プラスチック汚染問題対策についての提言 ~G20サミットにおいて日本のリーダーシップを示すために~
2019/05/29
外務大臣 河野太郎 殿
2000年以降世界で生産されたプラスチックはそれ以前の累計生産量と同量に達し、その量はさらに拡大を続けています。適正な処理能力を大幅に上回る大量のプラスチックが生産・流通することで、自然界に流出したプラスチックがやがて海洋に入り込みますが、その量は年間で800万トン以上に達します。さらに海での漁具等の直接の逸失・投棄により、海洋に存在するプラスチックは1億5千万トン以上と推測されています。これらは半永久的に分解されず、海洋生態系に深刻な影響を及ぼすのみならず、マイクロプラスチックとして人体へも取り込まれています。さらに、化石燃料由来のプラスチックの大量生産と焼却が、地球温暖化をもたらすCO2の主要な発生源になっていくと予測されています。
この人類への危機に対し、世界的に早急な対応が求められています。5月にジュネーブで開かれたバーゼル条約締約国会議(COP14)は、リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみを規制対象とする改正案を採択しました。今後さらに国際社会に求められるのは、新たに法的拘束力を持つ国際協定を導入することによる、プラスチックのライフサイクル全般に渡る包括的で効果的な国際管理体制の構築です。
G20大阪サミットの議長国である日本は、このプラスチック汚染問題という世界的な危機の解決に向けて、強いリーダーシップを発揮することが期待されています。つきましては、外務大臣に以下の通りご尽力いただきたく、提言をいたします。
1.G20大阪サミット首脳宣言において、海洋プラスチック汚染問題の解決に向け、
2030年までの期限付き目標を持つ法的拘束力ある新たな国際的な枠組みの発足を約束すること
気候変動問題と同様に、地球規模の深刻な問題となっている海洋プラスチック汚染につき、包括的に解決を図る国際的な協定や法的枠組みは、未だ存在しておりません。現存する国際的な枠組みの下では、部分的な解決しか見込めず、効果的とは言えません。そこで世界の主要国が集まるG20大阪サミットにて各国首脳に働きかけ、首脳宣言に
「2030年までの期限付きの目標を持った法的拘束力ある新たな国際的な包括枠組みを発足させること」を盛り込んでいただきたくことを求めます。
2.プラスチック生産量・国際取引量・使用量の削減につき2030年までの期限付きの意欲的な目標を日本が率先して策定し、他国にも働きかけること
上記1で求める、海洋プラスチック汚染問題の解決に向けた「法的拘束力ある新たな国際的な枠組み」の下で、各国が期限付きの高い目標を設定した上で、着実に達成するためのロードマップを策定する必要があります。世界ではプラスチック資源循環経済への移行が主張されています。もちろんこの方向性は正しいと考えますが、まず必要とされるのは、明らかに過剰な現在のプラスチックの生産量・国際取引量・使用量の大幅削減です。
日本政府は廃プラスチックの86%が有効利用されているとしています。しかしリサイクルされているのは全体の27%、国内リサイクルに限れば全体の14%に過ぎません。 66%を占める熱回収を含めた焼却処理が、地球温暖化要因となるCO2を発生させています。リサイクル率は世界で約14-18%に留まっており、リサイクルを推進するだけでは決してこの問題を解決できません。
プラスチックの生産量・国際取引量・使用量の削減につき、意欲的な2030年の目標とその達成のためのロードマップを、日本が国際的リーダーシップを持って率先して示すことで、各国に同様の動きを促すことを強く期待します。