【提言書】地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案及びOECM制度に関するWWFジャパンポジション・ペーパー
2024/03/26
2024年3月5日、環境省の「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案」が閣議決定されました。
当該法案で規定する「増進活動」は、「自然共生サイト」を拡充したもので、民間を巻き込んだネイチャー・ポジティブの実現に向けて、一定の効果があるとWWFは考えています。
一方、この増進活動は、生物多様性保全の国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の中で、目標の一つに定められた30by30を達成する手段の一つ「OECM( Other effective area-based conservation measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)」と紐づいており、保護地域との重複を除いた増進活動は、OECM国際データベースへと登録されることとなっています。
しかしながら、日本国内での幅広い取り組みを認定する増進活動と、国際的目標のための手段として設けられたOECMの間には、制度として一致しない点があるとWWFは考えます。特に活動の長期性・継続性の点では、自然共生サイトの拡充による増進活動は、OECMの条件を全く満たしていません。したがって、同法案が認定するところの増進活動を、そのままOECMに登録するべきではないとWWFは考えます。
加えて、日本の国土の約七割が森林であることを鑑みても、30by30目標の達成のためには、積極的に森林へ着目するべきです。その際には、FSC認証等の、世界共通の基準を持ち、その持続可能性が世界に広く認められている国際認証の普及・推進が非常に重要です。
こうした点をふまえ、WWFジャパンは、以下の五つの提言を、ポジションペーパーとしてまとめました。
- OECM登録に際しての審査の導入
- OECMに求められる保全効果を踏まえたガイドラインの策定
- OECMの長期的・継続的取組を担保する支援・モニタリング等制度の導入
- FSC認証森林等、OECMとして登録されるべき地域の抽出・創出
- 淡水域における30by30の推進
地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案及びOECM制度に関するWWFジャパンポジション・ペーパー
WWFジャパンは、これらの提言を通じ、日本政府に対して「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の目標達成と、真のネイチャー・ポジティブ実現に向けた取り組みを求めていきます。