石垣市白保におけるリゾートホテル建設計画の開発許可に関する要望書


沖縄県知事 玉城康裕殿

平素より、沖縄県下における生物多様性の保全にご尽力を頂き敬意を表します。
今般、表題の件につき、1980年から石垣島を含む南西諸島において活動を行ってきた当団体の見解をお伝え申し上げたく、本要望書を送付させていただきました。

WWFジャパンは、石垣市白保において(株)日建ハウジングが事業主体となっているリゾートホテルの開発計画(以下「同計画」)が、同地の沿岸域に残された貴重なサンゴ礁生態系とそこに息づく野生生物、さらには自然との深いつながりを持つ地域住民の暮らしに、多大な影響を及ぼすことを危惧しています。

同計画の事業計画地の沿岸に広がるサンゴ礁海域は、西表石垣国立公園の海域公園地区に指定され、世界最大級のアオサンゴ群集を含む造礁サンゴ類を中心とした生物多様性が豊かな海域です。また、この海域に面した石垣島白保集落では、古くからサンゴ礁がもたらす生態系サービスを活かした、自然とのつながりの深い暮らしを営んでいます。
WWFジャパンが2017年12月6日付で沖縄県に提出した意見書の通り、同計画はこうした地域の環境、社会に、深刻な影響を及ぼすことが強く懸念されます。

また、同計画に対しては、開発許可申請時に白保公民館が「不同意」を決議(2017年11月24日)しており、石垣市も条例に基づく審査の結果として地域住民の「不同意」を認め、沖縄県に対して開発を許可しないように要請をしました。このように、地域住民との十分な合意が得られていないにもかかわらず、2018年3月28日に、県により開発が許可されてしまいました。その後、環境・地域社会への負の影響を懸念する地域住民による提訴が行なわれ、裁判中に事業が進行出来なくなったことから、裁判終了後、現在に至るまで計画が中止されている状態です。

そうした中、白保公民館の要請を受けた地域団体4者から構成される白保リゾートホテル問題連絡協議会(以下「同協議会」)は、2024年12月2日、沖縄県に対し「県による開発許可制度の違法な運用の是正と、それをもとにおこなわれた石垣市白保のリゾートホテル建設計画に対する開発許可の取消を求める陳情書」を提出しました。

この陳情書の中で同協議会は、(株)日建ハウジングが同計画地の転売を計画していること、また開発許可とその後の沖縄県・日建ハウジングの対応についていくつかの課題を指摘し、それに基づき沖縄県に対して、同計画の開発許可の取り消しを要請しています。

この陳情書の公開を受け、WWFジャパンは、2021年6月4日に公開した「南西諸島のサンゴ礁生態系の開発と利用に関するポジション」に基づき、以下の点を沖縄県に対して要望いたします。

  1. 同協議会からの指摘について、沖縄県議会において議題として取り上げ、これまでの対応の課題の把握と、必要な対応や是正に取り組むこと。
  2. 同計画による白保の貴重なサンゴ礁生態系への深刻な影響と地域住民の同意が得られていないことを認識し、同計画が地域住民の反対を受け開発許可発行後、6年以上の長期間にわたって開発未着手となっていることや、同協議会から開発許可の取り消しの要請があることを鑑み、開発許可の取り消しを行うこと。
  3. 同計画の開発予定地を含む、沖縄県のサンゴ礁海域および連続性のある陸域の生態系における開発行為を含む土地・沿岸・海域の持続可能な利用は、WWFの「南西諸島のサンゴ礁生態系の開発と利用に関するポジション」にある指摘をふまえ、自然環境への配慮と、地域住民との自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC:Free Prior Informed Consent)に基づいて行うこと。

WWFジャパンは、同計画の事業計画地が、開発許可がある状態で他の事業者に対して地位承継され、地域住民との十分な協議や合意がないままに開発が進行すること、ならびにリゾートホテル開発とその利用によって白保の貴重なサンゴ礁生態系に対して悪影響が生じることを強く懸念し、沖縄県による真摯な対応を求めます。

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