最新の地球温暖化の科学:IPCC第5次評価報告書 もうすぐ発表!


国連の地球温暖化に関する科学の最高峰の報告書である「気候変動に関する政府間パネル(英語名を略してIPCCと呼ばれる)」の第5次評価報告書が2013年から2014年にかけて発表されます。その第1弾として、第1作業部会の報告書が、2013年9月23日から26日にスウェーデンのストックホルムで開催される第1作業部会総会で発表されます。

最新の地球温暖化の科学をめぐって

IPCCとは、地球温暖化に関する世界中の専門家の科学的知見を集約している報告書で、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立されました。

1990年に発表された第1次評価報告書から数えて5回目の発表になります。国際的にもっとも認められた温暖化の科学の報告書で、気候変動枠組条約などの国際交渉の基礎となるものです。

IPCCの特徴は、報告書の「政策決定者向けの要約」を作成する際に、100カ国以上の政府が集まって全会一致で承認していく手順を経ることです。

第4次評価報告書が発表された2007年のIPCC総会では、巨大な会議場で、大きなスクリーンに映し出された要約の一文ずつを、IPCCのパチャウリ議長が読み上げながら、各国政府の承認を得ていきました。

「政策決定者向けの要約」は、多くの科学者のコンセンサスがとれている内容の中でも特に重要な知見が採択されるものなので、各国政府はそれぞれ強調したいところを強く要求したり、訂正を求めたり、激しく交渉するのです。

今回の第5評価報告書も、おそらく最終日になっても作業は終わらず、新報告書の完成は、会議終了後までもつれこむかもしれません。

世界が承認した事実のもとに

こうした各国政府による承認の過程を経た「政策決定者向けの要約」を元に、国連の場で温暖化の国際交渉が行なわれます。このため、参加国から温暖化の原因や影響などについて異論が上がることはないわけです。

国の政治や経済に大きく関わる温暖化交渉の元となる科学の報告書ならではの過程を経ているといえるでしょう。IPCCは「人間活動が引き起こした気候変動について知見を広め、対策に向けた基盤を築いた」として、2007年にノーベル賞を受賞しました。

IPCCの報告書は国連の気候変動に関する国際会議で大きな影響を持ち、今までのCOPと呼ばれる気候変動枠組条約締約国会合のほとんどすべての合意の中で、IPCCなどによる最新の科学の知見を取り入れることが言及されています。

「産業革命前に比べて2度未満の上昇に抑える」ことが決まったのも、IPCCの報告書に基づいた結果でした。

また、今後の国際交渉の予定も、IPCCの発表時期を明確に意識して立てられています。

2013年から14年にかけて発表される第5次評価報告書を受けて、2015年に、2020年以降の新しい法的な枠組みを合意することになっているのもそのためです。

ちなみにIPCCの評価報告書は科学をとりまとめた報告書ですから、IPCCが何かのロードマップや特定の政策・対策を推奨することはありません。

あくまでも科学的な知見を提供することが仕事です。その予測を受けて温暖化対策を決めていくのは政治の仕事です。

IPCCの3つの作業部会

IPCCの報告書は、3つの作業部会から出されます。

  • 第1作業部会:温暖化の科学(自然科学的根拠)
  • 第2作業部会:温暖化の影響(影響・適応・脆弱性)
  • 第3作業部会:温暖化の対策(気候変動の緩和策)

それぞれに本報告書とあわせて、20~30ページの「政策決定者向けの要約」が作成され、最後に統合報告書が発表されます。

今回の第1作業部会の新しい報告書では、第4次評価報告書の時にはあまり研究が進んでいなかった「雲とエアロゾル(気体中に浮かんでいる微粒子)」の働きが独立した章となって、最新の知見が報告される予定です。

そのほか、今後の数十年間を対象とする「近未来気候変動:予測と予測可能性」など合わせて4章が新たに独立した章となる予定です。氷河の融解による海面上昇への影響などが注目されます。

2013年9月にスウェーデンで発表される第1作業部会の報告書に続き、温暖化の影響を報告する第2作業部会の総会は、日本の横浜で2014年の3月に開催される予定です。

そして第3作業部会は2014年4月にドイツで、最後の統合報告書は2014年10月にデンマークで発表されます。

WWFも現地にスタッフを派遣して、会議の行方と報告書の発表までを見守る予定です。

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