【WWFジャパン声明】 温暖化対策に関する科学IPCC報告書のまとめ発表(第6次評価報告書統合報告書)


「次の焦点は2035年の削減目標:世界全体で60%削減が必要」

(スイス、インターラーケン、2023年3月20日)- 会期を2日間延長しての長時間にわたる議論の末、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から最新の科学の知見をまとめた報告書(第6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向けの要約)※1が各国政府が参加する総会にて承認され、発表されました。注目されるのは、パリ協定の事実上の長期目標である1.5度を達成するためには、温室効果ガスの排出量を2035年までに60%削減することが必要(2019年比)であることが明示された点です。

現在世界各国はパリ協定に対して2030年の温室効果ガス削減目標を提出しています。このパリ協定では5年ごとに、最新の科学的知見を元に、新たな削減目標を提出することになっているため、次の焦点は2035年の削減目標です。2035年削減目標は今年末のCOP28会議で始まる議論を経て、いよいよ2024年末のCOP29会議において各国がパリ協定へ提出していく事になります。

それらの削減目標を立てるときに、世界各国が参照するのがIPCCの知見です。今回の統合報告書は、今後の気温上昇を1.5度に抑えるためには、これまでに示した2030年までに温室効果ガス排出を43%削減(CO2は48%削減)に加えて、2035年までに60%削減(CO2は65%削減)し、2040年には69%( CO2は80%削減) (いずれも基準年2019年比)、2050年までにカーボンニュートラルを達成する必要があることを明示しました。

WWFジャパンの小西雅子は、「今回示されたIPCCの2035年60%削減は、世界各国にとって1.5度を達成する目標として大きな目安となる。先進国の一員である日本は世界平均以上の削減を求められるため、2035年60%以上の削減目標を検討することが必要となる。来年のCOP29で2035年目標を提出するためには、日本国内でも遅くとも年内には議論を開始し、数値の検討とともにそれを実現できる実効力のあるカーボンプライシングなどの政策施策を早期に導入していかねばならない」と指摘しています。


※1: IPCCとは、地球温暖化に関して世界中の専門家の科学的知見を集約している国際機関で、三つの作業部会に分かれており、第1作業部会は、温暖化の科学(自然科学的根拠)、第2は温暖化の影響(影響、適応、脆弱性)、そして第3は温暖化の対策(気候変動の緩和策)。 今回は2021年から22年にかけて発表された3つの作業部会報告書から最も重要な知見をまとめた統合報告書の政策決定者向けの要約が発表された。

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP