2022年4月1日「プラスチック資源循環法」施行に際し、日本政府に「持続可能なサーキュラー・エコノミー」への早期転換に向け「意欲的な2025年目標の設置」等を要請する
2022/04/01
本日2022年4月1日より、プラスチックのライフサイクル全般での3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(再生可能素材)への適切な切替えによりサーキュラー・エコノミーへの移行を加速することを目的として、「プラスチック資源循環法(以下、新法)」が施行となった。
地球規模の生物多様性の棄損と地球温暖化とは、今日、世界が直面する最も大きなグローバル・リスクである(*1)が、プラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄は、この2つの危機をさらに悪化させる大きな要因となっている。人類には、地球の限界の範囲内で機能する「持続可能なサーキュラー・エコノミー(*2)」への迅速な転換により、気温上昇を1.5度未満に保ちつつ、2030年までにネイチャー・ポジティブな世界と自然との共生社会の実現を図っていく責任がある。そして2022年3月の国連環境総会(UNEA)5.2では、国連加盟国は満場一致で、プラスチック汚染を根絶するための法的拘束力のある国際条約を策定していくことに合意した(*3)。これにより今後、日本でも世界から受け入れられることを前提に、プラスチックのライフサイクル全般を対象とした意欲的なアクションプランを策定することが求められることになる。
新法は、容器包装以外のプラスチック使用製品を自治体ルートでの分別収集の対象とするなど、プラスチックに係る問題の解決に一定程度の効果があると思われる。しかしながら、新法を含めた日本におけるプラスチックに係る諸問題解決のための法制度は、未だに2019年の大阪ブルー・オーシャン・ビジョン(*4)で共有された「2050年までの追加汚染ゼロ」を前提としている。生物多様性の棄損と地球温暖化を食い止めるためにも、この流出ゼロ目標を2030年へと前倒しした上で、早急にプラスチックの大量生産・大量消費・大量廃棄から脱却し、持続可能なサーキュラー・エコノミーへの転換を実現していくことが必要不可欠である。しかし、新法を含めた日本におけるプラスチックに係る諸問題解決のための法制度において、目標設定やインフラの整備などの点で、依然として大きな課題が残る。
さらに28か国で実施した直近の調査(*5)で、日本におけるプラスチック容器包装削減への意識が58%(28か国平均は85%)と突出して低いということが示されている。このような市民意識も踏まえた上で、政府が事業者とも協力し、社会全体におけるプラスチック削減への意識を高めていくことが期待される。
ついてはWWFジャパンは日本政府に対し、プラスチックの大量生産・大量消費・大量消費に起因する諸問題の早期解決を目指し、事業者との協力の下、生活者を巻き込んで包括的かつ実効的な対策を日本全体に推進していくために、関連法制度等の抜本的な改善に向けて、以下を呼びかける。
- 追加的なプラスチック汚染を根絶する目標年を2050年から2030年へと前倒しした上で、「プラスチック資源循環戦略(*6)」において2030年マイルストーンの底上げを図るために、特に総量削減につき、新たに意欲的かつ包括的・明確な「2025年ゴール」を設定すること
- レジ袋及び新法で対象とされた特定プラスチック12品目だけでは削減効果が限定的であることを認識した上で、使い捨てされるプラスチックをより広く対象として、有料化含む具体的で実効的な削減策を導入すること
- プラスチック及び代替素材につき、リユースや水平リサイクル、コンポスト化の推進に必要な、成分の表示や処理方法の表示を義務付ける制度、社会インフラの整備、その他必要な支援策を導入すること
- バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックを含めた代替素材の使用につき、現状では環境への配慮が十分でないものであっても環境に配慮しているかのような説明の下で流通していることを認識した上で、将来的に持続可能性が担保できるもののみが推進されるよう制度化すること
- 新法における設計認定制度について、国や地方公共団体、事業者に対し、認定プラスチック使用製品の使用を促すための経済的インセンティブを設けつつ、認定されていないプラスチック使用製品のうち特に環境負荷の大きい製品の使用を段階的に廃止していくこと
- 主に家庭から排出されるプラスチック使用製品について、拡大生産者責任(*7)の視点から分別収集、再商品化その他のプラスチックに係る資源循環の促進等に必要な措置を講じるとともに、製造・使用事業者に、再商品化につき相応の負担を求めること
- 自然環境への流出の可能性が特に高い、漁具・農業用資材に使用されるプラスチックについて、法的拘束力のある規制の対象とした上で、製造・使用事業者への環境配慮設計や流出防止措置の導入、適切な漁具管理や流出時の報告・回収を義務付け、必要な基盤整備等を行うこと
- 高所得国において、適切に管理されないプラチックの流出量よりも多いとされる、製造・流通・使用過程で生ずる一次マイクロプラスチック(*8)の環境への流出の防止のために、意図的に使用されるマイクロプラスチックの製造・利用を早期に禁止した上で、予防原則の観点から、一次マイクロプラスチック発生抑制対策を早期に義務付ける法制度を導入すること
- 別途WWFが共同提言している「脱プラスチック戦略推進基本法(案)(*9)」を参照しつつ、明確かつ意欲的な発生抑制目標を有しプラスチック汚染問題全体を包括した基本理念となるような「基本法」を早急に制定すること。さらにその基本法の下で、上記の内容を含めた包括的かつ実効的な法制度を整備していくこと。
- UNEA5.2で、プラスチック汚染根絶のための法的拘束力のある国際条約の策定に合意したことを受けて、2024年までに明確かつ高い世界標準と目標とを組み入れた内容とするように、事業者と協力し日本の社会全体を巻き込んでの議論を推進するとともに、国際的にも日本政府がリーダーシップを発揮していくこと
参考資料
*1. グローバルリスクレポート(World Economic Forum, 2021)
*2. Circular Economy position paper (WWF, 2020)
*3. 第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)の結果について(環境省, 2022)
*4. G20大阪ブルー・オーシャン・ビジョンと実施枠組 (概要) (環境省, 2019)
*5. 世界における使い捨てプラスチックに関する意識調査 (Ipsos and Plastic Free July, 2022)
*6. プラスチック資源循環戦略(概要)(環境省, 2019)
*7. HOW TO IMPLEMENT EXTENDED PRODUCER RESPONSIBILITY (EPR) (WWF, 2020)
*8. Primary Microplastics in the Oceans (IUCN, 2017)
*9. WWFプレスリリース 「脱プラスチック戦略推進基本法(案)」を策定 (WWF, 2021)