東京都下水道局の脱炭素の取組(後編)
2023/07/21
ペロブスカイト実証実験の視察レポートの後半では、東京都下水道局・森ヶ崎水再生センターの幅広い脱炭素の取り組みを紹介します!
下水道といえば、私たちの日常生活に不可欠な水インフラですが、気候変動対策でもたくさんの取り組みが行なわれているのを、ご存じでしょうか?
実は下水処理には、電力や燃料など大量のエネルギーが必要で、都庁の事務事業活動による温室効果ガスの排出も、35%が下水道局からの排出で占められています。

都庁の事務事業活動における局別温室効果ガス排出量の割合(2020年度実績)。交通局よりも排出が多いのはちょっと意外でした。
出典:東京都下水道局 下水道カーボンハーフ実現に向けた温暖化対策検討委員会最終報告書より
そんな下水道局では地球温暖化防止計画「アースプラン」を策定し、様々な方法を使って温室効果ガス排出削減をしています。
水処理過程での徹底した省エネはもちろん、太陽光パネルの導入、きれいにした水の放流を利用した小水力発電、汚泥処理から排出されるメタンガスなどを使ったガス発電といった手段で再エネを活用。
ほかにも、下水が気温と比べ「夏は冷たく、冬は暖かい」という特性を利用し、下水熱を冷暖房の熱源にもするなど、余すところなくエネルギーを有効活用しています。

水処理設備のふたの上にびっしりと並べられた太陽光パネル。効率よく発電できるように傾斜がバッチリと計算されているのだそうです。当日は曇りでしたが、ちゃんと発電できていました。

汚泥処理の際に発生するメタンガスを活用して、施設全体の約2割もの電力を賄っているのだそう。化石燃料使用削減にも一役買っている下水道◎魚の絵がかわいいです。

きれいにした水を放流する際の約4mの落差を使った小水力発電。余すところなくエネルギーを使っています。
また、森ケ崎水再生センターには2000kwの蓄電池が4基あり、電気料金の安い夜間に充電し、昼間に利用することで、電気料金削減に加え、電力需要のピーク抑制により、電力不足にも貢献しています。
まさに今、気候変動対策の一手として注目を集めるデマンドレスポンスの手法ですが、下水道局では以前からこうした手法を活用していたのだそうです。

敷地内の蓄電池は想像以上に大きくてびっくり。この蓄電池によりピーク時の電力需要を調整することができます。東日本大震災の計画停電の際には、蓄電池の活躍で下水処理を続けることができたのだそうです。
実は、森ヶ崎水再生センターといえば絶滅のおそれのある渡り鳥コアジサシの貴重な営巣地にもなっています。きれいな水環境だけでなく、気候変動対策や希少種の保全まで、下水道局は今日も地球のために頑張っているのです。
(気候・エネルギーグループ 羽賀秋彦)

毎年夏、東京湾に飛来するコアジサシ