©А.Kuzhlekov

【動画あり】温暖化に左右されたロシアのユキヒョウ調査


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

森林グループの天野です。

WWFロシアから、2020年2月~5月にロシアのアルタイ・サヤン山脈で実施した年1回のユキヒョウ調査の結果が届きました。

調査地はロシア、モンゴル、中国、カザフスタンの国境地帯に広がる大山脈群一帯(アルタイ・サヤン・エコリージョン)のロシア領内にある3つの共和国。ここにロシアのユキヒョウの7割が生息していると言われています。

調査地はロシア、モンゴル、中国、カザフスタンの国境地帯に広がる大山脈群一帯(アルタイ・サヤン・エコリージョン)のロシア領内にある3つの共和国。ここにロシアのユキヒョウの7割が生息していると言われています。

今回の調査でロシアには51頭のユキヒョウが確認されました。
2019年は65頭だったので・・・減少しています。

ユキヒョウは世界で約4,000頭生息している推定されています。密猟や気候変動による影を受け、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで、絶滅の危機が高いとされる「危急種(VU)」に選定されています。

ユキヒョウは世界で約4,000頭生息している推定されています。密猟や気候変動による影を受け、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで、絶滅の危機が高いとされる「危急種(VU)」に選定されています。

ただし、これは直接確認ができた数字。
ここから推定されるロシアのユキヒョウは、70~90頭で、これまでの数と変わりません。

では、なぜ今回数字が減ったのか。それには地球温暖化が関係しています。

実は、今年は例年よりも狭い範囲で調査せざるを得なくなりました。
通常、冬の調査では、厚く凍った川を自動車で渡り、人里から遠く離れた調査地へ向かいます。しかし今年はなんと、こうした川の一つであるアルグト川が凍らず、渡ることができませんでした。

更に、大事な生息情報である、雪上に残るユキヒョウの足跡などの痕跡も、雪ならぬ雨が降ったことで洗い流されてしまい、調査は例年にはない異常気象に悩まされることになったのです。

標高3,000-4,000mに生息するユキヒョウの調査は過酷です。空気が薄く極寒の地で自動撮影カメラの映像や足跡、糞などのわずかな痕跡から地道に個体数を導き出していきます。
© D.Gulyaev

標高3,000-4,000mに生息するユキヒョウの調査は過酷です。空気が薄く極寒の地で自動撮影カメラの映像や足跡、糞などのわずかな痕跡から地道に個体数を導き出していきます。

推定個体数が変わらないとはいえ、このようにユキヒョウの生息域で地球温暖化の影響が見えてくると不安が募るばかりです。

特に、南極や北極、高山帯のような環境に生きる生物は、今よりも寒い地への逃げることができません。

【動画】2019年に自動撮影カメラでとらえたユキヒョウの姿

2019年に自動撮影カメラでとらえたユキヒョウの姿。過酷な環境で生きていることが伝わってきます。



今や「気候危機」とも呼ばれるようになった地球温暖化問題。

あまりにも大きなスケールの話なので、ぴんと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、遠く離れたユキヒョウのすむ山のような場所も、その影響を確かに受けています。

WWFでは今、そんな気候危機の影響と、その先の未来を考えるキャンペーンを実施しています。
是非、ご覧いただき、足元から地球規模の問題に取り組んでみませんか?

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自然保護室(森林)
天野 陽介

獣医になる夢やぶれ、ニュージーランドのマッセー大学で動物学と生態学を専攻。その後、毒蛇調査の 研究助手としてタイの保護区へ。そこで密猟などの違法現場に何度も直面。単に動物学だけでなく、人間社会を理解する必要があると感じ、コスタリカの平和大学で天然資源と平和学の修士号を取得。その後、国連大学でSATOYAMAイニシアティブのプロジェクトに携わり、日本の里山のように世界にも存在する人と自然のバランスがとれた貴重な場所の保全、研究、普及を担当。2019年7月からWWFジャパンの森林グループでオーストラリアとボルネオ島インドネシア領を担当する。

カエルが好きなのに、捕食者であるヘビをタイの保護区で研究していたとき、銃声が。 保護区になるまでこの地に住んでいた老人が密猟者となる負の連鎖を目の当たりにし、自然を守るには人間社会を理解する必要があると痛感。自然と共生していくためには!そして娘に嫌われない父になるためには!が人生のテーマ。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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