【WWF声明】プラスチック国際条約INC-2開催に際し、日本政府に、ハイリスクプラスチックの禁止を含む具体的な国際ルールに基づく条約制定を呼びかける


2023年5月29日よりフランス・パリで、プラスチックの国際条約の制定に向け、第2回 政府間交渉委員会(INC-2)が開催される。ここでは、国際条約に含める要素や、条約のゼロドラフト(たたき台)に関する議論が予定されており、国際条約の枠組みを方向付ける重要な会議となる。WWFは日本政府に対し、INC-2において、ハイリスクプラスチックの生産や使用禁止を含む、具体的で法的拘束力のある国際ルールに基づく条約の制定を支持することを呼びかける。

ポイントは以下の通り:

・INC-2開催に際し、国際条約において「ハイリスクのプラスチックを特定して生産や使用の禁止や段階的根絶をすることを含む、義務的な国際規制の導入」を132か国が支持

・日本政府は、生産や使用につき禁止のような国際的規制には慎重になるべきだとしているが、規制導入を各国の判断にゆだねた場合、世界で問題解決が進まないことが懸念される

・WWFが本日世界同時発表した報告書は、環境汚染リスクが大きいプラスチック製品を特定し、可能なものに対し、禁止や大幅削減を含む国際規制措置を導入することを提案


2022年3月の国連環境総会決議(5/14)では、INCを設置し、2024年末までに、プラスチック汚染を根絶するための国際条約の内容を決めることを目指すこととなった。条約を形骸化させないために、具体的で法的拘束力のある規制等の国際ルール構築を前提に条約を構成する必要があり、2022年12月に閉幕したINC-1では、145か国以上がこれを支持した。INC-2開催に際しての各国の事前の意見提出(サブミッション)においても132か国が、国際条約において「ハイリスクのプラスチックを特定して生産や使用の禁止や段階的根絶をすることを含む、義務的な国際規制の導入」を求めている。

しかし日本政府は、サブミッションにおいて、国別行動計画を国際条約の主軸とすることを主張し、また、生産や使用について禁止のような国際的な規制には極めて慎重な態度を表明している。この場合、最終的に規制の導入や履行を各国の自主的判断にゆだねることとなり、これまでそうであったように、条約発足後も世界的に汚染根絶が進まないことが懸念される。

WWFは、INC-2開催に際し、各国に以下を求めている

  1. 特定のハイリスクのプラスチックを根絶、削減、安全に循環、管理するための、禁止を含む法的拘束力のある国際規制の導入を提案する
  2. 汚染リスクの高いプラスチックを、製品群、使用形態、化学物質などから優先付ける
  3. 優先付けたハイリスクのプラスチックの中から、直ちに国際的な禁止や段階的削減を行えるものを特定する。対象としては、使い捨てや使用期間の短いプラスチック製品の内、環境負荷や社会経済的負担を増すことなく根絶・削減が可能なものが想定される
  4. 開発途上国や島嶼国の事情を踏まえた財政支援や技術移転、能力開発などにより、強い拘束力のある施策を、効果的に実行できる体制を構築する
  5. 2023年11月にケニアのナイロビで開催されるINC-3 に向けて、事前に具体的な提案を含む国際条約のゼロドラフトの準備をすることを義務付ける

WWFがEunomia社に委託して策定し、本日世界同時発表した報告書では、自然環境を汚染するリスクが特に大きいプラスチック製品を特定し、これらを根絶、削減、安全に管理し循環させるために必要な国際的規制措置の導入を提案している。根絶・削減すべきものとしては、プラスチック製の、紙巻たばこ、使い捨て電子たばこ、ウェットティッシュ、ティーバッグ、カトラリー、皿、カップ、被膜肥料等がある。

そしてWWFは日本政府に対し、INC-2において、国別行動計画主体の条約発足を主張するのではなく、ハイリスクプラスチックの生産や使用の禁止を含む、具体的で拘束力のある国際ルールに基づく条約制定を目指す132か国の側に加わり、さらなるリーダーシップを発揮することを求める。

以上
 

WWFの特命大使のマルコ・ランベルティーニのコメント:
もし今私たちがさらなるアクションを起こさなければ、2040年までに世界の年間プラスチック生産量は倍増し、海洋への年間のプラスチック流出は今の3倍、累積では4倍となる。これを避けるために、すべての国と企業が公正な競争環境に置かれるような国際的に合意されたルールの下で、連携した方策をとることが必要だ。INCの各国代表は、本日発表する報告書のガイダンスを踏まえ、プラスチック汚染の脅威を断つために包括的で具体的な義務的措置のある国際ルールに基づいた国際条約を発足させるために、協力していかなければならない。

WWFジャパン サーキュラーエコノミー・マネージャー 三沢行弘のコメント:
先のG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合における、「プラスチック汚染の国際条約において野心的かつ包摂的な枠組みを目指す」という合意を実現するためにも、ハイリスクのプラスチックの国際的禁止や段階的根絶を含めた、法的拘束力のある国際ルールを主軸とした、実効性のある条約の制定が必要であり、日本政府がINC-2において、これを支持、主導することに期待している。

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