「くくり罠」による野生動物の密猟と新型コロナウイルス感染症
2020/09/11
動物から人に感染する「動物由来感染症」の一つとされる、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
感染拡大の大きな理由として今、自然環境の破壊と共に、野生動物の密猟が指摘されています。
さまざまな病原体がひそむ森林などで行なわれる密猟と、その肉を市場で取引し、食用にする行為は、動物に直接触れ、感染症を広げるきっかけになるためです。
この密猟で多く使われているのが「くくり罠」。簡単な構造ながら、動物を確かに捕らえる力を持つ恐ろしい罠です。
WWFは今年7月に発表した報告書の中で、推定で1,230万個ものくくり罠が、カンボジア、ラオス、ベトナムの保護区内に設置され、野生動物を脅かしている現状に、警鐘を鳴らしました。
被害は実に700種以上の哺乳類に及んでおり、トラやバンテン、アジアゾウなどの絶滅危機種もその犠牲に。
さらには、ジャコウネコやセンザンコウなど、感染症を媒介する可能性が指摘される動物も同じく捕獲されています。
WWFでは現地でのパトロール活動を支援し、罠の撤去に取り組んでいますが、簡単に作れるくくり罠は、すぐにまた設置が可能。
需要があり続ける限り、問題は繰り返されてしまいます。
問題の解決に必要なのは、東南アジアの各国政府による法執行の強化や、先住民を含む地域の人々と協力した取り組み。
さらに、動物由来感染症のリスクが高い動物の捕獲や販売、輸送などを規制することです。
これは、新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、今あらためて注意が必要な対策です。
野生生物、生態系、そして人の健康を守る上でも重要な課題である、密猟や違法取引の問題。そのこと広く伝えるため、情報発信にもより力を入れていきたいと思います。