素やアンモニアなどの炭素を出さない燃料を使うゼロエミッション船の技術開発が必要です。
その先端を行く日本郵船を訪問してきました。世界中でゼロエミッション船の開発競争が行われていますが、実は日本の船舶会社はアンモニアを燃料とする船舶の開発に大いに強みがあって、先駆けられるそうです!
というのは、海に囲まれた日本では、もともと天然ガスの算出地とパイプラインでつながることはできませんでした。そのため、天然ガスをマイナス160度まで冷やして液化し、体積を600分の1に小さくしてから、専用の運搬船で運んで輸入してきたという歴史があります。輸送中に、天然ガスの一部は気化しますが、そのガス化したものを船の燃料に使いながら航行しているそうです。
アンモニアもガスの一種です。すなわち日本郵船をはじめとした日本の海運会社は、ガスの取り扱いに慣れているのです。さらにもともと肥料用等のアンモニアの輸送も手がけています。アンモニアを運びながら、そのアンモニアガスで走る船舶。その技術開発には日本郵船には大いに優位であるということになります!
もちろん課題はたくさんあるそうですが、課題は明確になれば、必ず解決策は見つかると力強く話しておられました。日本郵船では、アンモニア船の実用化に取り組んでおり、まずはアンモニアを燃料とするタグボードを2024年8月に就航させる予定です。そして世界初となる国産エンジンを搭載したアンモニア燃料アンモニア輸送船の建造に取り掛かっており、2026年11月に完成する予定だそうです。
いち早く船舶輸送の脱炭素化ができれば、世界中の脱炭素化を掲げる企業からの引き合いが期待されます。競争優位性を持つ日本企業!「日本の技術で海と未来を変える」なんて素敵なのでしょう!
詳しい日本郵船訪問記は下記をご覧ください。
小西雅子インタビューシリーズ paint a future ~燃料転換の鍵は水素エネルギー 船舶から排出されるCO2削減の実現へ(PDF)
※この記事は、日報ビジネス株式会社のご許可を受けて「隔月刊 地球温暖化」から転載しています。
(気候・エネルギーグループ 小西)
(2024年9月11日追記)
※アンモニア製造に必要な水素の製造時には、手法によってはCO2の排出を伴いますが、WWFジャパンの「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ」では、再生可能エネルギーの余剰電力で水を電気分解して作るグリーン水素を提言しています。
脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ