© WWF-Indonesia / Tiger Research Team

肌で感じた「野生生物が生きているあかし」


先日、ユネスコの世界自然遺産にも指定されている、インドネシア語で丘(Bukit)、線状に広がる(Barisan)、南に(Selatan)という意味を持つ、インドネシア・スマトラ島南部に位置するブキ・バリサン・セラタン国立公園へ行ってきました。

ここは、日本とインドネシアのWWFが長年協力しながら保全活動を続けてきた、貴重な自然の残るフィールドの一つです。

その名の通り、起伏に富んだ山岳の熱帯林に覆われているこの国立公園では、絶滅の恐れの高いスマトラサイやゾウ、トラなどの生息地にもなっています。

今回は特別に、スマトラサイの痕跡調査に同行させてもらいました。

©WWF Japan

川を渡り、深い森に入る。まるで冒険映画のようです。

川を渡り、草木をかき分けて進む道ならぬ道。地面を這うヒル、そして棘のある植物から肌を守るために頭から足まで、森に入るには完全防備が必要です。人間が簡単に立ち入ることの出来ない環境に、野生生物が生息していると実感した瞬間でもありました。

また、森の奥に進むにつれて、マレーバクの蹄の跡や、葉をついばんだ食痕、そしてスマトラトラの大きな足跡に糞などの痕跡が次々と見つかりました。スマトラトラは、獲物を探しているときしか動かないそうで、見つかった足跡はなんと1~2日前の出来たてホヤホヤのものだそうです!

©WWF Japan

写真左:スマトラトラの糞の痕跡。糞は徐々に分解され、捕食した動物の体毛と骨が残った状態でした。
写真右:人の手のひらほどの大きさのスマトラトラの足跡。まだ近くにいるような気がして、ちょっとだけ怖くなりました。

残念ながら今回は目的であったスマトラサイの痕跡は発見出来ませんでしたが、森に入るのが初めての私には見えない「野生生物が生きているあかし」が見える現地スタッフの研ぎ澄まされたスキルは大変感心するものでした。

©WWF Japan

動物の生態の専門家、レンジャー、コミュニティ形成の専門家、国立公園のスタッフ、など多くのプロフェッショナルな人たちに活動は支えられています。

日本からのご支援もあり、現地のスタッフはほかにもカメラトラップの設置や、データの回収・解析、地域住民との連携など、大変な苦労をしながら、活動を着実に進めてくれています。

ご紹介をさせて頂いたのは一部ではありますが、ぜひ引き続きご注目頂き、活動を応援いただければ嬉しいです。

©WWF Japan

(おまけ)森の中には日本では見ることのできない、巨大なヤスデやアオハブらしき毒ヘビもいました。

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WWFジャパン ブランド・コミュニケーション室 メディア グループ長
山本 亜沙美

大学時代の専攻していた海洋生物学をきっかけに、絶滅危惧種や環境保全活動に興味を持ち始める。2005年卒業後、米セントラルフロリダ大学院にて生物学を学び、2007年に卒業。卒業後、航空会社にて運行管理のオペレーション業務に携わった後、2010年にWWFジャパン自然保護室アシスタントとして入局。2013年より広報・プレス担当として、取材対応、記者発表などをはじめとしたメディアリレーション、イベント企画・運営などに携わる。2018年7月からメディアグループ長として、広報全般・WWFジャパンのブランドコミュニケーションを担当する。

海洋生物学が専門のリケジョな広報プレス担当です。人の心に響くものはいつの時代も変わらずですが、今は伝える手法が多様化しつつあります。情報のトレンドを追いかけ、常に一歩引いた視点で物事を見るように心がけています。休みがあればスクーバ&スキンダイビングをしにどこかの島に行っています♪

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