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WCPFC2019閉幕 メバチ・キハダの漁獲制御ルールに関する合意は延期に

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パプアニューギニアのポートモレスビーにて、2019年12月5日から7日間にわたり開催されていた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が閉幕しました。サメの管理強化については一定の進捗があったものの、日本人が最も多く消費している刺し身マグロのメバチ、キハダの漁獲制御ルールに関する合意は先送りに。太平洋のマグロ類の未来は、翌年の交渉に持ち越される形になりました。
目次

メバチ・キハダの目標管理基準値についての合意は先送り

パプアニューギニアのポートモレスビーで2019年12月5日から11日まで、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の第16回年次会合が開催されました。

26の加盟国・地域が参加したこの会議では、マグロ類を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。

今回2019年の年次会合では、メバチとキハダの中長期的な資源回復目標(目標管理基準値)について決議する予定でしたが、加盟各国の足並みはそろわず、合意は先送りにされました。

マグロについては、世界の海域ごとに、マグロの資源管理を目的とした5つの国際管理機関があり、資源管理のためのルールを定めています。

マグロについては、世界の海域ごとに、マグロの資源管理を目的とした5つの国際管理機関があり、資源管理のためのルールを定めています。

メバチは日本人が刺し身として最も消費しているマグロで、その多くを中西部太平洋産が占めています。
中西部太平洋におけるメバチの年間漁獲量は12.9万トン(2017年予備集計)。刺身用メバチとして多く流通するはえ縄漁はその45%を締めます。

一方、まき網漁による漁獲も、45%を占めていますが、そのほとんどが、実はカツオを獲る際の混獲です。

メバチの幼魚は、カツオを獲るまき網漁船が使用する魚群集魚装置(FADs)のような、海洋浮遊物につく習性があるため、カツオのまき網漁の操業過程で、極めて多くのメバチの幼魚が混獲されているのです。

また、この混獲されたメバチは、ツナ缶材料としては不向きであるため、安価での取引や投棄が行なわれており、問題視されています。

メバチの資源状態は今のところ、枯渇状態にはないとされていますが、過去には乱獲され、資源が危機的状況にあると評価されていたこともありました。
乱獲の再発を防ぐ上でも、目標管理基準値を含めた漁獲制御ルールに基づく管理が必要です。

そこでWWFは、年次会合に際して、加盟各国に対し要望書を提出。
会議にもオブザーバーとして参加し、予防原則に従った目標管理基準値を設定するよう、働きかけました。

しかし、議論の結果、加盟各国は管理基準値の合意を先送りし、メバチとキハダの持続可能な資源利用に向けた国際協調は、足踏み状態となりました。

©WWF Japan

サメ類のIUU漁業対策に改善の動き

一方、中西部太平洋のサメ類については、水揚げ時の管理体制が強化され、一定の進捗がみられました。

これは、マグロ漁で混獲されることの多いサメ類の中に、減少や絶滅の危機が懸念される種がいることが明らかにされてきたためです。

2019年8月のWCPFC科学委員会では、外洋性のサメの一種ヨゴレの資源量が、初期資源(漁業が開始される以前の推定資源量)の5%まで低下していることを指摘。

また、2019年12月に更新されたIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも、ヨゴレは絶滅危機レベルが最も高い「CR(近絶滅種)」に選定されています。

絶滅危惧種(CR)のサメの一種であるヨゴレ。三大洋の熱帯~温帯域に主に分布しています。
©Simon Lorenz / WWF-Hong Kong

絶滅危惧種(CR)のサメの一種であるヨゴレ。三大洋の熱帯~温帯域に主に分布しています。

ヨゴレの脅威となっているのも、主にマグロ漁による混獲で、さらに漁獲された個体が、フカヒレの材料などに利用されてきました。

このため中西部太平洋では、ヨゴレの船上保持禁止、すなわち、漁獲・混獲したとしても、海の放す(リリース)ことが義務付けられていました。

それにも関わらず、減少が続いている明確な理由は明らかではありませんが、可能性としては以下が考えられています。

1) IUU(違法、無報告、無規制)漁業などによるフィニング(漁獲したサメのヒレのみを採取し、胴体を海に捨てること)の横行
2) 身体が大きく鋭い歯を持つため、混獲時の取り扱いが正しくなく、生きたままリリースできていない

それに対しWWFは、上記問題を解決するため、WCPFCの年次会合では、以下について求めてきました

① サメのヒレと胴体が分離していない状態で船上保持すること
② サメを正しくリリースできるよう、マニュアルなどを整備すること
③ 上記作業を監視するオブザーバーの乗船比率を上げること

その結果、今回の年次会合では、①②については合意され、サメ類の資源保全に向けて、大きな一歩となりました。しかし、③についてはほとんど議論されることはありませんでした。

依然として問題は山積み状態

このヨゴレについての合意に対しWWFサメプログラムリーダーのアンディ・コーニッシュは次のように述べました。

「サメの保全管理措置の強化は、中西部太平洋において、より責任あるサメ類の保全管理の実現に向けた良い一歩となりました。

しかし、乱獲・枯渇状態に陥ったヨゴレに対し、直接的な対処が何ら行なわれなかったことについて、失望しております。

絶滅に瀕したヨゴレを救うために残された時間はわずかです。次回の年次会合では、これら絶滅危機種を回復させるための措置がとられることに期待しております。」

また、WWFジャパンサイエンス&テクノロジー担当の植松は次のように述べました。

「今回の年次会合では、はえ縄漁船を多く有する日本が、サメの保全管理措置強化に向けて前向きに取り組んだことは、とても評価できることです。

しかし、サメ類の混獲対策やIUU漁業の防止に有効なオブザーバーの乗船比率向上については、ほとんど議論が行なわれなかったことは、大変残念です。

また、メバチの漁獲制御ルールについての決議が先延ばしになったことは、世界で刺身用メバチを最も多く消費する日本にとって大きな懸念材料となります。早期の合意を期待します。」

WCPFCには、国際的に重要な地域漁業管理機関(RFMO)の一つとして、資源管理だけでなく、IUU漁業を撲滅させる義務があります。

WCPFCが義務を遂行できるよう、WWFは引き続き、各国政府に対し働きかけを続けていきます。

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