奄美大島瀬戸内町における客船就航地開発計画に対する瀬戸内町長からの誘致断念の決定に対する声明


2019年8月23日に鹿児島県大島郡瀬戸内町の鎌田愛人町長より、町内西古見「池堂」地区での客船就航計画誘致の撤回方針が発表された。

地域の関係者の声に真摯に向き合い、同町が発表したこの方針は、国際的にも貴重な自然環境を有する南西諸島の中でも、特に保全価値の高い地域に深刻な影響を生じ得る開発行為の見直しを表明するものであり、WWFジャパンはこれを大いに歓迎する。

瀬戸内町西古見「池堂」地区での大型客船の就航計画は、2018年10月から瀬戸内町内のさまざまな関係者を交えた「クルーズ船寄港地に関する検討協議会」において、検討が続けられてきた。

2019年2月5日に開催されたその第3回会合では、ロイヤルカリビアンクルーズ社が就航候補として発表を行なった。これを受けWWFジャパンでは、2月15日に、保全を前提とした科学的評価がないまま、大規模な観光開発計画が進められる可能性が高いことへの懸念と共に、見直しを求める声明を発表。

さらに4月には、対象海域の緊急調査を実施し、この調査結果を基に、6月19日に再度、計画の見直しと地域の関係者が参加した持続型観光利用計画の構築を求める要望を、町及び国、県など関係諸機関に対し行なってきた。またWWFは瀬戸内町長と直接面会し要望を伝えるとともに、環境保全と持続可能な観光に協力することを申し出ている。

今回の誘致撤回とともに、瀬戸内町においては今後、町内に有する大島海峡やその周辺森林域及びそこに生息するアマミホシゾラフグやアマミノクロウサギを代表とした、生物多様性の豊かな自然を将来にわたり保全する施策に着手することが求められる。

またその実施にあたっては、住民や地域産業も参加した、広範な合意形成を図るしくみを整えることや、自然環境が地域の文化や社会の基盤と位置づけ、科学的根拠に基づく予防的原則を前提とした持続可能な観光客受け入れの態勢を確立することが、重要である。

瀬戸内町が今回、地域の方々のさまざまな意見をふまえ、地元が誇る豊かな海の保全を鑑みて選んだ決定は、生物多様性条約第10回締約国会議で世界の合意とされた愛知目標の3、9、12および、持続可能な開発目標の14、15にも貢献するものである。同町においては、持続可能な観光の実現に向けたスタートラインと捉え、南西諸島や国内の他地域に向けた、瀬戸内町によるこの持続可能な観光の先進モデル実現を期待するとともに、WWFジャパンでは今後も、この地域の保全活動との連携協力を進めていく方針である。

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