WWFは、小泉環境大臣の「プラスチックごみ問題解決に向けた、 新たな国際枠組を議論する政府間交渉会合設置を支持する」表明を歓迎
2021/08/13
法的拘束力のある国際協定の早期発足に向け、日本政府のリーダーシップを期待
小泉環境大臣が、7月22日のG20環境大臣会合にて海洋プラスチックごみに関連し、「新たな国際枠組を議論するための政府間交渉会合(INC)ついて、これまでのニュートラルな姿勢ではなく、来年 2 月の UNEA5.2 で設置されることを支持する」と表明した (1)。地球規模のプラスチック汚染を包括的に解決するためには法的拘束力のある国際協定の早期発足が不可欠であるとして、その支持を日本政府に対しても働きかけてきたWWFジャパン(2)は、WWFのグローバルネットワークを代表して、日本政府が新たに国際協定の発足に積極的に貢献する姿勢を示したことについて、歓迎する。
世界では、プラスチック生産量は年間4億トン以上に達し(3)、プラスチック廃棄物の40%が自然環境に流出している (4)。その結果、世界では年間1,100万トンのプラスチックが海洋に流れ込んでおり、このままでは2040年に年間2,900万トンに達すると予測されている (4)。さらにプラスチックは、その生産と焼却の過程でCO2を大量発生させており、地球の平均気温を産業革命前と比較して1.5度未満の上昇に抑えるための2050年までの累積排出量(カーボンバジェット)の10-13%をプラスチックが占めることとなる (5)。
地球規模で深刻な影響を及ぼしているプラスチック汚染を解決するためには、プラスチックの原料採掘から使用後の回収、そして再利用・適正処理に至るまでの、ライフサイクル全般に渡る世界のシステムを包括的に改善しなければならない。確かに、近年この問題の解決に向けた取り組みは世界的に増加してきているが、これらは対象範囲が限定的であったり、自主的な取り組みであったりすることから、根本的な解決を図ることはできない。やはり、ライフサイクル全体を世界的にカバーする、法的拘束力のある包括的な国際協定を早期に発足させた上で、それに基づいて各国が行動計画を示しつつ、既存の取り組みを融合させていくことが欠かせない。
WWFの呼びかけに応じ、日本を含む世界から210万人以上が法的拘束力のある国際協定の発足を各国政府に呼びかける署名に参加している (6)。さらに世界の主要企業50社以上が、国連加盟国に対して同様の呼びかけを行っている (7)。また、日本人を対象とした2021年6月の調査によると、プラスチック汚染解決のための法的拘束力のある国際協定の推進に、日本がリーダーシップを発揮していくべきだと答えているのは61%に上る (8)。
既に世界では、100か国以上が法的拘束力のある国際協定を発足させることを公的に支持している (9)。この世界的な潮流に参加することを表明した日本政府には、既に先行する国々が進めている、「UNEA5.2において、プラスチック汚染の解決に向けて政府間交渉会合(INC)を設置し、法的拘束力のある国際合意に向けた交渉を義務付ける決議」の草案作りを積極的に支援することで、より多くの国に賛同を促し、新たな国際枠組を早期に発足させ、各国が連携し、責任を共有し、統合的な活動を推進できるように貢献していくことが期待されている。
WWFジャパン プラスチック政策マネージャーの三沢は、以下のように述べている。
「日本政府が法的拘束力のある包括的な国際協定を前進させる意思を初めて明確に表明した意義は大きい。日本政府が取りまとめた、2050 年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』(10)を、さらに大幅に前倒しで達成するためにも、2022年2月のUNEA (国連環境総会)5.2 に向けて、既に進んでいる法的拘束力のある国際枠組づくりのための決議案の策定プロセスに、日本政府が積極的に協力していくことが求められる」
【参照先】
1. 環境省. 令和3年7月24日 G20環境大臣会合及び気候・エネルギー大臣会合の結果について(速報版)
別紙3-1 G20環境大臣会合における小泉大臣発言内容(日・英)
http://www.env.go.jp/press/files/jp/116553.pdf
2. WWFジャパン.
https://www.wwf.or.jp/file/20210222_ocean01.pdf
3. OECD (2018). Improving Markets for Recycled Plastics: Trends, Prospects and Policy Responses
4. The Pew Charitable Trusts (2020). Breaking the Plastic Wave: A Comprehensive Assessment of Pathways Towards Stopping Ocean Plastic Pollution
5. WWF, The Ellen MacArthur Foundation, and Boston Consulting Group (2020). The Business Case for a United Nations Treaty on Plastic Pollution
6. WWFジャパン.
https://www.wwf.or.jp/activities/project/4446.html
7. https://www.plasticpollutiontreaty.org/
8. The Mainichi (2021). Opinion: Japan must tackle plastic pollution on a global scale to truly win gold.
https://mainichi.jp/english/articles/20210710/p2a/00m/0op/020000c
9. WWF. Global Plastic Navigator
https://plasticnavigator.wwf.de/#/en/explore/?st=0&ch=4&layers=surface-concentration
10. 環境省. 大阪ブルー・オーシャン・ビジョン
http://www.env.go.jp/water/post_75.html